テニスのウィンブルドン(イギリス/ロンドン、芝、グランドスラム)は大会3日目の29日、男子シングルス2回戦が行われ、地元イギリスで話題の世界ランク772位
M・ウィリス(英国)は第3シードの
R・フェデラー(スイス)に0-6, 3-6, 4-6のストレートで敗れ、その瞬間シンデレラ・ストーリーに終止符が打たれた。
>>錦織vsベネトー1ゲーム速報<<>>ウィンブルドン対戦表<<ウィリスは両親と共に暮らしながら地元のテニスクラブでテニスを教えており、ランキングの低い選手へ向けたイギリスでのプレーオフ3試合を勝ち抜いてウィンブルドン予選への切符を手にした。そして、その予選でも3試合に勝利して夢の本戦の舞台に立った。
大会初日の27日に行われた1回戦でもその快進撃は止まらず、世界ランク54位の
R・ベランキス(リトアニア)をストレートで下して2回戦へ駒を進め、グランドスラム最多17度の優勝を誇るフェデラーとの対戦が実現した。
この日は雨により屋根が閉められたセンターコートに現れたウィリスは、15,000人の観客からの大声援を浴びた。観客席には両親、妹、弟、そして友達が見守る中、フェデラーと交わした14回のラリーの末に鮮やかなロブがフェデラーと頭上を超えてベースライン内側に落ちると、会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。
25歳のウィリスは「サービスを打とうとボールをコートにつきながら顔を2度上げると、そこにはロジャー・フェデラーがいた。そして思ったんだ、こんな光景はこれまで見たことがないと。いや、でもこれは現実。その状況に慣れて、試合をしなければならなかった」と信じられない想いを語った。
「何から何まで信じられず、夢のようだった。この数日で全く違う世界に辿り着いていた」と語るサウスポーのウィリスは、両サイドからスライスを多用する独特なプレースタイルを披露していた。
普段は40ドル(約4,000円)を1時間のレッスンで稼いでいたウィリスは、正に一夜にして有名人となった。ガールフレンドからはテニスを諦めないでと説得された。そのガールフレンドは家族と共にBBCからのインタビューを受けた。
フェデラーの生涯獲得賞金は1億ドル(約100億円)に届こうとしている。もちろん、それにはスポンサー契約料など含まれていない。
一方のウィリスは、今季の獲得賞金は350ドル(約3万5000円)で、生涯獲得賞金も10万ドル(約1,000万円)にも満たない。
スポンサー契約などは交わしておらず、この日の試合にもフェデラーのアパレル・ブランドの白いTシャツを着て臨んだ。左袖にはロゴの「RF」が刻まれていた。それはウィリスが約1年前に購入したものだった。
試合開始の第3ゲームで見せたウィリスの鮮やかなロブには、フェデラーも拍手を送っていた。
後にウィリスは笑顔で「ロジャー・フェデラーをロブで抜いたんだ」と語っていたほど。サービスエースを決めると両手を上げて喜びを表現。第2セットの第2ゲームで初めてゲームを奪うと観客は立ち上がり、場内は大歓声に包まれた。
今回の勝ち上がりでウィリスは5万ポンド(約670万円)を手にする。
憧れのフェデラーと1時間25分の試合を行ったウィリスは「今日は普段の水曜日ではなかった。来週の水曜日は、きっとかなり違う1日を過ごしているだろう」と夢物語に終止符が打たれ、現実に戻ることを実感していた。
(STATS - AP)
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