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Vol.12トッププロのサービス大解剖

トッププロのサービス大解剖

サーブだけでは勝てない時代に

まずは、今のテニス界における全体的な傾向について、簡単に整理しておこう。

サーブの進歩よりもリターンの進歩のほうが上回った

'90年代前半には、「このままラケットやサーブが進歩していけば、いずれサーブだけでポイントが終わってしまうつまらないテニスになるのではないか」と、よく言われた。しかし、現実にはそうはならなかった。

なぜか。それは、サーブの進歩よりも、リターンの進化のほうが上回ったからだ。実際、サーブのほうは、これから250km、300kmと順調にスピードアップしていくとは考えにくい。生身の人間の動作である以上、野球のピッチングと同様に、そろそろ限界に近づいているのではないだろうか。それに対してリターンのほうが、読みや反応、さらにラケット性能の向上(多少当たりが悪くても返ってくれる)といった部分で、進化の余地が残されていたわけだ。

というわけで、今は、単純なスピードだけでは、なかなかサービス・ウィナーが取れなくなっている。ロディックのような220km級のサーブがライン際に入れば、多少読まれていてもエースが取れるが、200km級では、(速いコートを除けば)相手の読みを外すコンビネーションを工夫しなければ、当たり前のように返されてしまうのだ。

実際、ウィンブルドンでも、以前よりもサーブ&ボレーが減り、ストローカー同士のラリーが増えていることは、今の状況を象徴している。

そうした流れの中で、男子でもサーブだけの選手は上位に入れなくなってきた。2001年にイバニセビッチがサーブ力でウィンブルドンを制したが、彼ほどのビッグサーブがあっても、年間を通して好成績を挙げることはできない。その他にも、ウェイン・アーサーズやマックス・ミルニーといった良いサーブを持っている選手はいるが、今回はランキングが低い選手はあえてピックアップしていない。

テニスの中で、男女差がいちばん大きいショット

またサーブは、男女差がいちばん大きいショットでもある。男性と女性では肩から腕にかけての筋力の差が大きく、男子のような理想的なスウィングをするには、ある程度の筋力も必要となるため、女子には男子と同じフォームでサーブを打てる選手が非常に少ないのだ。

そのため、サーブで攻撃できる選手は女子では少なく、サーブに対する考え方も、男子とはかなり異なっている。

サーブの考え方にも2通りある

以上のような状況から、サーブでの狙いも、2通りにはっきり分かれている。ひとつは、サーブで完全に優位に立ち、できればサーブ1本か次のショットで決めたいという狙い。もうひとつは、サーブ後のラリーを優位に始められれば十分、あるいは厳しいリターンさえ打たれなければOKという考え方だ。

前者の、サーブで勝負するタイプの選手の割合は、今や男子でも多数派とは言えず、女子ではかなり限られている。

後者のほうについては、相手のリターンが良くなっている中で、サーブで無理して自分のリズムを崩すよりも、自分のペースでラリーに持ちこみたいという選手が多くなっているわけだ。

また、セカンドサーブからのポイント獲得率に自信がある選手の場合、ファーストでは思いきって勝負ができる。たとえば強いときのクエルテンなどは、そうした考え方で、ファーストは完全なフラットで、セカンドは強いスピンというようにはっきりとメリハリをつけていた。

もちろん、どのタイプの選手でも、サーフェスの影響は強く受ける。ロディックのサーブでもクレーコートでは普通に返されてしまうので、サーフェスによってサーブの組み立てを変えるというのも当然の戦略なのだ。



「アンディ・ロディックのサービス」>>

(テニスジャーナル 2004年8月号)
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