重要なお知らせ |
フェデラー、土壇場から逆転優勝 |
惜しくも敗れはしたが、大健闘のナダル |
画像提供:Getty/AFLO |
(アメリカ、フロリダ州キービスケーン)
この日のマイアミは決勝戦にふさわしい快晴。夏時間に切り替わり1時間早くなったにも関わらず、世界No.1と今年最も注目されるティーンエージャーの試合を見ようと、朝から多くの観客が詰め寄せた。
賞金総額650万ドルのナスダック100オープン男子決勝は、満員御礼の観客の期待を裏切らない劇的でスリリングな対戦となった。第29シードのR・ナダル(スペイン)がトップシードのR・フェデラー(スイス)に対し、後2ポイントでストレート勝ちというところまで追い込んだが、敗北を目前にしながらも落ち着きを失わず、結局2-6, 6-7 (4-7), 7-6 (7-5), 6-3, 6-1という大接戦を制したのは王者フェデラーだった。
前半からナダルは絶好調で、第1セットを6-2で先取。第2セットでは、フェデラーが5-3でリードするが、ナダルは第9ゲーム30-0から4ポイント連取でブレイクに成功。次のゲームではフェデラーが要所でミスし、ナダルがサービスゲームキープに成功し5オールとすると、その後のタイブレイクもナダルが制した。全てがナダルを後押ししているかのように見えた。やっとの思いでボールに追いついて返すリターンまでもがウィナーとなる展開。フェデラーには昨年の全仏オープンでG・クエルテン(ブラジル)に圧倒された記憶がよみがえる。いつもは相手が納得のいかない様子で立ち尽くし、頭をかしげるのに、今度ばかりはフェデラーがその役に回っていた。
続く第3セットでもナダルが序盤でフェデラーのゲームをブレイクし流れを掴む。そして、第5ゲームではフェデラーがブレイクポイントを握るが、決めにいったフォアハンドショットがアウト。思わず叫び声をあげ、フェデラーは苛立ちのあまりラケットを投げつけて折ってしまった。
「あのフェデラーがラケットを投げつけるのは珍しいと思った。彼の対戦相手は皆やるけどね。それだけいらいらしているんだ、僕は勝てると思ったよ。」とナダル。結局、そのゲームはナダルがキープした。
フェデラーは、「第3セット1-4でリードされたときは、『後2ゲームで試合を終わらせたくない』と思っていた。特に第2セットではチャンスにことごとくミスしていたしね。とにかく彼(ナダル)に食らいついて行こうと思った。そしたら何とかゲームを取り返して、タイブレイクに持ち込むことに成功したんだ。」と語った。
その後、一進一退の攻防が続くが、第3セット、ナダルが5-3で迎えたタイブレイクをフェデラーが逆転で勝ち取ると、第4・第5セットともにフェデラーがナダルのゲームを難なくブレイクし、3時間半の勝負を決めたのだった。
第3セットで競り負けたことについて、「第3セットのタイブレイクで5-3までいった時は、『もう勝った』と思って気を抜いてしまったんだ。そこで彼がオン・ザ・ラインに決めてきたのを返せなかった。だからこそ彼はNo.1だ。そこまで行って勝てなかったのは悔しいけど、内容には満足している。」と語るナダルは、王者と互角の戦いをしたことで大きな自信を得たに違いない。フェデラーが74の凡ミスを犯しながらも勝ったことに関しては、「彼だってミスはするさ。でも彼のすごいのは、特に大事なところではミスを犯さないってことだよ。」と語り、フェデラーの勝負強さを称えていた。
フェデラーは、「今日は本当に接戦だった。勝てたのはラッキーだと言える。とにかくナダルは素晴らしい選手だと思う。近い将来、偉大な選手になるのは間違いない。正直なところ、特に第1セットでは心配になった。2-6でセットを落とすようなことは最近ないだけにね。多分左利きの相手に慣れるのに時間がかかったんだね。ちょっと序盤に攻撃的に出すぎたのかもしれない。」と、敵無しの王者もかなりの苦戦をしたようだ。「今日の勝利は僕のテニス人生の中でも大きなものだよ。ナダルのような勢いのある選手に2セットダウンから逆転で勝てたんだからね。」
これでフェデラーは連勝を22に伸ばし、決勝に進んだ大会では18連続優勝となった。今季の戦績を32勝1敗と、全豪でM・サフィン(ロシア)に敗れたのみにとどめ、昨年のUSオープンからは48勝1敗と驚異的な記録を残している。同大会でトップシードが優勝したのは、1994年にP・サンプラス(アメリカ)がA・アガシ(アメリカ)に勝利して優勝したとき以来で、実に10年以上ぶりである。
ナダルは目前まで迫った初のマスターズシリーズタイトルを逃し、連勝も15でストップされた。敗れはしたが、決勝での戦いに悔いは無いようだ。「自分のテニスに満足しているよ。確実に上達しているし、良いプレーが出来た。」ナダルは前回フェデラーと対戦した昨年の同大会では、6-3, 6-3でフェデラーを下し、4回戦まで進んでいた。今回はフェデラーが雪辱を果たした形となったが、また次のトップ対決もそう遠くなさそうだ。