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オムニバス編

Vol.12　ここが違う！　苦手な人と得意な人　下巻(ネットプレイ)

スマッシュ

本特集の最後のテーマはスマッシュ。スマッシュに関しては、スピードがあるかどうかは問題ではなく、ミスが多いか少ないか、それが得意と苦手の分かれ目になる。そのため、ここではミスや当たりそこねを減らすということに的を絞って解説していこう。

上にあるボールは小さく見える

人間は、上方向と横方向では距離感覚にかなりの違いがある。月は上空にあるときよりも、水平線の近くにあるときのほうが大きく見えるというのは、多くの人が経験があるだろうが、実際に大きさが変わっている（地球との距離が変化している）わけではない。つまり、それは人間の視覚の問題であり、テニスの場合でも、頭上のボールは小さく見える＝実際より遠くにあるように見えるのだ。そのため、思ったよりも早く落ちてくるという感覚になり、なおかつボールは加速しながら落ちてくるため、慣れていない人は、たいてい振り遅れてしまうのだ。

上から来るボールに慣れていない

苦手な人―すなわちミスが多い人は、上から落ちてくるボールに慣れておらず、正確にボールをとらえられないという問題を抱えているケースがもっとも多い。イラスト上で説明している通り、上からのボールは、どうしても振り遅れのミスが出やすくなってしまうのだ。そのため、下のような構えの問題も、振り遅れを助長する原因になる。また、ボールを正確にとらえる自信がないため、しっかり振り抜くのか、当てにいくのか、迷いながら中途半端に打ってミスしてしまうという人も多い。

構えが低いと振り遅れやすい

ただでさえ振り遅れやすいスマッシュでは、構え（テイクバック）の遅れは致命的となる。また、いくら準備が早くても、右のように構えの位置が低いと、スウィングを始める前に一度腕を引き上げなければならず、その一瞬のタイムラグが振り遅れにつながってしまう。これも、苦手意識を生む原因になるので注意してほしい。

上から来るボールを正確にとらえられる

得意な人は、もちろん苦手な人とは逆に、上から落ちてくるボールに十分慣れている。タイミング的に振り遅れることもなく、写真右のように高い打点で正確にボールをとらえられるということだ。当然、準備も早く、構える位置も高く、技術的にも振り遅れにつながる要素はない。また、しっかり振り抜いて打つか、当てるだけで確実に返すかのメリハリがはっきりしているため、それもミスの少なさにつながっている。

苦手な人はどうすればいい？

技術的には、早め早めの準備や始動が大切になり、「早く構えて、早めにゆっくり振り始める」というのが、タイミングを合わせるコツとなる。それらが身についたら、あとは数多く打って、上からのボールに慣れるしかない。アマチュアの場合、試合前のウォームアップのときしかスマッシュの練習をしないという人も多く、絶対的に練習量が不足しているので、日常的にスマッシュの練習を取り入れることが大切だ（その際、わざと高いロブを多く打ってもらうようにしよう）。また、バドミントンや、バレーボール、バスケットボールなど、他のスポーツをやることも、高いボールに慣れるには有効だ。

C.モーヤの下がりながらのジャンピング・スマッシュ

比較的イージーなロブを、サービスラインの手前でジャンプしながら叩いた場面。時間的な余裕はあまりないが、シンプルかつ最短距離のテイクバックによって早い準備ができている点は良い見本となる。また、ジャンピング・スマッシュは一見むずかしそうだが、思いきってジャンプしながら振り抜いてしまったほうが、むしろミスは出にくいのだ。