■テニスGEEK通信(TENNIS GEEK NEWS)とは テニスギアの「モノ」や「コト」を、深堀し、マニアックに、そしてGEEK(ヲタク)にお届けするコラムです。 ウインザーラケットショップ池袋店スタッフの中居が独自の目線で話題の商品を紹介します。 テニスに関する仕事をして30数年になる大ベテランですが、まだまだヤル気満々でテニスコートに立っているシニアプレーヤーです。
>>デビスカップの組み合わせ<< >>YouTube 最新ラケット試打&忖度なし本音レビュー、ダンロップ最新「SXシリーズ」<<今から34年前、初代プレステージが発売されました。
1980年台としては、高額な49,000円で、フランスの人気選手アンリルコントが使用し話題になりました。フルキャップグロメットに深いワインカラー(海老茶色)が高級感を漂わせ、上品だけど使用してみると、ワイルドなラケットでした。
この当時は、まだまだフラットで打つことが基本でしたので、偏平形状のグリップが握りやすく、ワングリップで全てのショットが打てると評判でした。フェース面積600平方センチメートルの表示でしたが、その後インチ表示もされるようになり、93平方インチと記載されました。現在も平方センチメートルと平方インチのダブル表示されています。(615平方センチメートル/98平方インチなど)
2021年プレステージの14代目が発売され、色々と変わった記念すべきモデルとなりました。まずカラーリングは前作の赤から、初代を彷彿とさせるワインカラーと黒の渋めのデザインになり、おとなの雰囲気になりました。時代の流れで、なくなったり、復活したりするのが93平方インチのMIDですが、今回のラインナップから外れました。小さいフェース面積が好きな方もいらっしゃるので、いつかまた復活する日を楽しみにしています。
今回のラインナップは4機種で、
プレステージPRO(98平方インチ、320g、18×20)
プレステージTOUR(95平方インチ、315g、16×19)
プレステージMP(99平方インチ、310g、18×19)
プレステージMPL(99平方インチ、300g、16×19)
あれっと思った人は、プレステージ通です。
モデル名が入れ替わっているのです。
前作プレステージMP→PRO
前作プレステージPRO→TOUR
前作プレステージTOUR→MP
前作プレステージS→MPL
に変更になっているのですが、理由としては、ヘッド全体のネーミング方法には法則があって、最も上級なモデルはプロ、その次がTOUR、その次がMP、軽量モデルはMPLといった具合なのですが、プレステージだけ独自のネーミングだったので、今回は全モデル統一の運びとなりました。
グラフィン360+は前作とまったく同じなので、素材の変更はありません。
唯一変えたのが、ヨーク部分のオーセチックと呼ばれる材質の構造です。
網のようになっており、伸びたり、縮んだりすることで、インパクトの強さでホールド感が増します。
トラックマンで4本のデータを計測しました。
スピードとスピンで見ていくと、
PRO スピード103.9kmスピン1540/rpm
TOUR スピード109.9kmスピン2039/rpm
MP スピード111.1kmスピン1844/rpm
MPL スピード113.6kmスピン2088/rpm
スピードに関しては、軽くなればなるほど速くなっています。
「パワー=重さ×スイングスピード2乗」に比例します。
重たいものを速く振れるに越したことはありませんが、スイングスピードの2乗に比例するということは、軽いものを速く振る方が手っ取り早くスピードアップできるのです。
スピンに関しては、TOURとMPLが2000回転以上出ており、この2本に共通なのが、ストリングパターン16×19と言うことです。PROとMPは、細かいパターンなので、スナップバックが起きづらく、回転数が落ちてしまったと思われます。
2014年全日本テニス選手権シングルス優勝、2017年全日本テニス選手権ダブルス優勝の
江原弘泰プロが張替えに来られた時に、質問してみました。江原プロは現在プレステージSを使用していますが、新しいプレステージMPLも試しています。
私「江原プロは、かなり重りを貼って使っていると思いますが、元々重たいTOUR(前作)にしないのはなぜなのでしょうか」
江原プロ「TOUR(前作)はストリングパターンが18×19なので、回転のかかりがイメージ通りじゃないんです」
私「ラケットは市販の元と中身は違うのですか」
江原プロ「いえ、市販の元とまったく同じです。ただ、ロングに加工しています」
私「新しいプレステージMPLはいかがですか」
江原プロ「まだテスト中ですが、今のより打球感が柔らかくなってますね」
気さくに色々と答えていただきました。貴重なご意見ありがとうございました。試打したスタッフは、ほぼ全員、新作の方が柔らかいと言っていますので、オーセチックの効果があるのは間違いないところです。
自分の一番のお気に入りは、プレステージMPLです。
スピード、スピンともに1番の結果が出ており、飛距離も23.4m(コートの大きさ23.77メートル)で、バラつきも少なく(下の小さい数字がバラつきを表します)申し分のないラケットです。MPも良かったのですが、スピンが下がったために、飛距離が26.2mとバックアウトしてしまいました。
今回は球出し機から出てくるボールを打ったので、インパクトで打ち負けることはありませんでしたが、
実際にコートで、相手の威力のあるボールを打った場合は、重たい方が打ち負けないので、真逆の結果になる可能性もあります。
次の機会にはオンコートでテストしてみようと思います。
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