テニスのグランドスラムである全米オープン(アメリカ/ニューヨーク、ハード)は8日、男子シングルス決勝が行われ、第10シードの
錦織圭(日本)は第14シードの
M・チリッチ(クロアチア)に3-6, 3-6, 3-6で敗れ、日本人初のグランドスラム優勝の歴史的快挙を逃した。
24歳の錦織はこの決勝の舞台に立つまで、第5シードの
M・ラオニチ(カナダ)、第3シードの
S・ワウリンカ(スイス)、第1シードの
N・ジョコビッチ(セルビア)と、3人のトップ5シードを下す活躍を見せていた。ラオニチとワウリンカとの試合はいずれもフルセットにもつれる接戦で、その2試合で8時間半にも及んだ。
そして準決勝ではジョコビッチをセットカウント3ー1で下すと、アジア勢男子選手として初めてグランドスラムの決勝進出を決めた。
「今では誰でも倒せる実力があることを表す事が出来たと思います。」と語る錦織。しかしチリッチとの決勝戦では、ここまでの激戦の疲れからか、プレーに精彩を欠いた。「この2週間であまりにもコートに立ちすぎました。もう1試合戦う事が出来ませんでした。」
実は錦織はこの大会前は、出場さえ危ぶまれていた。右足の親指付け根に大きな炎症を起こしており手術を受ける結果に。そのために出場を予定していた前哨戦全てをキャンセルしていた。
そして臨んだこの大会では予想を越えるテニスを披露した。自身初のグランドスラムでの準決勝進出を果たし、その準決勝でも勝利を飾った。
「この2週間で本当にたくさんの事を得られたと思います。」と錦織は大会を振り返った。
その1つは祖国日本でテニスへの関心の広がり。錦織の故郷の島根県松江市では800人以上がパブリックビューイングに集まり、故郷からのヒーローに声援を送っていた。大きく掲げられた旗には“ 頑張れ錦織圭選手、松江市の星 ”と書かれたものもあった。
日本時間の火曜日の午前6時10分に始められた試合のため、ある者は仕事へ行く途中に足を止めて観戦したり、また仕事の休みを取る人まで現れていた。
「これは人生において、ここ松江市で正しく最大のニュースである。」と語るのは松江市に住む59歳の男性会社員。
第1、第2セットを失った瞬間、会場は沈黙に包まれた。そして第3セットも先にブレークを許すと、多くの観客が身を縮めて反撃を願っていた。
「錦織選手は、その意思の強さで私達を本当に感動させてくれました。この活躍はこれからもずっと心に残るものになるだろうし、日本でのテニス人気が高まる事になるでしょう。」と会場に訪れた女子大学生が錦織の功績に感動していた。
そして試合が行われたアーサー・アッシュ・スタジアムには、ニュース・ヤンキースで活躍している田中将大投手も観戦に訪れていた。
この日の試合では、これまでトップ選手を下す大きな武器となった鋭く正確なグランドストロークが影を潜め、なかなか主導権を握れずにいた錦織。そしてチリッチの最大の武器である強烈なサービスにも苦しめられてしまった。
「チリッチはどんどんコートの中に入って攻撃して来た。圭は受け身に回ってしまい、試合の主導権を握らせてもらえなかつた。」と語るのはコーチのダンテ・ボッティーニ氏。錦織は1989年の全仏オープン・チャンピオンの
M・チャン(アメリカ)氏とボッティーニ氏の二人をコーチに付けている。
試合には負けてしまった錦織だが、既に前を向いていた。次回は疲労を溜めないように、5セットマッチをせずに勝ち上がれるよう心に誓っていた。
準優勝トロフィーを受け取った錦織は「優勝トロフィーを取れなくて、申し訳ないです。でも次は必ず。」と力強く自身の思いを錦織陣営に伝えていた。
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