S・グラーフ(ドイツ)に憧れて、父の教えの下、6歳でテニスを始めた
S・ミルザ(インド)は、昨年の年末ランキングでは206位だったが、男子顔負けのハードヒットを武器に、今シーズン一気にブレークし、30位台まで駆け上り、その才能を大いに開花させた。
インドではイギリス植民地のなごりでテニス自体は盛んではあったが、イスラム教・ヒンズー教の宗教色の強い土地柄、女子選手が世界で活躍することは少なかった。そのような状況下、ミルザは今シーズン数々のインド女子選手の歴史を塗り替えた。
- インド人女子選手としてミルザが初めて達成した記録
- 全豪オープンで四大大会3回戦進出
- 地元インドのハイデラバードでツアー優勝
- ランキングトップ50入り
- USオープンで四大大会4回戦進出(ベスト16入り)
2005年のスタートはホバートのティア4大会で、ここでは予選敗退に終わった。しかし、翌週の全豪オープンに主催者推薦枠で出場すると、3回戦まで進出。この結果、ランキングを132位と大幅にアップさせた。そして、2月に行われたハイデラバードの大会では、WTAツアー5大会目にして初優勝をおさめ、ランキングもトップ100を突破。3月のドバイでも、2回戦で第4シードの
S・クズネツォワ(ロシア)を破る金星をあげ、周囲の注目を集めるようになった。しかし、ここまでの連戦が響いて、右足首を痛め休養を強いられ、復帰明けの全仏オープンでも初戦で敗れてしまった。ウィンブルドンではデビュー戦を何とかものにし、2回戦に進んだ。
続く夏のUSオープンシリーズでは、シンシナティで今季3度目のベスト8入り、サンディエゴでもシード選手の
N・ペトロワ(ロシア)を破り、ついにランキングトップ50入りを決めた。USオープン直前のフォレストヒルズでは、自身2度目の決勝進出を果たし、準優勝で弾みを付けた。初出場となったUSオープンでは、4回戦で
M・シャラポワ(ロシア)に敗れるものの、ベスト16進出の大健闘を見せた。
10月のAIGオープンでも大活躍で、トップシードの
V・ズヴォナレーワ(ロシア)を下して、堂々のティア3大会初のベスト4進出。日本のテニスファンにもその名を知らしめた。この結果、ランキングも今季最高の31位を記録した。直後のバンコクでは、2回戦で腰痛が悪化し惜しくも棄権となり、それ以降は治療に専念するため休養というかたちでそのままシーズンを終了した。
シングルスでの成績が目立つミルザだが、ダブルスでも好成績を残している。昨年2月のハイデラバードでは
L・フーバー(南アフリカ)と組んで優勝。今季は3度のツアーベスト4入りを果たし、7月のシンシナティでY・フェダク(ウクライナ)と、9月のコルカタで
V・ルアノ=パスクアル(スペイン)と、10月の東京でS・ペア(イスラエル)とそれぞれ組んで上位進出している。
コート外では、イスラム教徒の団体から「競技中のスカートの裾、T-シャツの丈が短い」と批判を受け、それに猛然と抗議したりするなど、話題に欠かない。また、年末には
R・フェデラー(スイス)を指導していることでも知られる
T・ローシュ(オーストラリア)氏のトレーニングを受ける予定で、来年は更なる活躍が期待される。