テニスのグランドスラムである全米オープン(アメリカ/ニューヨーク、ハード)で、13日に行われる男子シングルス決勝に登場する34歳の
R・フェデラー(スイス)は、3年ぶりとなるグランドスラム優勝を狙い、新たな戦術と共に決勝戦の舞台に立つ。
>>全米オープン対戦表<<フェデラーは今大会直前の試合で見せた、相手のセカンドサービスに対して、サービスライン近くに立ちハーフボレーのようなブロックリターンをしてネットへつめるという作戦を見せ、それはセイバー(「SABR」Sneak Attack By Roger、ロジャーによる密かなネット攻撃)と呼ばれ多くの話題を集めている。
フェデラーは先月、全米オープンへ向けての準備大会だったハードコート大会を欠場し、全米オープンへ照準を合わせて休養しながら準備をすることを選択していた。そしてこれまで何度も試してきた大きめなヘッドサイズのラケットにも慣れ、完璧に使いこなせるようになっていた。
加えて、これまでグランドスラム最多優勝回数の17度を誇るフェデラーのかつての絶頂期プレーに、引けを取らないほどの好調なプレーとも言われている。
2009年以来となる全米オープンの決勝進出を果たしたフェデラーは、ここまでの勝ち上がりでは苦戦することもなく圧倒的な強さを見せている。金曜日に行われた準決勝でも、長年の友人でデビスカップのチームメイトでもある
S・ワウリンカ(スイス)を6-4, 6-3, 6-1のストレートで退けていた。
「いったい何が起きているのか。6年も決勝へ勝ち上がっていなかったんだって。それならこの決勝進出は大したことだね。そんなに前だとは思っていなかった。」と自画自賛したフェデラー。
ここまでの2週間、彼のテニスの好調さと言えば、戦ってきた6試合全てがストレート勝利であり、同時に合計で62ゲームしか落としていない。そして81回の自身のサービスゲームではわずか2度しかブレークを許していない。
フェデラー自身も「まさしくとても良いプレーをしている。分からないが、きっとベストかもしれない。それがもう1試合続いてくれることを願うよ。」と、自覚しているようだった。
その1試合とは日曜日に行われる決勝戦で、第2シードのフェデラーは今季好調なプレーを続けている第1シードの
N・ジョコビッチ(セルビア)との大一番に臨む。ジョコビッチもこれまで9度のグランドスラム優勝を飾っている。
しかし、そのジョコビッチも金曜日の準決勝では圧倒的な勝利をおさめていた。彼は昨年のチャンピオンである
M・チリッチ(クロアチア)を6-0, 6-1, 6-2で一蹴していた。これは1968年のオープン化以降、最も一方的な準決勝となった。
「彼(ジョコビッチ)との対戦は常に苦戦を強いられるもの。」と語るフェデラーは、2007年の全米オープン決勝でジョコビッチを下し優勝したが、2010年と2011年は準決勝でジョコビッチの前に敗退していた。そのいずれの試合もフルセットにもつれ、ファイナルセットも5ー7の接戦だった。
この決勝戦が両者の42度目の対戦。これはオープン化以降 最多対戦回数で同一1位となる。ジョコビッチは
R・ナダル(スペイン)と同じ回数対戦している。ここまでのフェデラーとジョコビッチの対戦成績では21勝20敗とわずかにフェデラーがリード。
最後の対戦は先月行われたシンシナティ・マスターズで、その時はフェデラーに軍配があがっていた。この対戦は今季6度目のもので、そのいずれも決勝戦でのこと。2カ月前のウィンブルドン決勝戦を含めジョコビッチが3度勝利している。
「彼(フェデラー)がどれほど安定していて、良いプレーをグランドスラムやその他の大きな大会の後半戦で見せているか知ってる。彼はいつも対戦相手のベストのプレーを導き出すんだ。」とジョコビッチはフェデラーについて語っていた。
ジョコビッチはこれで、今季全てのグランドスラムで決勝進出を決めた。全豪オープンでは優勝し、全仏オープンではワウリンカの前に敗退したが、7月のウィンブルドンでも優勝している。
「もちろんそれは素晴らしい結果だし、誇りに思っている。それらの大会は、誰もが最高のプレーをしたいと思っている大会なんだ。」とジョコビッチは自身の意見を述べていた。
ジョコビッチにとって今回が全米オープンで6度目の決勝進出だが、2011年の1度しか優勝していない。
一方のフェデラーは、2004年から2008年まで5連覇を達成していたが、2009年の決勝戦では
J・M・デル=ポトロ(アルゼンチン)の前に屈していた。
その後フェデラーは現在まで2度のグランドスラム優勝を果たした。2010年の全豪オープンと2012年のウィンブルドン。その間ジョコビッチは8個ものグランドスラム・タイトルを獲得していた。
しかし今大会でのフェデラーは、これまでにないほどの好調な動きを見せている。彼のサービスはパワーとプレースメントがミックスされた完璧なもの。そしてセイバー「SABR」と呼ばれるリターンゲームでも話題を集めており、そのリターンは練習中に偶然発掘されたものだった。
「あれは彼にとってエキサイティングなショット。対戦相手にはそうでもないかもしれない。それについては、他に語ることはないよ。」と語るジョコビッチ。
準決勝でフェデラーと対戦したワウリンカは、フェデラーとの対戦の難しさを簡潔に語っていた。その試合でフェデラーは、自身のファーストサービスでは80パーセントの確率でポイントを獲得し、凡ミスはわずか17本だった。
「基本的にそれが彼なんだ。あれが彼のプレーさ。」と第5シードのワウリンカはフェデラーを表していた。
チリッチを一蹴したジョコビッチは、その試合ではフェデラーを下回る13本の凡ミスにとどまっていた。
チリッチは「あんな負け方はちょっと恥ずかしいと言われてしまうかもしれない。」と語りながら、4回戦の試合中に足首を捻るアクシデントに見舞われた怪我は、小さな大会だったらそれ以降は棄権していたほどの怪我だったと説明していた。
フェデラーは「彼(ジョコビッチ)を倒すのは本当に難しい。加えて彼は精神的にもとてもタフな選手なんだ。そんな彼にチャレンジするのが好きなんだ。そして今はそれへ向けてしっかり準備が出来ている。」とジョコビッチとの決勝戦への気持ちを語っていた。
(STATS - AP)
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