男子テニスの上位8選手によって争われる今季の最終戦、バークレイズATPワールドツアー・ファイナルズ(イギリス/ ロンドン、賞金総額650万ドル)は16日、第2シードの
R・フェデラー(スイス)と第1シードの
N・ジョコビッチ(セルビア)がシングルス決勝を行う予定だったが、フェデラーは腰の故障を理由に試合開始前に棄権を申し入れたため、準優勝とした。
「残念ながら試合をするのに十分な状態ではありません。」と33歳のフェデラーは会場へ登場し語り始めた。
「昨日の夜から今日にかけて、出来る事は全てやりました。痛み止めを飲んだり、治療を受けたり、休めたりなど、それから直前までウォーミングアップもしました。しかし、ノヴァーク(ジョコビッチ)とこの舞台のレベルで戦う事が出来ないのです。それをするのは、この年齢の自分にはリスクが高過ぎます。皆さんのご理解を願います。」と、自身の思いを伝えていた。
その怪我は前日に行われた同胞の
S・ワウリンカ(スイス)との準決勝で起きた。3時間近くに及んだその試合は、ワウリンカが4度のマッチポイントを握るなどフェデラーを崖っぷちまで追い込んでいた。しかしフェデラーはそれを覆し、フルセットのタイブレークの末に勝利を飾っていた。
この日詰め掛けた多くの観客は、登場したフェデラーの紳士的な態度に対し好意的な拍手を送っていた。
今週の金曜日には男子国別対抗戦のデビスカップの決勝戦を控えているフェデラー。ワウリンカと共に祖国スイスを代表して戦うその決勝戦は、敵地フランスで行われる。対戦相手のフランスは、北部リールの街を会場に選択し、球足が遅いクレーコートを選び早いコートを好むフェデラーが少しでもプレーに支障をきたす事を考慮しての選択だった。
フェデラーはこれまでのテニス人生で、試合を戦わずして棄権したのはわずか2回。2008年10月に行われたパリのマスターズ大会準々決勝、
J・ブレイク(アメリカ)戦と2012年1月に行われたカタール・エクソンモービル・オープン準決勝、
JW・ツォンガ(フランス)戦だけで、そのいずれも今回と同じく腰の怪我が理由だった。今回はそれに次ぐ3度目となった。
フェデラーは昨年も腰の怪我に悩まされ不本意なシーズンを送らざるを得なかった。しかしそれを克服した今季は、ウィンブルドンの決勝ではジョコビッチに敗れるも準優勝を飾り、その他5大会で優勝し再び世界ランク1位の座を争うまでに復活していた。
今大会では過去6回の優勝を誇るフェデラーは、全豪オープンと全米オープンでもベスト4入りを果たし、先月に行われた上海ロレックス・マスターズでは自身23回目となるマスターズ優勝も果たしていた。
世界ランク1位の座はジョコビッチに譲ったものの、今大会の勝ち上がりもわずか1セットしか落とさず好調なプレーを続けていた。
「過去の怪我の再発は度々起こること。それほど驚く事ではない。ここまでの一年間では、ほとんど良い状態でいられたと言える。それは驚きではないものの、とても良い事。そんな中でこの腰の状態が一日中続くのはとても辛いことでもある。本当に居心地の悪いものなんだ。でもこれもまたすぐに良くなってくれると、今は前向きに願っている。」と語るフェデラー。
この日はフェデラーの棄権により、決勝戦が行われなかった代わりに、
A・マレー(英国)が駆け付けジョコビッチとエキシビョン・マッチを行った。その試合の後には、マレーが
J・マッケンロー(アメリカ)氏と組み、イギリス人選手の先輩である
T・ヘンマン(英国)氏と
P・キャッシュ(オーストラリア)氏のペアとのダブルスのエキシビションも行った。
決勝戦が選手の棄権のために行われなかったのは、今大会45年の歴史上初めての事だった。
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