■テニスGEEK通信(TENNIS GEEK NEWS)とは
テニスギアの「モノ」や「コト」を、深堀し、マニアックに、そしてGEEK(ヲタク)にお届けするコラムです。
ウインザーラケットショップ池袋店スタッフの中居が独自の目線で話題の商品を紹介します。
テニスに関する仕事をして30数年になる大ベテランですが、まだまだヤル気満々でテニスコートに立っているシニアプレーヤーです。
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「ホームストリンガーはそんなに甘くない。でもチャレンジしてみる価値はあります。」
初めてガットを張ったのは36年前の22歳のときでした。
テニスブーム真っ只中で、明日までに仕上げなくていけないラケットが100本以上というのは日常茶飯事でした。
でもいきなりガット張りができるほど簡単な作業ではありません。
まずは、張り上がったラケットの仕上げをしないといけないのですが、これがまた中々大変です。
○ポンドシール貼り
○飾り糸装着
○ステンシルマーク入れ
○グリップテープ巻き
などの作業があるのですが、この当時飾り糸は必須でした。
緩まないように、引っ張りながら行うのですが、これだけずっと毎日もやっていると、人差し指の第一関節から出血してくるのです。
これはガット張りをするスタッフ全員が経験していく登竜門でした。
ちなみに何のためにやっていたかというと、ハッキリとした理由はわからないのですが、スムース、ラフが飾り糸の編み方でわかるようになっているとか、ガットが切れたときに飾り糸が切れたガットを掴むことで、しばらく打ち続けられるとか、ホントかウソかハッキリわかりません。(切れたガットでプレーするのは違反です。切れたときのワンプレーは問題なし。)
ただのカザリという説が有力でしたので、いつしかその風習はなくなりました。
飾り職人を数ヶ月続けたときに、先輩からラケットのガット張りを教えてもらえたのですが、お客様のラケットが張れるまでに、100本くらい練習しました。
それだけ、ガット張りは難しいのです。
また、当時のストリングマシーンは手動の2点固定のドラム式というモノで、張り方によって変形が頻繁に起こってしまうので、張り師の技術が重要でした。
縦糸に対して横糸は何パーセント落とすかの乱数表みたいのがあったり、プリストレッチを何パーセントかけるとか、変形させないように、緩みづらいように、色々と儀式がありました。
現在は電動式6点固定ですので、昔ほどストリンガーの上手い下手は無くなりましたが、それでも技術の差はあります。
日本では、分銅式→ドラム式、油圧式→電動式と進化していますが、海外ではコラム式(ぜんまい式)というシステムがあり電動式の手巻き版というものです。
1991年のUSオープンにストリンガーとして参加することになりました。
このときのオフィシャルストリングがテクニファイバーで、コラム式のマシーンだったのです。
初めて見た形式で、ドラム式だとハンドルを時計回りに半回転くらいするだけなのですが、コラム式は時計の逆回りに3回転半くらい回してぜんまいを巻ききるのですが、ぜんまい式のおもちゃでもネジを回すのに最後の方は力がいりますよね。
あの何倍もの力でぜんまいを巻き切ります。
※ボタンを押すと指定したポンドでぜんまいが戻り止まります。電動式の引っ張りに似ています。
ハンドルがクルクル勢いよく回るので初めのうちはよく手をぶつけました。
1日20本を1週間続けたのですが、時計と逆回りに力を入れるのに慣れてないので、途中からテニスエルボーみたいに、肘が痛くなって大変でした。
ストリンガーは9人で、3列に3台ずつの並びで、そのど真ん中が自分の場所で、前後、左右、斜め前、斜め後ろすべて外国人に囲まれてポツンと日本人一人だけでした。
日本では、ほぼ2本張りで張っていたのですがここ(USオープン)では1本張りがスタンダードでした。
ガット張りのためのツールは自前のものを用意するのですが、当時まだ日本ではあまり使われていなかったのでスターティングクランプを持っていっていませんでした。
回りの8人と同じ張り方にしないといけないわけではありませんが、[郷に入っては郷に従え]の通り、USA張りにしたのですが、この張りには必ずスターティングクランプが必要で毎回隣のストリンガー(マイクさん)に借りていました。
