今季2度目のグランドスラムである全仏オープン(フランス/パリ、レッドクレー)に第2シードで出場する
R・フェデラー(スイス)は、その華麗なフォアハンドとバックハンドでこれまでも赤土のコートで優雅な舞を見せていたが、33歳と言う年齢からキャリア終盤を迎えているのは避けられずにいる。
今年の8月で34歳になるフェデラー。すでにグランドスラムの優勝回数では歴代1位となる17度を2012年のウィンブルドンでの優勝で記録したものの、その後はグランドスラムでの成績も下降線をたどっている。
2004年から2009年のフェデラー黄金時代と言われる期間では、実に24度のグランドスラムで20度決勝進出を果たし、うち14度で優勝を飾っていた。
しかし2012年のウィンブルドン決勝戦で
A・マレー(英国)を下してからは、10度のグランドスラムに出場するも昨年のウィンブルドンで
N・ジョコビッチ(セルビア)と演じた5セットに及ぶ死闘で敗退した戦いしか決勝の舞台に立っていない。
どのグランドスラムでも優勝候補に上がっていたフェデラーだが、その中でも全仏オープンが一番その可能性が低いと言われていた。赤土の遅いサーフェスでは、他の早いサーフェスよりフェデラーの特徴を鈍らせてしまう。
唯一フェデラーが一度しか優勝経験がない全仏オープンでは、テニス史上これまでにないその優れた戦術と技術を持ちながらもそれが十分活かし切れなかった。
もちろん幸運も時には必要だった。フェデラーが全仏オープンの5度の決勝戦で唯一優勝した2009年は、その決勝戦で戦った
R・ソダーリン(スウェーデン)が4回戦でクレーキングの称号を持ち、それまでもフェデラーの優勝を阻んだ
R・ナダル(スペイン)を下していた。
今年の全仏オープンもまた女神がフェデラーに微笑んでいると言われている。金曜日に発表になった男子シングルスのドローでは、フェデラーが決勝進出へ向けてより有利なものかも知れないと見られている。
第6シードとなったナダルと第3シードのマレーはいずれも第1シードのジョコビッチがいるトップハーフにいる。つまりそれは、2013年と2014年のグランドスラムの準決勝や決勝でもフェデラーを下して来たジョコビッチ、ナダル、そして今季クレーコートで好調なマレーと決勝まで戦う事がないと言うこと。そしてフェデラーが順当に勝ち上がれば、6月7日に予定している男子シングルス決勝戦でその対戦が実現する。
「上位進出するチャンスは十分にある。もちろんどこまで行けるかは、自分自身のプレーのレベルによるもの。」とフェデラー自身もチャンスを認識している。
自身が持つグランドスラム最多連続出場記録を更新するフェデラーはこれが62大会目のグランドスラムとなるが、その1回戦はラッキールーザーの
A・ファリャ(コロンビア)と対戦する。
フェデラーは特に4回戦までは比較的楽なドローだと考えられている。シード勢が順当に勝ち上がればその4回戦で第13シードの
G・モンフィス(フランス)と対戦する。そして準々決勝ではデビスカップのチームメイトでもある第8シードの
S・ワウリンカ(スイス)と顔を合わせる。
そして準決勝では第5シードの
錦織圭(日本)か第4シードの
T・ベルディヒ(チェコ共和国)のいずれかとの対戦となる。
もちろんそれはあくまでもシード勢が順当に勝ち上がった場合である。2013年のウィンブルドンのように、それまでグランドスラム36大会連続でのベスト8以上進出の記録を持っていたフェデラーはその更新もほぼ確実かと思われていながらも、結果的にはまさかの2回戦敗退で幕を閉じてしまった。
そして昨年の全仏オープンでもフェデラーは、4回戦で現在世界ランク25位の
E・ガルビス(ラトビア)の前に敗退しており、今年もガルビスはフェデラーと同じドローにいる。
「優勝したいと願っている選手はたくさんいるし、しかも多くの選手がその実力がある。そして試合当日に危険な相手になる選手もいるだろう。例え準決勝であれ決勝戦であれ、負けてしまえばその大会で敗戦を喫するのは同じこと。だから自分の目標は負けないと言うことなんだ。」とフェデラーも慎重に目標を掲げていた。
この10年間で最悪と言われるクレーシーズンを送ったナダル。全仏オープンで9度の優勝を誇る彼は今年は過去最低のシード順としてのエントリーとなった。グランドスラムでは14度の優勝を持つナダルは、今季ここまでのクレーコート大会で実に5敗を喫している。クレーコートではこれまで他を圧倒していたナダルは、全仏オープンでの成績も66勝1敗とグランドスラム史上でも圧倒した成績を叩き出している。
今季ここまで好調なプレーを続けているフェデラーは、ここまで25勝5敗としている。クレーシーズンでは、今年から開催されたイスタンブールでのATP250大会で通算85度目となる優勝を飾り、続くローマでのマスターズ1000大会では決勝戦でジョコビッチに敗れたものの準優勝を飾っていた。数年前に痛めて苦しめられた腰の痛みも今はすっかり回復している。
「これまでの12ヶ月は最高のプレーが出来ていると感じている。」とフェデラー。「このコートの状態に対応しなければならないのは当然の事ながら、それでどこまで勝ち上がれるかやってみなければ分からない。」
ローマ大会後は、祖国スイスへ戻り家族との時間を楽しんだフェデラー。そしてそれからコーチであり、2013年の不振から本来のフェデラーのプレーを取り戻させてくれた元世界ランク1位の
S・エドバーグ(スウェーデン)氏と合流して練習を再開している。
「2013年は多大なエネルギーを費やされた。今は我々は良い流れを持っている。2014年と2015年はここまで良い形で過ごせている。かなり良い感触を抱いている。しかしだからと言ってそれが常に好成績に繋がるとも言えない。」とフェデラーは気持ちを引き締めていた。
どのような結末を迎えるかは、この2週間で結果が明らかになる。
>>全仏オープン男子ドロー表<<
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