向かうところ敵無し、まさに世界王者の名を欲しいままにした『フェデラー・エクスプレス』は、今シーズンも数々の記録と話題を残していった。往年の名プレーヤーであるジョン・マッケンローに「史上最高のテニス選手」と言わせるほどの強さを見せる
ロジャー・フェデラーの軌跡を追う。
8歳でテニスを始めたフェデラーは、1998年にはジュニア・ランキング1位に輝いたが、プロ転向後、なかなかツアーではタイトルに手が届かなかった。しかし2001年にツアー初優勝を上げると、翌年にはマスター・シリーズでも優勝を収めるなど水を得た魚のようにメキメキと実績をあげていく。そして翌2003年にはウィンブルドンで初のグランド・スラム・タイトルを手中に収めると、マスターズ・カップでも優勝を果たし、世界2位へと躍進した。そしてフェデラーエクスプレスの快進撃はここからスタートする。昨シーズン、グランド・スラム3大会で優勝し、ツアー11大会で優勝を上げるなど誰もその勢いを止めることは出来ず、「フェデラー時代」の幕開けとなった。
今シーズン、連覇を目指した全豪オープンでは準決勝で
M・サフィンに大接戦の末敗退し、フェデラー・エクスプレスも減速かと思われたが、その後、ロッテルダム、ドバイで連勝を上げ、インディアンウェルズ、マイアミのマスター・シリーズでも優勝と4大会連続優勝を上げ、改めてその強さを証明して見せた。初優勝をめざし臨んだ全仏オープンでは
R・ナダルの前に涙を飲んだものの、ウィンブルドンでは3連覇の偉業を達成し、USオープンでも2連覇を達成する。終わってみれば、マッケンローが持つシングルス最高勝率の83勝3敗にあと1勝というところまで迫る充実の1年だった。その強さについて
A・ロディックは「時に『あいつは強すぎる』と思うこともあるさ。早くテニスに飽きるかなんかしてほしいよ。」と語っている。
世界ナンバー1らしく、アフリカの子供たちの支援や、慈善活動にも非常に積極的に取り組んでおり、タイでおきた津波災害のときも、自ら率先してチャリティイベントを盛り上げるなど、その活動はスポーツの枠を超えて世界中から高く評価されている。
負けることがニュースになる数少ないテニスプレーヤーであり、来シーズンの注目も「誰がフェデラーから勝ち星を上げるか」の一点に集中している。しかし、「もう長いこと、コートの上で自分を疑ったことはない。常に自分の強さを信じているし、そうある限り自信が揺らぐこともないだろう。」と自身が語るように、暫くは「フェデラー時代」が揺らぐことはなさそうだ。