男子テニスで8度のグランドスラム優勝を誇る元世界ランク1位の
I・レンドル(アメリカ)が、再びコーチとしてテニス界に戻ってくることが明らかになった。全米テニス協会の選手育成プログラムの一環としてジュニアの指導を担う。
かつて
A・マレー(英国)のコーチとして、マレーをグランドスラム優勝へ導いたレンドルは、15歳から16歳の6名ほどのアメリカ人男子ジュニアの指導を全米テニス協会から任されコーチの職に復帰する。
現在55歳のレンドルは先月下旬に行われた強化合宿を含め、この一年間で50日間を全米テニス協会の指導者として費やすことを了承した。
「若い選手達と共に過ごすことを楽しんでいる。彼らを指導し導くことを主にしている。彼らが一生懸命何かを学ぼうとしている姿勢を見ていることに楽しみを感じている。色々な質問をしてくるし、色んなことにトライしている。必死に上達しようとしているんだ。」とレンドルは、電話でのインタビューに答えていた。
全米テニス協会は10日、レンドルを含む3人の元プロテニス選手をアメリカのジュニアの指導者として発表。レンドル、
M・フィッシュ(アメリカ)、
J・クレイバス(アメリカ)の3人は全米テニス協会に所属するコーチとなる。
元世界ランク7位で今季引退したばかりのフィッシュと、全米大学テニス選手権を制しプロとしてもトップ50入りを果たしたクレイバスは、11月の終わりから12月にかけて行われる来シーズンへ向けての強化合宿に参加する。フィッシュはカリフォルニアで6・7人を、クレイバスはフロリダで10名ほどの女子選手を指導する。
今年の4月から
P・マッケンロー(アメリカ)に代わって選手育成プログラムの部長を任されたM・ブラックマンは「その合宿は、かつて最高のレベルでプレーしていた選手達と関わり合い、技術を学ぶ機会を若い選手達に与えてくれる。同時に、その選手達が目標としていることのレベルがどれくらいなのかを実感させてもくれるだろう。」と期待を寄せている。
19度グランドスラム決勝の舞台に立ったレンドルはATPツアーで通算94勝を誇り、2001年にテニス殿堂入りを果たしている。コーチとしても、マレーを2012年の全米オープン優勝と2013年のウィンブルドン優勝へ導いた実績がある。
また、トップ選手のコーチに戻る可能性を問われたレンドルは「そうなるかは分からないし、いつ、どんなレベルの選手を指導するか分からない。納得のいくような何かが訪れると、いつだって喜んで考慮する準備は出来ている。」と受け入れる可能性を示唆していた。
しかし、今のところはアメリカの10代の選手達と時間を費やすつもりでいるレンドル。その選手達はかつてマレーのチームの一員だったフィットネス・トレーナーのJ・グリーンからもトレーニングの指導を受ける。
「将来どんなテニスをしたいか、どんなプレースタイルに成りたいか、憧れの選手は誰かを尋ねて、そして弱点や改善点を見いだすんだ。それからその弱点を改善するプログラムをつくり出す。」
「そうして彼等を道へ導く手助けをしていることを本当に楽しんでいるんだ。もちろん、彼等の意見が全く納得出来ない場合を除いてだけどね。」とレンドルは現在の気持ちを語っていた。
そして含み笑いを浮かべながら「2メートルを超えるような選手がラファ(ナダル)のような選手になりたいと言うなら、更なる話し合いをもつだろう。」と加えていた。
現在アメリカ男子テニス界は低迷期を迎えている。2003年の全米オープンで
A・ロディック(アメリカ)が優勝してから、グランドスラムのチャンピオンが出ていないばかりか、2011年以降、グランドスラムの準々決勝に辿り着いた選手はいない。
また女子でも、
S・ウィリアムズ(アメリカ)と
V・ウィリアムズ(アメリカ)の姉妹を除くと、2005年以降にグランドスラムの決勝へ進出した選手はいない。
「何が悪いのか、自分に言う資格はない。それでもブラックマンと多くの話し合いをしてきた。どうやって若手と向き合ったら良いかをね。」とレンドルは苦悩する気持ちも明かしていた。
今週発表の最新の世界ランクでは、トップ20にいるアメリカ人男子は11位の
J・イズナー(アメリカ)のみ。それ以外ではトップ50に4選手、トップ100に7選手となっている。
女子では、世界ランク1位にセリーナ、7位にヴィーナス、それ以外はトップ50に7選手、トップ100に13選手いる。
ブラックマンは「成功をおさめている他の国のテニス協会は、スペイン、フランス、オーストラリアなどで、そのやり方はプロとして経験のあるコーチと、かつて成功を収めて才能を兼ね備えた元選手とを融合した指導をしている。」と持論を述べていた。
「最後に成功を収めたアメリカ人チャンピオン世代とは、そんな関係に少し隔たりがあった。今やろうとしていることは、かつてのチャンピオン達を招き入れ再びコーチとして働いてもらうために、よりシステム化しより戦略的になろうとしている。」とブラックマンは加えていた。
(STATS - AP)
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