男子テニスで
錦織圭(日本)は2014年シーズンをアジア人男子自己最高位の5位で終え、54勝14敗、ツアー4勝、全米オープンでグランドスラム初の準優勝、ツアー・ファイナルズでは準決勝進出と飛躍の年となった。
錦織は2014年8月、右足裏に溜まった膿疱を取り除く手術を行い、出場義務のあるロジャーズ・カップとW&Sマスターズは欠場し、19日に抜糸を行い、トレーニングを再開するも25日から開幕する全米オープンへの出場は直前になるまでわからなかった。
出場しても今年の全仏オープンのような結果になるかもしれない中、当時世界ランク11位の錦織は大会第10シードとして出場する。
1回戦は主催者推薦で出場を決めた当時世界ランク176位の
W・オディスニク(アメリカ)と対戦。
対戦相手に恵まれた錦織は1回戦を快勝すると、2回戦で
P・アンドゥハル(スペイン)と対戦する。
アンドゥハルとは昨年の3度目の対戦で1度目の対戦は勝利するも2度目、昨年のムチュア・マドリッド・オープンでは
R・フェデラー(スイス)と対戦し、金星を上げた直後の準々決勝で対戦しストレートで敗れている。
しかし今回の2回戦では錦織が2セット先取した段階で、アンドゥハルは右手首の痛みから棄権を申し入れ、体力を奪われること無く3回戦に進む。
今年の全米オープンは猛暑のせいもあり例年に無く棄権者が続出する大会となり、1回戦で
伊藤竜馬(日本)と対戦した地元の
S・ジョンソン(アメリカ)や
J・ソック(アメリカ)、
B・トミック(オーストラリア)、
M・ロドラ(フランス)、
I・ドディグ(クロアチア)、
M・バグダティス(キプロス)らが棄権していた。
2試合を終え、徐々に調子を上げていった錦織は3回戦で第23シードの
L・マイェール(アルゼンチン)と対戦する。
マイェールは今年7月に行われたベット・アット・ホーム・オープンでツアー初優勝を飾り、今年90位台でスタートしたランキングを20位台にまで上げてきている成長株。
昨年のウィンブルドン2回戦で錦織がストレートで下して以来2度目の対戦となる両者、試合は序盤から錦織がチャンスを作り、完璧に近い試合で初出場の2008年以来となる4回戦に進出した。
勝利後のオンコートインタビューでは「最後まで集中出来たので良かったです。体力的に温存できました。」と、いい状態で勝ち進んでいる事が読み取れた。
大会2週目に入り、錦織は4回戦で第5シードの宿敵
M・ラオニチ(カナダ)と通算4度目、今年3度目の対戦。
前回対戦したウィンブルドン4回戦ではビッグサーバーのラオニチに軍配が上がったが、ハードコートで初対戦した2012年の楽天ジャパン・オープン決勝では錦織がフルセットの末に勝利している。
錦織にとって初のナイトセッションは4-6, 7-6 (7-4), 6-7 (6-8), 7-5, 6-4、4時間19分、試合終了が現地時間2日午前2時26分という大会史上最も遅く終わった試合という記録と共に、日本男子では
清水善造(日本)以来92年ぶりの大会ベスト8入り、自身では2012年全豪オープン以来2度目のグランドスラム準々決勝進出を決めた。
試合後に行われたコート上のインタビューでは「最後まで気が抜けない試合だったので、セットカウント1-2ダウンから挽回できて良かったです。まだ実感がないんですけど、次の試合に向けて明日はしっかりリカバリーしたいです。」
初めてのナイトセッションについて、「最初はラケットが振れず、何をしても駄目な状態でした。そこから(調子が)戻ってこれたので、信じられないです」とコメントしていた。
ラオニチ戦から2日後に行われた準決勝では、今年の全豪覇者で第3シードの
S・ワウリンカ(スイス)と対戦。
両者は2012年に2度対戦しておりこれまで錦織は1セットも取ることが出来ず敗れていたが、今回は4時間14分、3-6, 7-5, 7-6 (9-7), 6-7 (5-7), 6-4の2試合連続フルセットマッチを制し、同大会1918年に記録した
