テニスのグランドスラム、全豪オープン(オーストラリア/メルボルン、ハード、賞金総額17,748,600ドル)は19日、男子シングルス1回戦が行われ、第3シードの
R・ナダル(スペイン)が元世界ランク8位の
M・ユーズニー(ロシア)を6-3, 6-2, 6-2の1時間50分のストレートで下し、順当に初戦突破を果たした。
ナダルはその試合では新しいラケットで臨んでいた。見た目はこれまでの物とそれほど違いが分からないものの、スマートフォンなどのアプリと連動するスイッチが大きな違いである。
『スマート・ラケット』と呼ばれるそのラケットは、最新の技術が備えられており、ラケットのグリップ部分に付けられたバボラ社が開発したセンサーが、打ったボール全てのデータを記録すると言うもの。試合や練習の後、そのデータはスマートフォンやパソコンにダウンロードする事ができ、その選手のプレーを分析する事が出来る。
そのセンサー以外はこれまでのラケットとは大きな違いはない。これまでナダルが使用してたラケットと同じ大きさで同じ重さとなっている。
「良いプレーをするには、試合を通して70パーセントをフォアハンドで、30パーセントをバックハンドで打つ必要があるのは知っている。もしそうではなかったら、試合中に正しいプレーが出来ていなかったと言う証である。」とナダルは、ユーズニーから勝利を飾った後の会見で語っていた。
「このラケットはそんなデータをチエックするためのもの。」と、14回のグランドスラム優勝を誇るナダルは加えた。ナダルは昨年は右手首の怪我や虫垂炎などから、シーズンの後半戦を満足に戦う事が出来なかった。
グランドスラムなどを管轄する国際テニス連盟であるITFはこれまで、選手のプレーを分析する技術を備えたラケットを、公式戦で使用することを禁じていた。しかし昨年の1月に、今回のナダルが使用しているような選手のプレーをリアルタイムでデータとして記録する技術を備えたラケットの使用を認める新しいルールを採用していた。
バボラ社は当初、特に多くの女子選手が使用している『ピュア・ドライブ』にそのセンサーを着けていたが、その後新しく発売されたナダルや
C・ウォズニアキ(デンマーク)、
JW・ツォンガ(フランス)らが使用している『アエロプロ・ドライブ』に備えるようになった。
しかしながら、当然試合の途中でそのデータを見ることは出来ず、ITFは試合中のコーチングも禁止している事から、そのデータからアドバイスする事も禁止となっている。
その使用方法はとても単純であるとバボラ社のスポークスマンであるトーマス・オットン氏は語る。
そのラケットには2つのボタンがグリップ部分に着いていると言う。「“on”と言うボタンを押します。すると青いLEDライトが付きます。それからプレーするだけです。そして終わった時に2つ目のボタンを押すとブルートゥースが作動しスマートフォンや他のデバイスにデータが送られるのです。」と説明していた。
オットン氏は金曜日にナダルが行った練習の時のデータを参照していた。その練習は1時間31分行われ、その間、572球のボールを打ち、1分間に22球を打っていた。内訳は156球がバックハンドで222球がフォアハンド、118球がサービスで76球がスマッシュだった。
そのデータはそれ以外の事も分析している。例えばナダルが打ったフォアハンドでは133球がトップスピンで49球がスライスで、40球がフラットだった事も分かった。
画面をスワイプすると次にはラケットがイメージされた画面が表れ、ラケットのどこにボールが当たっていたかが示されている。ナダルのその練習では、42パーセントが中心部で20パーセントがラケット上部で、それ以外が下部か横となっていた。
大会が始まる前のデモンストレーションでは、ウォズニアキやナダルがこの技術に対して、あまり多くを知りたくはないかもと言う賛否を、ジョークを交えて語っていた。
「時には悪い事もある。自分がラケットの中心で打っていると思っていても、そうじゃないと分かってしまう。あまり嬉しいものではないわ。」とウォズニアキはコメントしていた。
ナダルの叔父でコーチであるトニー・ナダル氏は、ナダルに取って良い影響もあると感じている。「自分が彼の打ち方を直そうとした時に、時に彼はそれを賛同しない事もある。今は正しいデータがあるんだ。」
しかしナダルはそれを受けて、「今は彼(トニー氏)がデータを見ることが出来る。彼が間違っていると証明される事だってある。」とジョークで返していた。
ナダルは21日に行われる2回戦で、
L・サビル(オーストラリア)を7-6, 7-5, 6-4で下した
T・スミチェク(アメリカ)と対戦する。
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