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錦織コーチ チャンの伝説試合

マイケル・チャン/錦織圭
写真は2011年ドリームテニス時の(左から)マイケル・チャンと錦織圭
画像提供: tennis365.net
24日から開幕するテニスのグランドスラムである全仏オープン(フランス/パリ、レッドクレー)の男子ドローが22日に発表され、四大大会初優勝を狙う第5シードの錦織圭(日本)は、1回戦でP・H・マチュー(フランス)と対戦する事が決まった。これまで錦織が大躍進した陰にはM・チャン(アメリカ)というコーチの存在がある。

1989年の全仏オープン、世界が驚いた。17歳3カ月で全仏オープン優勝、グランドスラム初のタイトルを獲得した選手がいた。それが、現在錦織のコーチを務めるチャン。

チャンは1989年の全仏オープンで、今も語り継がれる伝説の1戦に勝利した。その戦いがI・レンドル(アメリカ)との4回戦である。

175センチの小柄なチャンは俊敏なフットワークと相手の逆をつくストロークでレンドルに対抗した。しかし、全仏オープンでの戦いを得意とするレンドルにおされ、2セットダウンの状況に。

しかし、第3セットから流れが徐々にチャンへ傾き始める。

現在の錦織のように、チャンは後方で打つのではなく、ベースライン上で打つ早い展開のテニスでレンドルを後方に下げた。さらにアグレッシブなネットプレーなどで調子を上げて第3・4セットをとり、チャンのプレーに驚きを隠せない観客からどよめきが起きる。

ファイナルセット、いきなりレンドルのサービスゲームをブレークして先にリードしたのはチャンだったが、足の痙攣に襲われて棒立ち状態でストロークを打つ事に。

そして第8ゲームの15-30、自らのサービスゲームでチャンは伝説のサービスを放つ。

通常、テニスのサービスは上から打つため、リターンする選手は後方へ下がる。だが、チャンはこの場面で下から打つアンダーサービスを放った。これにはレンドルだけでなく、会場全体も驚く。

チャンはリターン後にネットへ出るレンドルの足元へボールを運んでミスを誘い、ポイントをとった。この意表をつくプレーで試合の流れを再び掴んだチャンは、万全の状態ではない中で鮮やかなバックハンドのダウンザライン、レンドルのミスを誘う気迫のプレーで、遂にマッチポイントを握る。

ここでもチャンは驚きの行動をとる。ファーストサービスをフォルトしたレンドルに対し、サービスラインギリギリまで詰めて、レンドルを挑発するかのようなリターン位置に立つ。

これに苛立ったレンドルだったが、「絶対に勝つ」という執念むき出しのチャンを誰も止める事が出来なかった。

そして、この揺さ振りに根負けしたレンドルは、最後ダブルフォルトを犯し、4時間37分の死闘に幕が降りた。まさに、奇跡の大逆転勝利だった。

その後、決勝でS・エドバーグ(スウェーデン)にフルセットで勝利したチャンは、グランドスラム初のタイトル獲得。これは、プロ転向2年目の優勝だった。

チャンの優勝は男子シングルスのグランドスラム最年少優勝で、この記録は未だ破られていない。

また、チャンが全仏オープンで優勝を飾った1989年は、錦織が産まれた年でもある。これも何かの運命なのかもしれない。

チャンがコーチについてから、錦織のテニスは劇的に進化した。

世界ランクトップ4入り、グランドスラム初の決勝進出、ツアーファイナル出場。日本人なら誰でも「錦織」という名前が記憶されるほど、チャンは錦織と共に結果を残してきた。

錦織がグランドスラムのタイトルを獲得するには、今年の全仏オープンが絶好のチャンスである事は間違いない。

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