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男子テニス界で数々の功績を残し続けるR・フェデラー(スイス)。今年も活躍したフェデラーに焦点を当て、本日は2012フェデラーシリーズ その2をお届けします。
ウィンブルドンで2010年はT・ベルディフ(チェコ共和国)、2011年はJW・ツォンガ(フランス)に敗れ、2年連続でベスト8に終わっていたフェデラー。過去6度の優勝を飾っていたフェデラーは、7度目の優勝を目指す。
1回戦はA・ラモス(スペイン)、2回戦はF・フォニュイーニ(イタリア)に快勝し、順当に3回戦進出を決める。
だが、3回戦でJ・ベネトー(フランス)と対戦し、フェデラーは絶体絶命に陥ることになる。この試合、ベネトーの思い切りの良いプレーが型にはまり、2セットダウンの状況に追い込まれるフェデラー。前日には第2シードのR・ナダル(スペイン)がL・ロソル(チェコ共和国)にフルセット負けを喫していたセンターコート。誰もが「フェデラー、まさかの3回戦敗退」と、頭によぎった。
第3セットは取り返したものの、第4セットではあと2ポイントで敗退というところまで6度も追い込まれる。だが、芝のコートを知り尽くしたフェデラーはなんとかしのぎ、第4セットはタイブレークへ突入する。
タイブレークではベネトーの気迫あるプレーに押されるも、フェデラーはドライブボレーなどを決め第4セットを奪い、試合の行方はファイナルセットへ。このセットでフェデラーは第4ゲームでリターンエースを決めブレークに成功し、ゲームカウント4-1とリードする。
これで勢いに乗ったフェデラーは、ベネトーに4-6, 6-7 (3-7), 6-2, 7-6(8-6), 6-1の大逆転で4回戦進出を決めた。試合後、フェデラーは「2セットダウンになったら難しいけど、落ち着くことだね。明らかに残された命は少ないからね。タフにプレーするようにして、ポイントごとに集中するんだ。つまらなく聞こえるけど、それが正しいことなんだよ。」
敗れたベネトーは「彼の精神力は岩のようだ。彼は2セットダウンだったのに、その素振りを見せなかった。少しでもプレーのレベルを落としたら、彼がチャンスを掴んでしまう。」と、コメント。グランドスラムでフェデラーが2セットダウンから逆転勝ちするのは、この試合で通算8度目のことだった。今年の全仏オープンでもJ・M・デル=ポトロ(アルゼンチン)に3-6, 6-7(4-7), 6-2, 6-0, 6-3で勝利していた。
ベスト16に進出したフェデラーは4回戦でX・マリス(ベルギー)、準々決勝ではM・ヨージニ(ロシア)にそれぞれ勝利し、3年ぶりとなる準決勝の舞台へ駒を進める。準決勝で待っていたのは、ディフェンディング・チャンピオンであり、世界王者のN・ジョコビッチ(セルビア)だった。
しかし、この準決勝でのフェデラーは明らかにいつもと違った。
試合が始まるとエンジン全開のプレーで挑むフェデラーと2011年から圧倒的な強さを発揮してきたジョコビッチは激しいラリー戦を繰り広げ、互いに1セットずつ奪い合い、第3セットへ。
このセット、両者サービスキープを続け、ジョコビッチのサービスゲームである第10ゲームを迎える。そして、15-30とフェデラーがリードし、次のポイントでジョコビッチがスマッシュを決める!かと思われたが、ジョコビッチはこのビッグポイントでミスを犯し、フェデラーがセットポイントを握る。
1本目はしのがれるも、2本目は何本も続くラリーからネットへ出たフェデラーが最後スマッシュを決め、第3セットを奪う。この瞬間、フェデラーは右手の拳を強く握り、雄叫びをあげた。これで勢いを失ったジョコビッチに対し、フェデラーはそれを見逃さず、第4セットの第2ゲームでブレークに成功し、2時間19分の試合に終止符を打った。
まさに、フェデラーに「神が降りた」試合だった。
フェデラーの決勝の相手は、英国男子勢として74年ぶりとなる決勝進出を決めたA・マレー(英国)だった。もし、フェデラーが優勝すると、P・サンプラス(アメリカ)に並ぶウィンブルドン7勝目と、世界ランク1位復帰も果たすこととなる。それに対し、マレーが優勝するとフレッド・ペリー以来となる76年ぶりの地元勢優勝がかかっていたビッグマッチだった。
決勝前、フェデラーは「プレッシャーもあるけど、楽しみにしている。そのために頑張ってきた。」と、コメントしていた。
迎えた決勝戦当日、天候は晴れていたため屋根が開いた状態で試合が行われた。
しかし、マレーの応援が多い中の試合で、プレッシャーを感じたフェデラーは第1セットの第2ゲームでドライブボレーをミスしてしまい、マレーにブレークされてしまう。これでマレーに勢いを乗せてしまい、第1セットを落としてしまう。
第2セットは互いに譲らない展開が続くも、第12ゲームでフェデラーが最後バックハンドのドロップボレーを決めこのセットを奪い、第3セットへ。
その後、第3セットの第3ゲームで雨が降り出し、試合は一時中断。以降は屋根が閉まった状態で試合が行われた。試合再開後、フェデラーはマレーに隙を与えないテニスを展開、最後はマレーのフォアハンドがアウトし、4-6, 7-5, 6-3, 6-4で勝利。
この勝利により、フェデラーは大会史上最多記録に並ぶ7度目の優勝、さらに自らの持つグランドスラム最多勝記録を17に更新した。同時に2010年の全豪オープン以来となるグランドスラム優勝となったフェデラーは、およそ2年ぶりに世界ランク1位に返り咲くことも確定させた。
今大会では2003年から5連覇を達成するなど、抜群の相性の良さを誇るフェデラーは「他のどこよりも気分良くプレーできる。理由はわからないけど、とても特別な場所。今回はトロフィーを持っている自分を想像しようとはしなかった。この場所で自分が何を成し遂げたのか理解するのに、少し時間がかかるでしょう。」と、語った。
一方、敗れたマレーはグランドスラム通算4度目の決勝ながら、またしてもタイトルに手が届かなった。試合後のスピーチでは涙ながらに「もう少しだったんだけどね。これからも(優勝に向けて)トライするけど、簡単なことではない。ウィンブルドンでプレーするプレッシャーについて、色々と言われるけど、試合を見てくれる皆さんが力をくれた。信じられないサポートだった。ありがとう。」と、コメント。マレーの涙に観客はスタンディングオベーション、さらに万雷の拍手で応えた。
2003年にグランドスラム初優勝したウィンブルドンの地で7度目の優勝を飾ったフェデラー。次なるロンドンオリンピックに向け、金メダル獲得を目標に動き出す。
【続きは本日12月5日(水)22時頃】
■過去のコラムはコチラ■
《「フェデラー、王者奪還なるか◇第3弾 2012フェデラーシリーズ その1」はこちら》
《「貴公子フェレーロ、やっと手にしたビッグタイトル◇第2弾 2012引退シリーズ その1」はこちら》
《「完璧主義者のフェレーロ、最後は涙のフィナーレ◇第2弾 2012引退シリーズ その2」はこちら》
《「ロディック、ギルバートと手を組み栄冠◇第1弾 2012引退シリーズ その1」はこちら》
《「ロディックに「フェデラー」という壁が立ちはだかる◇第1弾 2012引退シリーズ その2」はこちら》
《「フェデラー最大の被害者となったロディック「自分がどう感じるかが重要」◇第1弾 2012引退シリーズ その3」はこちら》
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