熊谷一弥(日本)以来となる日本男子96年ぶりの準決勝進出という快挙を達成した。
ワウリンカ戦から2日後の6日、準決勝では3年ぶり優勝を狙う優勝候補の本命、第1シードの
N・ジョコビッチ(セルビア)と対戦した。
ソニー・オープン準決勝、錦織の棄権を除き、3度目の対戦となる両者は、6-4, 1-6, 7-6 (7-4), 6-3で錦織が下し、2011年に行われたスイス・インドア準決勝に次ぐ金星を上げ初のグランドスラム決勝進出を果たした。
ストロークで圧倒され、終盤には消極的なプレーを強いられたジョコビッチは試合後の会見で「彼(錦織)は隙のないオールラウンダーだ。彼は新たなレベルに到達した。称賛に値するね。」と錦織を称えた。
錦織と決勝で対戦するのはR・フェデラーと多くの人が思っていたが、対戦相手の
M・チリッチ(クロアチア)だった。
チリッチはアメリカ・ハードコートシーズンを好調に過ごしたフェデラーに対し、絶好調のサービスでフェデラーを一蹴。万全の状態で決勝に進出した。
日本中が見守る中、日本時間9日、午前6時に行われた決勝では惜しくもチリッチに3-6, 3-6, 3-6のストレートで敗れ、日本人初のグランドスラム優勝の歴史的快挙を逃した。
序盤は錦織の動きが硬く、徐々に調子を戻すがそれ以上にチリッチのサービスとストロークが冴え、反撃のチャンスを掴むことが出来なかった。
表彰の際のスピーチで錦織は「全力を尽くしましたが、自分のテニスが出来ませんでした。そして、マリン(チリッチ)に祝福を述べたいと思います。初優勝おめでとうございます。厳しい敗戦となりましたが、初めて決勝進む事が出来て、自分のチームに感謝します。ここ2週間、本当に頑張ってくれました。こうなってしまって残念です。トロフィーは今日獲得出来なくて申し訳なかったのですが、次があると思います。楽しい2週間でした。スポンサー各社に感謝いたします。このトーナメントを素晴らしいものにしていただき、また来年も来たいと思います。ありがとうございました。」と悔しい表情が見える中、チリッチを称えた。
また、後のブログで決勝について「初めての決勝の舞台で緊張していたのと、体力的に使い果たしていたので試合に100%集中できていませんでした。チリッチのプレーが完璧だったのも逆転できなかった理由ですが、それよりも自分のせいですね。悔しいです。」
「決勝という大舞台で自分の力が発揮できなかったのが一番悔しいです。決勝の前の日は気持ちが高ぶりすぎて胸が苦しくなったり、緊張するっていうのも予測してたのでなるべく頭でイメージしたりしてました。でも足りなかったですね。昔から夢見ていたグランドスラムの決勝で平常心で戦うのは難しかった。。」と綴っている。
準優勝で終えた錦織だが全豪オープンでの
R・ナダル(スペイン)との善戦、クレーでの戦い方の進化、ウィンブルドン初のベスト16と、錦織の進化が開花した瞬間となり、11月のツアー・ファイナルズまで日本を熱狂させた。
《錦織 全米オープン帰国会見①》《錦織 全米オープン帰国会見②》《錦織 全米オープン帰国会見③》《錦織 全米オープン帰国会見④》【錦織圭 2014年全米オープン 戦歴】
・1戦目 勝利 W・オディスニク 6-2, 6-4, 6-2
・2回戦 勝利 P・アンドゥハル 6-4, 6-1 途中棄権
・3回戦 勝利 L・マイェール 6-4, 6-2, 6-3
・4回戦 勝利 M・ラオニチ 4-6, 7-6 (7-4), 6-7 (6-8), 7-5, 6-4
・準々決勝 勝利 S・ワウリンカ 3-6, 7-5, 7-6 (9-7), 6-7 (5-7), 6-4
・準決勝 勝利 N・ジョコビッチ 6-4, 1-6, 7-6 (7-4), 6-3
・決勝 敗退 M・チリッチ 3-6, 3-6, 3-6
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