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総立ちの観客に手を振って応える杉山の顔が輝いていた。「聖地」と呼ばれるセンターコートで、元女王のヒンギスを破る殊勲の勝利を挙げた。緊迫したラリーの応酬を制した日本のエースは「勝った瞬間は夢心地。本当にうれしかった」と話し、感慨に浸った。
第1セットは5-5から相手サーブを破り、押しきった。しかし大一番の緊張から体に力が入った。「第2セットになったら、どっと疲れが出た」。安定していたサーブもリズムが崩れ、このセットを3-6。最終セットも0-3とリードされた。
杉山がシングルスで初めて「聖地」に立ったのは2年前の準々決勝。優勝したシャラポワ(ロシア)を追い詰めながら攻めきれず、逆転された。「同じ失敗はしたくなかった。ここまでやって最後に引くのは嫌だなと思った」。攻める姿勢を取り戻し、4ゲームを連取した。5-4で迎えたマッチポイントは1度でものにした。
ヒンギスは多彩な攻撃が最大の武器だが、母親の芙沙子コーチは「想定の範囲内だった」という。相手をおびき出し、得意のバックハンドをストレートに打ち込む杉山側の作戦が的中し、元女王を「彼女のバックハンドは致命的だった」とうならせた。今大会で通算50度目を迎えた4大大会出場で、母娘が蓄積した戦術が開花した1戦でもあった。(共同)(了)
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