今季、見事復活を果たしたトップ選手といえば誰もが
メアリー・ピアースの名前を挙げるだろう。1995年全豪オープン優勝、2000年全仏オープン優勝。最高世界3位まで上り詰めたピアースは、2001年を境に怪我などに泣かされ、輝きを失っていた。しかし、5年ごとに訪れる黄金のシーズンでかつての勢いを取り戻し、グランドスラム2大会とツアーチャンピオンシップスで準優勝。30歳ながらランキング5位に入り、5年ぶりのトップ10でシーズンを終えた。来年以降も目標は「グランドスラム優勝とランキング1位獲得」と語るピアースの今年1年を振り返る。
年初は右肩の怪我が影響し、最高でもベスト8進出にとどまっていたが、6月の全仏オープンで復活の狼煙を上げた。第21シードで出場すると
L・ダベンポートらシード選手を次々と撃破し、自身5度目のグランドスラム決勝進出を決める。カナダ生まれ、アメリカ育ち。現在の国籍はフランスという複雑なバックグラウンドを持つピアースは、現在の故郷であるフランスの大観衆の声援に支えられ懸命に戦ったが、今年同じく復活を果たした
J・エナン=アルデンヌに敗れ、惜しくも決勝で涙を呑んだ。しかし、この勢いは本物で、ウィンブルドンでも9年ぶりのベスト8進出、ミックスダブルスではM・ブパティを組んでタイトルを獲得している。
夏のUSオープンシリーズに入っても好調を持続し、サンディエゴでは決勝で
杉山愛を下して今季初優勝。USオープンでも、4回戦でエナン=アルデンヌに全仏の雪辱を果たし、準々決勝でフランスの後輩
A・モレスモを下し、準決勝では昨年準優勝の
E・デメンティエワに逆転勝ちし、見事決勝進出。決勝では、これもまた今季劇的な復帰を果たした
K・クレイステルスの前に屈し準優勝に終わるが、翌週にはランキングを6位に上昇させ、2001年4月以来のトップ10入りを果たした。
10月にはモスクワで今季2度目、自身18回目となる優勝を上げ、ランキング5位へと浮上。その後右太腿の怪我から2大会を欠場したが、6年ぶりの出場となったツアーチャンピオンシップスでは、予選全勝で準決勝へ進み、第1シードのダベンポートを下し見事決勝進出。3時間以上に及んだ大接戦の末、モレスモに優勝を譲ったが、1999年以来となる5位でシーズンを終了した。
かつての名選手とはいえ、若年化が進む女子テニス界ではテクニックだけでは勝っていけない。しかし、ピアースは徹底したトレーニングで肉体改造を図り、若手選手にも負けないフィジカルを作り出し、今季の活躍に結びつけた。怪我さえなければ、来年以降も彼女ならトップ選手としてグランドスラム優勝を狙うことも十分可能だろう。来年もベテランのプレーに注目が集まるのは必至だ。