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フットワーク編

Vol.1 フットワークの新発想・新常識 上巻

スライド/ステップは習うより慣れろ

形で覚えようとすると、かえってむずかしい

フットワークは、コートサーフェスによってもかなり変わってくる。もっともわかりやすいのは、足のスライドを使うかどうかだ。クレーコートや砂入り人工芝のコートでは、ハードコートのような足裏のグリップ力がないので、足をスライドさせながらコントロールする必要があるが、逆にハードコートではなめらかに滑らせることはできないので、ステップワークで足を合わせることになる(砂入り人工芝では、その状態によってはハードのような動き方が必要になる場面も多い)。

そうしたスライド/ステップの使い分けは、最初から何の迷いもなくできる人もいれば、できない人もいる。問題はできない人の場合だが、これはダンスのように形で覚えるものではない。足裏や膝の感覚として身につけるものなので、「習うより慣れろ」と言う他ない。

今はクレーコートが少ないので、スライドに慣れていない人が多いだろうが、やはり実際に土の上でやってみるのがいちばんだ。初めは、下イラストのようなダッシュ&ターンの練習をしても良いし、人の動きを見て真似するのも良い。基本的に、自転車に乗れない人がほとんどいない(1年間練習したけど乗れなかったという人は稀だろう)のと同じで、慣れれば誰でもできることなので、むずかしく考えすぎるのはかえって良くないのだ。

クレーコートでは、一発でピタッと止まることはできないので、スライドをうまく利用することが欠かせない。安定したスライドをさせて、思ったところで止めるには、足の向きや着地のさせ方などにコツがあるが、それらを細かく考えるよりも、実際に土の上で滑らせてみて、慣れることがいちばん大切だ。

ハードコートでは、足裏のグリップ力が高いので、スライドさせようとするとかえって危険。そのため、細かいステップで打点を調節することになるが、とくに打球時には、膝を柔らかく使って、身体のブレや無駄な上下動を抑えることが大切だ。これも数多く打って、身体で覚えるしかない。

クレーコートでのスライドがどうもうまくいかない場合は、このように誰かに手でボールを左右に投げてもらい、それをキャッチして戻るという練習をウォームアップ的に行なうと良い。初めは足を滑らせることは意識せず、素早く動いて素早く戻ることだけを考えよう。それでも、左右ランダムに投げてもらったり、より厳しいボールを投げてもらったりしているうちに、無意識のうちにスライドを使うようになっているはずだ。

S.グロージャンのクレーコートでのバックハンド・スライス(倍速デジタル撮影)
少し遠いボールに対して、右足をうまくスライドさせてスライスで返球した例。2~3にかけてつま先から徐々に滑らせていっているが、これもスムーズにスライドするためのコツだ(逆にかかとから着地するとうまくいかない)。そしてインパクトでは、できるだけスライドを止めて打てるようにしたい。また、足をスライドさせると身体が開きにくくなるので、スライスやボレーは非常に打ちやすくなる。
J.エナンのハードコートでのバックハンド・スライス
こちらは、ハードコートでスライドが利かないので、ピタッと止まった右足に対して、左足を後方から送り出しながら打っている。右足の着地も、上と違ってかかと着地であり(しっかり止まる場合はこのほうが安全)、その後は膝を柔らかく使うことで、スムーズに後ろ足を送り、身体のブレを抑えている。腰の高さが一定に保たれている点も見事だ。また、後ろ足を送り出すと身体が開きやすくなるので注意が必要だ。
J.C.フェレーロのスライドとステップを使った両手打ちバックハンド
このようにトップスピン系のショットを打つ場合には、足を滑らせながら打つと手打ちなってしまうので、クレーでスライドを使う場合も、このように早めに右足のスライドを止めて、身体を回転させながら(後ろ足を送り出しながら)打つことが大切になる。オープンスタンスで打つ場合には、前ページのフェレーロの連続写真のように、軸足のスライドを止めた後、軽くジャンプしながら打つのがお勧めだ。
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「スプリットステップとは「観る」ことなり」 >>

(テニスジャーナル 2004年1月号)
© SKI Journal Publisher Inc.

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