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賞金少ないと選手抗議、会見退席

シナー
シナー
画像提供: ゲッティイメージズ
テニスの全仏オープン(フランス/パリ、レッドクレー、グランドスラム)は24日に開幕するが、大会を前に行われた会見では男女の世界ランク1位であるJ・シナー(イタリア)とA・サバレンカを始め、多くのトップ選手が賞金の増額を求め大会に対して抗議活動を行った。

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現在、選手の多くが連名で四大大会に対し、賞金の増額や選手の福利厚生等の拡充を求めている。

選手たちが問題視しているのは、四大大会の総収益のうち選手に還元される賞金の割合が約15%に留まっている点。他のメジャーなスポーツは収益の35%~50%が賞金に充てられており、テニスは他のスポーツと比較し収益分配率が著しく低いと選手は主張している。

男子プロテニス協会のATPと女子テニス協会のWTAが主催する大会では総収益のうち約22パーセントが賞金に分配されており、選手たちは四大大会もこれと同じ水準にすることを求めている。

これを受け、この抗議に賛同する選手たちは22日と23日に行われた大会前の記者会見を15分で退席するという抗議活動を行った。

会見では本件について多くの選手が意見を述べている。

女子世界ランク1位のサバレンカは今回の抗議について、自身のためではなく、テニス界全体のための行動だと説明した。

「重要なのは私自身のことではなく、ランキング下位の選手たちや、苦しんでいる選手たちのこと。間違いなく、今の収入率でテニス界を生き抜くのは容易ではない」

「世界ランク1位として、下位の選手たち、怪我から復帰した選手たち、そして次世代の選手たちのために立ち上がり、戦わなければならないと思っている。私たちの主張は明確で、誰にとっても公平だと思う」

男子世界ランク9位のT・フリッツ(アメリカ)も切実に訴える。

「これは単にもっとお金が欲しいというものではない。公平さを求めているだけだ。大会の収益が増えるほど、選手への収益分配もそれに見合ったものになるべきだと思う」

男子世界ランク3位のA・ズベレフ(ドイツ)と同5位のB・シェルトン(アメリカ)は、世界ランク200位以下の選手も競技で生計を立てられるようにする必要があると説いた。

ズベレフ「もしツアーやグランドスラムが協力し、公平な分配率を確保して計画を立てれば、多くの選手が生計を立てることが実現すると思う。世界ランク1、2、3位の選手だけが恩恵を受けるわけではない。世界ランク200位の選手の中にも非常に優れたテニスプレーヤーがいるにもかかわらず、生活費を稼ぐのがやっとだったり、赤字だったりする選手がいる」

シェルトン「こうした(大きな収益を上げている)大会で賞金を年に4回用意すれば、選手の年間収支を赤字ではなく黒字に保つのに大いに役立つ。選手たちは非常に高いレベルでプレーしており、トップ200位以内はもちろん、それ以外のランクにも才能あふれる選手がたくさんいる。その順位にランクインしていればこの競技で生計を立てられる必要があるが、現状はそうではない」

なお、この15分で会見を退席するという抗議内容については、メディアを利用して四大大会の賞金に対する収益分配率が約15%であるということを広く周知する狙いがあるものとみられており、各選手はメディアに対して敵意はないと口を揃えた。

女子世界ランク3位のI・シフィオンテク(ポーランド)は言う。

「まず最初に、私たちは全員メディアに対して何の恨みも抱いていないし、皆さんのことを心から尊敬している。メディアとの関係がどれほど重要か、私たちは理解している。しかし、大会に関しては、大会側が私たちにもっと貢献してくれるなら、私たちももっと貢献できると考えている」

「皆さん(メディア)と最も接点が多い私たちトッププレイヤーだけでなく、下位ランクのプレイヤーや大会全体の運営体制にとってもこれは重要なこと。なので、個人的には皆さんに何の恨みもないけれど、これは私たちが下した決定であり、私たちはこれに従う」

