5月24日から開幕する今季2度目のグランドスラムである全仏オープン(フランス/パリ、レッドクレー)で、この10年間王者として君臨して来た
R・ナダル(スペイン)だが、今年はそれが終わるのではないかと囁かれている。
これまでの同大会での成績は実に66勝1敗を誇るナダル。これは全てのグランドスラム史上例のない戦績であり、ここまで5連覇を達成しているが、今季はここまでのレッドクレーでの成績では過去に例がないほど悪い状態でいる事で全仏オープンでのナダル伝説に終止符が打たれるのではと憶測が飛んでいる。
ここまでの不調のために、ナダルはこれまでのような優勝候補筆頭とは言われていない。代わって現在世界ランク1位でここまで公式戦22連勝と絶好調の
N・ジョコビッチ(セルビア)が優勝候補として上げられており、ジョコビッチ自身も全仏オープンの優勝で生涯グランドスラムの達成を目指している。
「ナダルは今年、精神的にも肉体的にも弱さを見せている。それはこれまで見られなかった事。それはロッカールームにいる他の選手達へも灯りをともす事になると思う。」と語るのは、1990年代に2度の全仏オープン優勝経験のあるアメリカ・デビスカップ監督の
J・クーリア(アメリカ)氏で、電話でのインタビューで答えていた。
そして「今では何人かの選手が、彼(ナダル)を倒せるのではないかと思っているだろう。それはノヴァーク(ジョコビッチ)以外ではこれまで見られなかった事ではないか。」と加えていた。
ナダルは今季ここまでクレーコートでは17勝5敗と大きく勝ち越してはいるものの、過去の成績からすると決して良い成績とは言えない。
2006年から2010年の5年間では、実に126勝4敗の成績を誇っていた。1つのシーズンでクレーコートでナダルが4敗以上喫したのは2003年までさかのぼる。
これまでのように、重いトップスピンの効いたフォアハンドに安定感がなく、攻撃力も以前よりなくなっている。そしてクーリア氏はナダルの持ち味でもあるフットワークもこれまでの滑らかさを欠き、スライドしながらのフットワークも力強さに欠けていると見ている。
ナダルが持つ14度のグランドスラム優勝は、
R・フェデラー(スイス)の17度に次いで
P・サンプラス(アメリカ)と並び歴代2位となる最多優勝回数。その半数以上を全仏オープンで果たしているナダルの唯一の敗戦は2009年に
R・ソダーリン(スウェーデン)に喫したものだった。そんなナダルは、他にも問題を抱えている。
ナダルはこれまで、常に謙虚な姿勢をとって来ていた。しかし今年はコートでの緊張や自信の無さをこれまでにないくらい正直に語っている。
「多くの瞬間で多大な緊張を感じてプレーしているし、それが大切な場面なんだ。そんな場面にちょっと不安感を持ちながらプレーしているんだ。でも今後改善して行くよ。それが1週間先か半年先か1年先か分からないけど、必ずそうするさ。」とナダルは、3月の終わりに受けたインタビューで語っていた。
昨年ナダルは、クレーコートで3敗を喫しながら全仏オープンへ臨んでいた。そしてこれまでのような強さは見られず、ゆっくりと大会をスタートさせていた。
しかし15日間の大会が終わる時には、ナダルは再びトロフィーを掲げていたのだ。
「選手達は往々にして厳しい敗戦を引きずってしまうもの。ナダルはそんな敗戦やちょっとした問題を忘れ去り次の試合へ向けて前進する最高の選手だった。しかし今年は、少し引きずっているようだし、これまでの彼が持っていた物と同じようなまっすぐ前を向いている姿勢が見られない。時おり彼の目にはちょっとしたフラストレーションも見受けられ、そんな彼の姿はこれまで見たことがなかった。」とクーリア氏は述べていた。
全仏オープンでの7度の優勝を含む18度のグランドスラム優勝を持つ
C・エバート(アメリカ)は、「彼の顔を見て。“どうしてこれまでのようなウィナーが打てないんだ”って困惑しているように見える。」と自身の見解を語っていた。
今年のナダルはやはりこれまでとは違っている。ジョコビッチが優勝候補筆頭と見られている。ジョコビッチもこれまで全仏オープンには10回出場しており、その内6回はナダルに負けている。ここまで3回連続でナダルと対戦しているジョコビッチは、2度決勝戦で、そして1度準決勝で対戦していた。
もし今年の全仏オープンでジョコビッチが優勝を飾ったら、1992年のクーリア氏以来となる全豪オープンと全仏オープンを続けて制した選手となり、年間グランドスラムの達成も見えてくる。
ジョコビッチは全仏オープンの優勝を問われると「1試合1試合戦うだけ。そしてどこまで行けるかやってみるだけさ。」と慎重なコメントを出していた。
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