テニスのグランドスラムである全豪オープン(オーストラリア/メルボルン、ハード)は大会初日の18日の朝、BBCとバズフィード・ニュースが発表した八百長に関するニュースで、これまで「ハッピー・スラム」と呼ばれていた大会に影を落とす事態へと発展した。
ゆったりとした雰囲気の中で行われるグランドスラムであることから「ハッピー・スラム」と呼ばれている全豪オープンだったが、開幕からの10日間でテニス関連機関幹部が2度の緊急会合を設け、その問題について話し合いをしていた。
そんな中でスタートした大会では、序盤から波乱に見舞われていた。男子シングルスでは第5シードの
R・ナダル(スペイン)が
F・ベルダスコ(スペイン)に、女子シングルスでは第2シードの
S・ハレプ(ルーマニア)が予選を勝ち上がった
Z・シュアイ(中国)に1回戦で敗れ、初戦で姿を消した。
そして迎えた決勝戦で、男子は第1シードの
N・ジョコビッチ(セルビア)が第2シードの
A・マレー(英国)を下し、全豪オープンの決勝戦では負けなしの6度目の優勝を飾った。
女子では、第1シードの
S・ウィリアムズ(アメリカ)が順当に勝ち上がる。これまでの全豪オープン決勝戦では6戦全勝だったものの、今回は第7シードの
A・ケルバー(ドイツ)に屈し、2連覇とはならなかった。
今年の全豪オープンは、昨年記録した観客動員最多の70万3,899人を塗り替える72万363人を記録していた。
女子シングルス決勝戦では、多くの予想がセリーナ優勢の中、ケルバーがフルセットで勝利を飾った。セリーナが優勝すると、
S・グラフ(ドイツ)のオープン化以降グランドスラム最多優勝の22度(女子テニス史上最多優勝は
M・コート(オーストラリア)の24度)に並ぶはずだったが、ケルバーに阻まれた。
セリーナは決勝戦まで1セットも落とさない完璧な勝ち上がりを見せていたが、今回の敗戦でグランドスラム2大会連続でタイトル獲得とはならなかった。昨年の全米オープンでは、年間グランドスラムを目指して出場していたセリーナだったが、準決勝で
R・ビンチ(イタリア)にまさかの敗退を喫していた。
「誰もが私の勝利を、どの試合でもどの大会でも、毎日のように予測している。まるでロボットかのようにね。でも私はロボットではないの。」とセリーナは想いを語っていた。
男子シングルス決勝戦では、ジョコビッチがマレーをストレートで下して、R・エマーソン(オーストラリア)の大会最多優勝に並ぶ6度目の優勝を飾った。これがグランドスラムで11度目の優勝となったジョコビッチ。
全豪オープン決勝戦では負け知らずで、これまでのグランドスラムも5大会連続で決勝進出を果たし、1大会だけ優勝を逃していた。それは昨年の全仏オープンで、決勝戦で
S・ワウリンカ(スイス)に屈していた。
全仏オープンは、ジョコビッチが獲得していない唯一のグランドスラムであり「この15カ月、テニス人生において疑う余地もなく最高のテニスをしている。」と語るジョコビッチは、この勢いを維持し全仏オープンの優勝を既に視野に入れていた。
マレーは、これが全豪オープン5度目の決勝進出だったが、これまで同様にタイトル獲得には至らなかった。しかし、今年のマレーは数々の不安を乗り越えての決勝進出だった。
妻であるキムは臨月を迎え、第一子の出産を目前としてイギリスに残ってその日を待っていた。そしてキムの父であるN・シアーズは
A・イバノビッチ(セルビア)のコーチとして大会へ訪れていた。しかしイバノビッチの試合中に倒れてしまい、救急車で病院へ運び込まれた。偶然にもその時、マレーも別のコートで3回戦を行っていた。
「この数週間はコート以外で、とてもタフなものだった。」
そして試合が終わると気持ちは一気に妻へと注がれ「君はずっとこの2週間、女神のようだった。ずっと応援してくれて本当にありがとう。すぐに飛行機で家に帰るよ。」と感情的になりながら想いを述べていた。
今大会を最後にコートから去った選手がいた。元世界ランク1位の
L・ヒューイット(オーストラリア)は全豪オープンで今回が自身20度目の出場となった。この大会での引退を表明していたヒューイット。今後はオーストラリアのデビスカップの監督の職に就く。
シングルス2回戦で、今大会ベスト8入りを果たした
D・フェレール(スペイン)に敗退したヒューイットは、2001年の全米オープンと2002年のウィンブルドンでチャンピオン。
「普段と同じように、全てを出し切った。ロッカールームに忘れ物など何もない。それはいつも誇りに思っていること。」と、フェレール戦後の会見で語っていたヒューイットは、男子シングルス決勝戦直前でスーツに身を包み、
T・ローチ(オーストラリア)、J・ニューカム、
P・ラフター(オーストラリア)など、オーストラリアを代表するレジェンド達と観客席から現れる演出に加わり会場を沸かしていた。
大会開始直前、BBCとバズフィード・ニュースが、トップ50にいる16名の選手が不可解な賭けが掛けられたために、その賭けが無効となった試合に関与していたとするレポートを公にした。
そこにはグランドスラム優勝者も含まれるとする驚きのものだった。そのレポートは、テニス関連機関が疑わしい選手に対して何の調査も行わなかったとも語っていた。
そのため、テニス関連機関の幹部は緊急会合を設け、その疑いを否定する会見を開いた。テニス関連機関は、2008年にグランドスラム運営委員会、男子プロテニス協会、女子プロテニス協会、国際テニス連盟から設立されたテニス腐敗防止委員会が運営する独自の調査を行うことを決めたと発表していた。
(STATS - AP)
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