USA張りは、ショートサイド、ロングサイドが無くストリングの左右を同じ長さにして、センターにセットし張り始めます。
長さの取り間違えをしないので合理的です。
縦糸を最後まで張り、横糸はど真ん中から上と下に半分ずつ張ります。このときにスターティングクランプを使います。
ただし、この張り方(USA張り)はメジャーにはなりませんでした。
縦糸から横糸に移るところが10センチくらいあり、見た目もあまりよくないし、無駄にストリングの長さを使ってしまいます。
(もしかしたら、ゴーセン「張り人」張りの元になったのかもしれませんね。)
当時の経験で、ガット張りは選手の勝ち負けに直結するくらい大事なことを学びました。
選手のガット張りは必ず同じストリンガーが行い、試合時間の直前に張るので、第一試合からのときは、早出で会場に入ったりしました。
自分が張っている選手が日毎に減っていくのが、寂しい気持ちにもなりました。
日本に帰ってきて、二つ欲しいものがありました。
英語力とストリングマシーンです。
英会話教室は長く続きませんでしたが、ガット張りは奥深く今でも勉強は続いています。
選手がこだわっていたように、張りたてが一番気持ち良いのです。気持ち良いということは、良いボールが打てるということです。
もし、ホームストリンガーを目指す方がいらっしゃいましたら、少し高くても電動式のストリングマシーンをおすすめします。
今でも、分銅式やドラム式のマシーンはありますが、思った通り張り上げるまでに数百本は張らないとダメだと感じます。
6点固定の電動式なら変形も少なく、毎回の張りの誤差も少なく済むでしょう。
問題は元が取れるかどうかです。
大事に使えば何千本も張れるはずです。
お子様がテニスの選手を目指していて、ご自身もテニスをしている場合、間違いなく元が取れます。
例えばストリングマシーンが20万円として、ロールガット約2万円、張り代約2000円とすると、63回で元が取れます。
月1回の張り替えペースで、5年ちょっとです。
社会人で週2回くらいテニスをしている方なら、2ヶ月から3ヶ月で張り替えるはずです。元が取れるのは10年後くらいになります。
ただ、経済的なことよりも
○張りたてで使えること。
○自分に合ったストリング、テンションを見つけやすくなること。
の方が大きいと思います。
ただ、以下の方は宝の持ち腐れになることもあるのでご注意ください。
○日々忙しくて時間のない方。
○家にスペースのない方。(畳1畳分)
○作業があまり好きではない方。
○集中力が持続しない方。(30分から60分)
私の知り合いで、ストリングマシーンを持っているのにお店に張りに来る方がいらっしゃいます。
2人の息子さんと本人の3人がテニスをやっており、息子さん達は数日でガットを切ってしまい、2週間くらい放っておくと、4、5本切れたラケットが溜まってしまい、全部張るのに半日かかります。
自分のテニスができなくなってしまうので、お店に張りに持ってくるという具合です。
ガット張りの作業が好きな人でないと、、、ということです。
私はナイロン、ポリエステルは1ヶ月、ナチュラルは3ヶ月を目安に張り替えていますが、少し前に縦ナチュラル、横ポリエステルのハイブリッドで張ったのですが、雨上がりに一度使ってしまったところ、凄い振動が出るようになってしまいました。
面圧を測ってみると10ポンド落ちていました。
振動の原因は、縦糸のナチュラルが水分を吸ってしまい縦糸だけ緩み、横糸のポリエステルとのバランスが崩れてしまったのです。
こうなるともう張り替えるしか手立てはありません。雨の季節にはポリエステルだけを用意した方がいいですね。
もし、ホームストリンガーを目指そうと思っている方は、ウインザーオリジナルストリングマシーンを販売しております。(※2020年5月15日(金)時点)
6点固定の電動式で、20万円を切ります。スターティングクランプ(1万円相当)プレゼントなどの特典をお付けしております。
何年も使うものなので、故障したり、クランプの摩耗があったりします。
購入後のメンテナンスがしっかりしていますので、安心してお使いいただけます。
ホームストリンガーに憧れているあなた!
今がチャンスです。
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