テニスのグランドスラムであるウィンブルドン(イギリス/ロンドン、芝)は大会1週目を終え30日にミドルサンデーを迎えたが、男子シングルスでは2度の優勝を誇る第5シードの
R・ナダル(スペイン)や前年度チャンピオンである第3シードの
R・フェデラー(スイス)ら上位シード勢が姿を消す波乱に満ちた「呪い」の1週目となった。
番狂わせは大会初日に起きた。2008・2010年のウィンブルドン覇者であるナダルは世界ランク135位の
S・ダルシス(ベルギー)にストレートで敗れ、大会1日目で姿を消した。これまでグランドスラムで12のタイトルを獲得しているナダルが四大大会で初戦敗退を喫すのは、2001年にプロ転向して以来初の事だった。
「良いプレーをすれば勝つチャンスがある。そうではない時に対戦相手が良いプレーをすれば負けるもの。ただダルシスを祝福したいよ。彼は素晴らしい試合をしたからね。だから、これは悲劇というわけではない。それがスポーツさ。」
ナダルは、昨年のウィンブルドン2回戦でも当時世界ランク100位だった
L・ロソル(チェコ共和国)にフルセットで敗れる大波乱に見舞われており、2年連続の早期敗退となった。
膝の怪我から復帰を果たしたナダルは、今季出場した9大会全てで決勝進出。そのうち7大会で優勝を飾るなど好調を維持しており、全仏オープンでは前人未到8度目の優勝と2度目の大会4連覇を達成していた。しかし、今季10大会目となるウィンブルドンでキャリア初となるグランドスラムでの初戦敗退となってしまった。
一方、大金星をあげたダルシスは「誰も自分が勝つなんて思っていなかったはずさ。ナダルは自分のテニス人生で2人目のトップ10選手からの勝利になったよ。もちろん、最高の勝利の1つさ。本当に今日は幸せな気分だね。」と、コメント。
ダルシスは、ウィンブルドンと同じ会場で行われた昨年のロンドンオリンピック1回戦でT・ベルディフを破っており、今回がトップ10選手から2度目の勝利となった。
さらに、大番狂わせはナダルだけではなかった。
大会3日目、芝のコートを知り尽くしたフェデラーが2回戦で姿を消す信じられないニュースが飛び込んできた。2003年のウィンブルドン決勝で
M・フィリプーシス(オーストラリア)をストレートで破り、グランドスラムで初優勝したフェデラーは、初優勝の地で大番狂わせに見舞われた。
フェデラーはこれまでのグランドスラムで36大会連続でベスト8進出を果たしており、四大大会でベスト8を前に敗れるのは2004年の全仏オープン以来で、その時は3回戦で
G・クエルテン(ブラジル)に敗れた。
さらに、フェデラーが3回戦を前に敗退するのは、グランドスラムでは全仏オープン初戦で敗れた2003年以来10年ぶり、ウィンブルドンでは初戦敗退した2002年以来11年ぶりの事となった。
2回戦終了後の会見で、フェデラーは「パニックになる必要はないよ。それは明確さ。ただ練習に励んで、更に強くなって戻って来るまでさ。シンプルなものだよ。今後のツアーへ気持ちを切り替えるよ。もちろん、この大会でこんな結果は望んではいなかったけどね。」と、コメント。
「今後、まだ何年もプレーを続けるつもりなんだ。これまでグランドスラムでは36大会も連続でベスト8以上の成績を残しながら、突然こんなに早く敗退してしまうと、人々に何かが違ってきたのではないかって思われるのは自然な事さ。」
フェデラーをウィンブルドンのセンターコートで破る大金星をあげたのは、世界ランク116位の
S・スタコフスキ(ウクライナ)だった。スタコフスキは、フェデラーに対しサーブ&ボレーで果敢に攻め続け、3時間で試合に終止符を打った。
しかし、波乱の立役者であるダルシスは右肩の負傷により2回戦を前に棄権、スタコフスキは3回戦で元世界ランク8位の
J・メルツァー(オーストリア)に敗れ、快進撃を続ける事なく大会から姿を消した。
さらに、波乱はナダルやフェデラーに終わらず、シード勢の早期敗退は続いた。
第6シードの
JW・ツォンガ(フランス)は2回戦で途中棄権、第10シードの
M・チリッチ(クロアチア)は2回戦を前に棄権申し入れ、第11シードの
S・ワウリンカ(スイス)と第14シードの
J・ティプサレビッチ(セルビア)と第19シードの
G・シモン(フランス)は初戦敗退、第16シードの
P・コールシュライバー(ドイツ)と第18シードのJ・アイズナーは1回戦で途中棄権、第17シードの
M・ラオニチ(カナダ)は2回戦敗退となった。
また、2002年のウィンブルドン覇者であるベテラン
L・ヒューイット(オーストラリア)は、予選から勝ち上がた世界ランク189位
D・ブラウン(ドイツ)の変幻自在なテニスに翻弄され、2回戦敗退となった。
これにより、ウィンブルドン優勝経験者で生き残っているのは、第1シードで世界ランク1位の
N・ジョコビッチ(セルビア)のみとなった。2011年のウィンブルドンで優勝を飾っているジョコビッチは、昨年ベスト4進出を果たすも準決勝でフェデラーに敗れ大会連覇を逃していた。今年ジョコビッチは、2年ぶりの優勝を狙う。
また、77年ぶりの地元勢優勝を狙う第2シードのマレーも優勝候補の1人である。昨年のウィンブルドンで決勝進出を果たしたマレーは、決勝でフェデラーに敗れた。マレーと同じブロック(ボトムハーフ)にいたフェデラー、ナダル、ツォンガら強豪がいない中、マレーの上位進出に期待がかかる。
一方、日本勢では第12シードの
錦織圭(日本)は第23シードの
A・セッピ(イタリア)に敗れ3回戦敗退、予選から勝ち上がった
添田豪(日本)は2回戦で第9シードの
R・ガスケ(フランス)に敗れた。
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