M・チリッチ(クロアチア)が
錦織圭(日本)を下して幕を閉じた今季最後のグランドスラムである全米オープン(アメリカ/ニューヨーク、ハード)は、約10年ぶりとなる
R・フェデラー(スイス)、
R・ナダル(スペイン)、
N・ジョコビッチ(セルビア)がいない決勝戦となり、男子テニスの新しい幕開けを感じさせた。
次のグランドスラムは来年1月に行われる全豪オープン。その大会への展望は、今回の全米オープンの結果から男子テニス界の世代交代さえ感じさせた。もしその流れが本当なら、次は誰がタイトル獲得に名乗りを上げるのだろう。
全米オープンで自身初のグランドスラム優勝を飾ったチリッチは「どの選手にも優勝する可能性が広がったと感じている。」と自身の思いを語った。
2005年の全仏オープン以降、今回の全米オープンまでの38回のグランドスラム中36回がトップ4と呼ばれるジョコビッチ、ナダル、フェデラー、
A・マレー(英国)が優勝を分け合って来た。2009年の全米オープンでは
J・M・デル=ポトロ(アルゼンチン)がフェデラーを下し、今年の全豪オープンでは
S・ワウリンカ(スイス)がナダルを下して優勝しているだけだった。
198cmと長身のチリッチは試合後のテレビでのインタビューで「本当に素晴らしいチャンピオンが達がいるんだ。その選手達に割って入って、そんな選手達を倒してグランドスラムの決勝にいったり優勝したりするのは全く容易な事ではないんだ。」と男子テニス界の厳しさを述べていた。
そして「ここ数年は、それを成し遂げるためには信じられないプレーをする必要があった。今回の自分はちょっとラッキーだった所もあった。ラファ(ナダル)が欠場していたし、錦織よりはドローにも恵まれた。ジョコビッチやマレーなどと戦わなくてすんだからね。」
しかしそのチリッチも、決勝までの3試合は過去の対戦ではかなり不利な相手を撃破して来た。準決勝では、33歳にして18度目のグランドスラム優勝が視野に入っていたフェデラーをストレートで退けていた。
前年度チャンピオンで大会連覇を狙うナダルだったが、右手首の故障で今年の全米オープンは欠場を強いられる結果となっていた。そして世界ランク1位のジョコビッチは、錦織の前に準決勝で姿を消していた。
それまではフェデラー、ナダル、ジョコビッチのビッグ3と言われた男子テニス界をビッグ4と言わしめたマレーだったが、昨年受けた腰の手術後はなかなか本来の調子を取り戻せていないのが現状。
今年の全豪オープンでのワウリンカの優勝は、チリッチを含め他の選手達に何かの変化を感じさせるものだった。そして全仏オープンでは
E・ガルビス(ラトビア)が、ウィンブルドンでは
G・ディミトロフ(ブルガリア)と
M・ラオニチ(カナダ)と言う若手がベスト4へ名を連ねていた。
「若手がそこまで来ているんだ。もうそこまでね。これはテニス界には良いニュースだと思う。」と語るのはチリッチのコーチで2001年ウィンブルドン覇者の
G・イバニセビッチ(クロアチア)。「まさにテニス界の新しい風。テニス界はこれを必要としていたんだ。」
準決勝でチリッチに敗退した後、フェデラーは彼自身やジョコビッチ、ナダルがいない決勝戦の意味はと問われ「あなたはあなた自身の思いを語れば良い。全豪オープンの時も同じような質問をして来た。そして誰もがね。それでも全仏オープンとウィンブルドンの決勝戦を見ただろう。でもまたここでこうしてまた君達がそんな質問をする機会に恵まれた。だから書きたい事を書けばよい。」と答えていた。
フェデラーが語った事は確かに正しい。全仏オープンはナダルとジョコビッチ、ウィンブルドンはジョコビッチとフェデラーの決勝戦だった。今回のチリッチの優勝で、男子テニス界の変化を語るのはまだ早いかも知れない。
「また新たなグランドスラム・チャンピオンが生まれるかも知れない。でも彼等もまだそこにいるんだ。」と、そのチリッチも来シーズンでのトップ4の存在の大きさを語っていた。
「それでも自分やラオニチ、ディミトロフ、錦織、そして怪我から復帰するであろうデル=ポトロにも更なるチャンスが広がっているとも感じているんだ。」とこれまで以上の可能性の大きさも実感していた。
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