錦織圭(日本)の活躍を初期から追い続け、1973年から国内外のテニスの報道に携わるジャーナリスト・塚越亘氏によるATPワールドツアー・ファイナルズの現地レポート。
誰がこんな快挙を予想しただろうか?
世界のトップ8に名を連ねATPファイナルに出場を決めた事も凄いが、その中で勝ちぬけて4強に残った事はさらに凄い。
初日の
A・マレー(英国)戦ではこの1年間の錦織圭の成長をみせつけた。
ウィンブルドンそしてオリンピック金メダリスト、今まで3度対戦するも1度も勝った事がない対戦相手、勝った事がないだけでなく、セットすら取れなかった相手を破った。
「ケイのプレーに自信を感じる。」と試合後のマレー。
今では錦織のランキングは世界5位、6位のマレーよりも強いと言う事を証明した。
第2戦目、
R・フェデラー(スイス)戦、錦織の強さを知っているフェデラーはここ一番で最初からフルスロットでやってきた。
立ち上がり、第3ゲームでブレーク・チャンスを錦織が逃すとその後チャンスらしいチャンスはなかった。
フェデラーは25回グランドスラム大会決勝に進出、そのうち17回優勝している。
ツアーも82回優勝、テニス史に永遠に生きるプレーヤーだ。
対する錦織はグランドスラム大会では今年のUSオープンで準優勝しているが、そのほかは全豪の8強が最高成績。
錦織は自分のペースさえ掴めずに完敗した。
負けてもまだまだ準決勝進出に可能性が残っているのがラウンドロビンのおもしろいところ。
錦織のグループBは4人共に準決勝進出の可能性があった。
毎日プレスルームでは誰がこのグループを抜けるのか色々な試算をする。
私はこんな計算をしていると頭がこんがり返ってくるので計算が早い人の話をちゃっかりと聞くのだが、やっと理解したと思ったら、ラオニッチが試合の1時間半前に棄権を発表、対戦相手はスタンバイしている
D・フェレール(スペイン)となった。
騒がしくなる日本の報道陣、特に時差の関係で朝放送をするTV局のスタッフは大慌てだ。
グランドスラム大会では放映権を持っているTV局しか取材できない。取材申請してもパスは発行されない。
しかしATPツアーでは報道を歓迎し、試合映像は流せなくても回りの独自取材はできる。
錦織圭人気で日本の情報番組のスタッフらしい人達がいっぱい来ている。
誰が準決勝に勝ち残れるか7通りの可能性がある事がわかった。
私は読んでいたら頭が痛くなってしまったが。
勝った錦織に、どちらがやりやすかったか?いつそれを知ったか?などとこの事に関して試合後は質問が飛ぶ。
「二人共にタフなプレーヤー。両方とはやりたくない。勝てて嬉しい。」
二人と同時には試合ができない。誰かと対戦しなくてはいけないと言うニュアンスではぐらかしていた。
会見を行う錦織圭
しかし急にフェレールと対戦になった錦織は大変だった事だろう。
この2日間、ラオニッチ戦を頭の中に入れ練習しイメージしてきた事だろうから。
棄権したラオニチ
「タフな3セットだった。」と錦織は言う。
ビッグサーバーとストローカー、全然タイプの違うプレーヤーとの対戦になったのだから。
第1セットは準備万端のフェレールのプレーに押された。
しかし2セット目からは錦織が危険を冒して先に攻める。
「ああしないと(フェレールには)勝てない。つないでいると相手の好きな展開になってしまうから。」プロテニスプレーヤーとしてできる限りのことはやった。
フェレールを下した錦織圭
2014年11月13日 現地時間20時38分、マレーがフェデラーに第1セットを0-6で落とした事により錦織はグループB、2位通過を決めた。
錦織圭は日本のテニスに残る新たな1ページをまたまた更新し続ける。
塚越亘…ジャーナリスト。1973年から雑誌などに寄稿。90年代には「TENNISJapan」というFAX新聞を発行し、試合結果速報や
松岡修造(日本)、
クルム伊達公子(日本)らの直筆コメントなどを掲載した新聞を発行。テニスの報道における草分け的存在。
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