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テニスのグランドスラム大会であるウィンブルドン(イギリス/ロンドン、芝)は大会最終日の5日、男子シングルス決勝が行われ、第2シードのR・フェデラー(スイス)が、第6シードのA・ロディック(アメリカ)を5-7, 7-6 (8-6), 7-6 (7-5), 3-6, 16-14で破り、2年ぶり6度目の優勝を果たした。
フェデラーは15個目、ロディックは2個目となるグランドスラムタイトルをかけて行われたこの決勝は、タイブレークのないファイナルセットで史上最多となるゲーム数を要した。
ファイナルセットだけでも90分を超える接戦を制したフェデラーは、第5セット第30ゲームでこの日唯一となるブレークに成功すると、史上3人目となる通算6度目のウィンブルドンタイトルを獲得した。またフェデラーは、これまでにUSオープンで5勝、全豪オープンで3勝、そして全仏オープンで1勝しており、グランドスラム勝利数を15とすると、これまでの記録であったP・サンプラス(アメリカ)の14を抜き、単独トップとなった。
この日の試合途中で歓声とともにロイヤルボックスに登場していたサンプラスは、「彼はすでに伝説だ。そして今、象徴になった。」とフェデラーを評した。
サンプラスはすでにフェデラーを「史上最高のプレイヤー」と賛辞を贈ってはいるが、27歳のフェデラーがそのような評価を受けるのは、疑いのないところだ。
優勝セレモニーのインタビューでフェデラーは「子供の頃に決めた本当のゴールの一つではないけれど、何てキャリアで、何て1ヶ月だったんだろう。」とその喜びを語っている。
フェデラーは、先月行われた全仏オープンで優勝し、生涯グランドスラムを達成するとともに、サンプラスが持っていたグランドスラム最多勝記録に並んでいた。
「ごめんよ、ピート。君の記録を守れなかったよ。」とロディック。ロディックはこの試合で、フェデラーに50本ものサービスエースと107本のウィナーを決められ、記録が取られ始めた1927年以降、最長となったフルセットマッチに敗れている。
ロイヤルボックスで試合を観戦していた歴代のチャンピオン達、サンプラス、R・レーバー(オーストラリア)、B・ボルグ(スウェーデン)らも満足に値する内容だった4時間16分の激闘では、全てを簡単にこなすように見えるフェデラーであっても、最大限の努力を要し、ロディックは紙一重のところでウィンブルドン初優勝のチャンスを逃した。
元世界ランク1位のロディックは、2004年と2005年の決勝でもフェデラーに敗れており、これでウィンブルドン決勝での成績を0勝3敗とした。フェデラーのマッチポイントで、ロディックがフォアハンドをミスすると、フェデラーはその場で飛び上がり喜びを爆発させた。その後ネットに歩み寄ると、ただの握手ではなく、互いに抱き合い健闘を称えあった。
試合終了後、「15」と刺繍されたジャケットを羽織り歓声に応えるフェデラーに対し、敗者という言葉が不釣合いなロディックは、ベンチにぐったりと座り、頭を抱えていたが、会場からの「ロディック!ロディック!」という大歓声に気付くと、ゆっくりと顔を上げた。
「スポーツやテニスは時々残酷だ。僕もいくつかグランドスラムの決勝でフルセットでの敗退を経験しています。とても辛いことです。」と、フェデラーは敗者に気遣いを見せた。
昨年の今大会決勝でフェデラーは、大会6連覇の偉業が懸かっていたもののR・ナダル(スペイン)にファイナルセット7-9で敗れ、偉業達成を阻まれていた。さらに、その6週間後には、237週間守り続けていた世界ランク1位の座をナダルに奪われている。
しかし、ディフェンディング・チャンピオンであるナダルはヒザの故障のために今大会に出場していない。この日の決勝はフェデラーにとって、グランドスラムのタイトルだけではなく、世界ランク1位の座への返り咲きも懸かっており、見事にそれを成し遂げたことになる。
「こんなに長い間、怪我もなくプレーを続けることが出来たなんてビックリすることだね。大きな試合に勝つために必要なことはわかっている。こんなに多くのタイトルをこんなに短い期間で取れたなんて、気が狂いそうだよ。」とフェデラー。
当時31歳でグランドスラム14勝目を達成したサンプラスが、第1セット第3ゲーム後のチェンジコート時、センターコートに登場した際、フェデラーは軽く会釈し、小さく手を振ることでそれに答えた。そのことについてフェデラーは「無礼なことはしたくないな、と思ったんだ。」と振り返った。
この日の試合までフェデラーに対し、2勝18敗と大きく負け越しており、グランドスラムでは0勝7敗といまだに勝ち星がなかったロディックであったが、第1セット第12ゲームでこの日最初のブレークに成功し、第1セットを先取する。
第2セットではお互いにサービスキープが続き、タイブレークに突入。番狂わせを期待する歓声が上がる中、ロディックが6-2とし4本のセットポイントを獲得、セットカウント2-0とする絶好のチャンスを迎える。しかし、ここで緊張したのか、そのチャンスをロディックが取りこぼすと、フェデラーが6ポイントを連取して1セットオールとなる。
第3セットでもタイブレークの末にセットを奪ったフェデラーだったが、第4セットでこの日2度目のブレークをロディックに許し、試合はファイナルセットに突入する。ウィンブルドンでは、ファイナルセットでのタイブレークは採用しておらず、両者の戦いは夜にまで及ぶと思われた。
ファイナルセットで先にチャンスを得たのはロディック。ゲームカウント8-8でロディックに2本のブレークポイントが訪れるも、フェデラーがサービスウィナーとボレーウィナーでここはしのぎ、ここをしのぐと、お互いにブレークポイントにたどり着けぬまま第30ゲームを迎える。
運命を分けた第30ゲーム、デュースからロディックのフォアハンドがベースラインを割ると、フェデラーにこの日7本目となるブレークポイントが訪れる。この試合ここまでブレークに成功していなかったフェデラーだったが、この日最初にして最後のブレークに成功し、長かった2週間に終止符を打った。
「最後の最後までアンディのサーブをブレークできなかったから、いらいらしていた。だから満足感はとても大きなものだよ。全く試合のコントロールが出来なかったわけだからね。」とフェデラーは試合を振り返っている。
表彰式が終わった後、ロッカールームでフェデラーが優勝の喜びをかみ締めていると、コートキーパーたちが記念品としてセンターコートのネットがプレゼントした。
今年のウィンブルドンは、歴史上初めてセンターコートに屋根が設置された大会となった。しかし、今年は晴天に恵まれ、最初から屋根が閉じられて行われたのはわずかに1試合のみ。この日の決勝も青空の下で行われていた。
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