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セリーナ「全てを水に流す」

女子テニスでBNPパリバ・オープン女子(アメリカ/インディアンウェルズ、ハード、賞金総額5,381,235ドル、優勝賞金900,400ドル)に第1シードでエントリーしているS・ウィリアムズ(アメリカ)は金曜日に初戦を迎え、2001年に優勝して以来となる出場を果たす。

当時まだ10代だったセリーナは、観客からのブーイングを浴びながらの優勝だったが、若き彼女は優勝の喜びよりブーイングから受けた心の傷の方が遥かに大きかった。

今大会シード選手全員が1回戦を免除されているため、初戦となる2回戦が金曜日に行われるセリーナは、試合前日に会見に臨んだ。

彼女はもう二度とこの大会には戻って来るとこはないと思っていたと言う。そして大会前に滞在していたロサンゼルスでも、会場入りする気持ちの準備が整わず予定より1日長く滞在してから会場であるインディアンウェルズへ訪れていた。

「ここへ来るのにちょっと緊張していた。最初は“一体何を思っているの?”って感じだった。あのハードルを越えなければならなかった。」とセリーナは心境を明かしていた。

会見前にセリーナは練習を行ったが、警備員を置きファンやメディアをシャットアウトしての練習だった。1月に行われた全豪オープンで優勝して以来、セリーナは女子国別対抗戦であるフェドカップでコートに立っただけだった。

先月、セリーナはTime.comのコラムの中で今大会へ向けての気持ちの変化を綴っていた。

その決断を両親に伝えた時は緊張したと語る。両親もセリーナの気持ちに賛同してくれて、父親のリチャード氏は「もし戻らなければ大きな間違いになるかも知れない。その考えは本当に立派な事。」とセリーナに伝えたと言う。

33歳となったセリーナは、輝かしいテニス人生を送っている。19回のグランドスラム優勝、未だに世界ランク1位に君臨し、何百万ドルもの賞金を獲得し、多額のスポンサー契約を結んでいる。

2001年、19歳だったセリーナと実の姉であるV・ウィリアムズ(アメリカ)との試合は、今でも忘れられない物になっている。ファンはその準決勝での姉妹対決を楽しみにし勝敗を予想するなど、大きな注目を集めていた。

しかしその試合は、開始わずか20分前にヴィーナスが怪我を理由に棄権しセリーナへ勝利が転がり込む呆気ない幕切れとなった。そして会場はブーイングの嵐となり、それはセリーナを驚かせるほどだった。そしてそれは父親であるリチャード氏の差し金ではないかと言う憶測にもセリーナは心を痛めていた。

「それが本当の発言である必要はないのは誰もが分かっていたと。でもそんな思いは直接質問してくれるべきだと思う。これまでのテニス人生全てで正直に生きて来たのだから。」とセリーナは思いを語っていた。

そして決勝戦ではK・クレイステルス(ベルギー)を下して優勝したセリーナだったが、リチャード氏曰く、その試合中に人種差別的な野次も聞いたと語っていた。

「お父さんが子供の頃に経験したような事だった。だからこうしてまたこの大会へ戻る事を話した時は、本当に感情的になってしまった。」とセリーナは父への思いも加えていた。

その決勝戦の第1セットで、劣勢に立たされた時にセリーナは「この試合に勝ちたいのではない。この場からただ去りたいだけと自分自身に言っていた。」とその時を思い出していた。

セリーナはロサンゼルスから2時間の郊外にあるスラム街のコムプトンと言う街でテニスを習った。そしてプロとしての初勝利もこのインディアンウェルズで記録していた。それは1997年にヴィーナスと組んで出場した女子ダブルスだった。1999年の決勝戦でS・グラフ(ドイツ)を下しての優勝は、彼女が初めて手にしたビッグ・タイトルだった。

彼女の今回の決断は、ネルソン・マンデラ氏の映画に影響を及ぼされた部分もあると言う。それは彼が和解へ熱心に臨む姿だった。

「何かを許すためには、全てを水に流さなければならない。自分にとって最高とは言えない状況だってくぐり抜けて来た。ここへ戻る事への緊張や、どう感じるかとかどんな風になるかと言う思いも乗り越えてようとしている。それは経験しなければならない事。許して水に流すには、そんな感情さえ水に流さなければならない。」

姉のヴィーナスは今年も出場してはいないが、セリーナの意思を尊重してくれていると言う。

セリーナの今回の決断には男子世界ランク1位のN・ジョコビッチ(セルビア)も歓迎の気持ちを表していた。

「早かれ遅かれ彼女は戻って来なければならないだろう。だから今回彼女が何とか精神的なチャレンジや恐怖のような物を乗り越えた事は、彼女に取っても良いことだと思う。」とジョコビッチ。

女子世界ランク5位で、セリーナと親交の深いC・ウォズニアキ(デンマーク)もセリーナをとても寛大な人間としながら「彼女は自分の信念を持っているし、その信念を守り通す人間なの。」とセリーナについてコメントしていた。

セリーナは金曜日の夜に行われる2回戦でA・クルニッツ(セルビア)を6-2, 6-1で下したM・ニクルスク(ルーマニア)と対戦する。


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(2015年3月13日11時44分)

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