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最後は「最高の事をやれた」

テニスのグランドスラムである全米オープン(アメリカ/ニューヨーク、ハード)は2日、男子シングルス2回戦が行われ、M・フィッシュ(アメリカ)は第18シードのF・ロペス(スペイン)に6-2, 3-6, 6-1, 5-7, 3-6のフルセットで敗れた。今大会を現役最後の大会と公言していたフィッシュは、これがプロテニス人生最後の試合となった。

>>全米オープン対戦表<<

第4セットでは、サービング・フォー・ザ・マッチも迎えていたが、それを取りきれずにファイナルセットへともつれたこの試合、フィッシュはその第5セットは激しい痙攣に襲われ勝利を手にすることが出来なかった。しかしフィッシュは全てを出しきり、トップ20選手を崖っぷちまで追い込んだこの試合に後悔はなかった。

33歳のフィッシュは、この大会は2012年以来の出場だった。その時は4回戦のR・フェデラー(スイス)との試合直前に激しい発作に襲われ、試合前に棄権を余儀なくされていた。しかしこの日の試合は、生涯忘れられない最高の試合の1つとなった。

2012年の全米オープン以来、不安障害に苦しめられてきたフィッシュ。そんなフィッシュは、自身のテニス人生の最後の花道として、全米オープンへ向けて北米のハードコート大会へ復帰し参戦していた。元トップ10プレーヤーのフィッシュは、大会会場であるフラッシング・メドーで新たな思い出を作れればと願っていた。そして自身が抱えていた病を公にすることで、同じような症状で苦しんでいる人達の救いになれればと語っていた。

「この夏は考えていたこと全てを達成することが出来た。そしてそれをとても嬉しく思っている。」とフィッシュは、悔いのない引退ツアーを振り返った。

フィッシュの現役生活はあと2日長引くかも知れなかった。この試合の第4セットでは、サービング・フォー・マッチを迎えていた。しかしそこでフィッシュは、3連続でミスを犯すと、続く相手のブレークポイントでは痛恨のダブルフォルトを犯してしまい、ラブゲームでブレークされてしまったのだ。

「あのゲームは、今日の最悪のゲームで最悪の気分だった。長いこと公式戦から離れていたし、あんな状況にもしばらく陥っていなかった。だから、こんなことも起きるものさ。」とフィッシュは、緊張があったことを明かしていた。

ロペスはそのチャンスを生かして、続く2ゲームを危なげなく奪うと、勝敗の行方は第5セットへと委ねられた。しかしその頃からフィッシュは足に痙攣が始まっていた。そんな状態ながらフィッシュは攻撃の手を緩めることはなく、ロペスはフィッシュに押されていた。

フィッシュは最後のセットでは、4本のダブルフォルトを犯しつつも、痙攣する足を何とか奮い立たせ7本のサービスエースも記録していた。

「相手がどこか痛めていると言う状況で戦うのはやりづらいもの。」とフィッシュ。「この状況をくぐり抜けられるかと不安になりながらプレーしていた。もちろん、トラブルを抱えてしまったのは分かっていた。」と、その時を振り返っていた。

そしてフィッシュの足は更に痙攣が増すばかりで、みるみる動きも鈍くなっていった。それでも棄権する気持ちは全くなかった。

「自分をコートから引きずり出さなければならなかったかもしれない。それでも自分は、止めると言う選択肢は一切なかった。」とフィッシュは試合への思いを語っていた。

ゲームカウント3ー4で迎えたフィッシュのサービスゲームで、フィッシュはポイント中にとうとう動けなくなってしまった。ロペスはそのゲームをブレークすると、続く自身のサービスをキープし、試合に終止符が打たれた。

「あんなことはここ数年なかっただろう。第5セットになっても、自分はいつも平気なはずだった。出来る限りの練習もしてきた。それでももう体は限界だった。だから、あの時に出来ること全てを出し切ったんだ。あれが精一杯だった。」とフィッシュは全力で戦ったことを明かしていた。

試合後、ネットを挟んで握手を交わした時、ロペスは「今日は、君が勝利に値するよ。君の方が良いプレーをしていた。」と、同い年の長年のライバルへ伝えたことを思い出していた。

その時のことをその後問われたフィッシュも、「自分もそう感じたよ。」と笑いながら答えていた。

そして「あんな状況のために練習をしてきたんだ。でも、素晴らしい観客と、最後の試合として本当に素敵な思い出になった。もちろん、最後のセットは除くけど、試合全体としてね。」と続けていた。

お互い33歳のフィッシュとロペスは、これが9度目の対戦だった。ロペスはフィッシュを“真の紳士”と表していた。

「彼(フィッシュ)は、素晴らしい選手で、すごいテニス人生を歩んで来た。この2・3年、彼が病に苦しんでいたのは本当に悲しいことだった。この数週間だけでも、こうしてまたコートへ戻って来てくれたのは、とても嬉しいことだった。」とロペスは、試合直後のオンコート・インタビューで語った。

フィッシュは試合後、最後の全米オープンの記者会見に1歳7ヶ月の息子を抱きながら現れた。フィッシュは肉体的にかなり疲れ果てていた。それはこの数年間、3時間を越える試合を暑さと湿気の中で戦っていなかったことを考えると当然のことだった。

フィッシュは水曜日の試合で素晴らしいプレーを披露したものの、引退を考え直す気持ちは全くなかった。彼はこれからゴルフをたくさんしたいと考えている。彼のゴルフは、ハンディキャップ0のプロ並の腕前。同時に全米テニス協会の助けになれればと考えている。

「個人的には平穏な心境さ。この数年は、自分が思い描いたようにテニス人生の終盤を送れなかったのは残念ではあるが、でもこれが人生。今の状況の中で最高のことをやれたと思っている。」とフィッシュは、出来る限りのことをやり遂げて引退する気持ちを語っていた。

(STATS - AP)

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■関連ニュース■ 

・試合中の辛い胸のうち明かす
・フェデラーら 引退惜しむ声
・元世界7位フィッシュが復帰
(2015年9月3日16時22分)

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