選手たちは賞金の問題に加え、選手の福利厚生や年金制度の拡充についても併せて訴えているが、大会側の対応の遅さに不信感を抱いていると男子世界ランク1位のシナーと同13位のA・ルブレフは語った。

シナー「これは敬意の問題だ。トップ10の選手たちが、少しの回答を得るために1年以上も待たなければならないというのは決して気持ちの良いものではない。同時に、賞金のことばかりが話題になっているが、年金についても議論すべきだ。これは非常に重要な問題。テニス選手が引退した後に年金を受け取れるように願っているし、(スケジュールなどの)意思決定についても重要だ」

ルブレフ「何年もコミュニケーションを取ろうと努力し協力しようとしても、うまくいかず、誰も耳を傾けてくれない。だからある時点で『少なくとも何か行動を起こし、注目を集め、話し合えるようにしなければならない』と思う。もし注目されなければ、この状況はいつまでも続くだろう」

「彼らは話を聞こうとしない。返事もくれない。例えば、メールを送っても公式メールに何ヵ月も返信がない」

「重要なのは僕たちが一体となってスポーツを発展させ、誰もが心地よく感じられるようなことを一緒に成し遂げようと努力すること」

「選手たちのおかげで莫大な利益を生み出しているのだから、今のやり方は少し間違っていると言える」

これらが選手の主張となっている。

世界的なエンターテインメントである四大大会は、世界中から集まる観客からの収入、世界各地の放映権、莫大なスポンサー料で年々収入を増やしている。各大会はこれに伴い賞金額を上げており、近年は賞金総額が毎年史上最高額を更新している。

今年の全仏オープンも例に漏れず、賞金総額は昨年から9.53%増額され、大会史上最高額となる約114憶800万円(6,172万3,000ユーロ)となっており、男女シングルスの優勝賞金は約5億1,800万円(280万ユーロ)。本戦1回戦で敗れても約1,600万円(8万7,000ユーロ)、予選1回戦で敗れても約440万円(2万4,000ユーロ)が獲得できる。

しかし、収益分配率をみると選手の主張の通り賞金額は約15%に留まる見通しだ。もちろん、金額だけを見るとかなり大きな額となっているが、選手が競技のみで生計を立てることが難しいのは、テニスという競技の特殊性が原因となっている。

テニスは団体競技とは違い、自身を向上させるために必要なコーチやサポートメンバーの帯同費用は選手が支払う必要がある。

また、選手はプロとしての活動を続けるために世界ランキングを維持し上げていかなければならないが、国内で完結する競技とは異なり、テニスはランキングポイントを稼ぐため、毎週世界各地で行われている大会に遠征する必要がある。そのため、国内で完結するチームスポーツなどに比べ、はるかに遠征費用がかかる。

さらに、他競技などでしばしばみられる契約金や最低保証金などの制度がテニス競技自体にはなく、選手は怪我や病気を患った際、競技からの収入が途絶える。

そのため、選手はスポンサーからの支援を受け競技に取り組んでいる場合がほとんどだが、マイナー競技ではなく、これだけ世界規模で競技人口の多いテニスにおいて、ほんの一握りの上位300人に入ったとしても競技のみで生計が立てられないのは異質といえる。

そうなると、才能ある選手でも夢半ばで諦めざるを得ない状況となる可能性が他競技に比べ高くなる。

そうした状況が続けば、次世代の子供たちがテニスを選択しにくくなっていき、競技の発展に繋がらないだろう。

現状の選手たちが生計を立てられるようにする必要があるのはもちろんのこと、今後、この世界規模のスポーツで上位数パーセントに辿り着く努力をした選手が競技のみで生計を立てられるようにすることがテニスの未来を考えても必要になる。

つまり、大会全体の収益が上がっている今どう動くかが、今後のテニス界を左右することになるだろう。

大会側には誠実な対応が求められる。


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