錦織圭(日本)の活躍を初期から追い続け、1973年から国内外のテニスの報道に携わるジャーナリスト・塚越亘氏による全豪オープンの現地レポート。
勝てば全豪・オープンでは自身初の4強。
記録的には日本男子では1932年の
佐藤次郎(日本)以来、またまた過去の偉大なプレーヤーの名前が83年ぶりに錦織の活躍で光を浴びる事になった。
決してその記録にケチをつける気はないが、1932年はまだ8名による大会だったようだ。
現在のように128名のドロー、その上もう128名の予選がある今とは厳しさが違う。
そんな厳しい現在の男子テニス界の中で錦織は4強入りを狙って戦った。
<<準々決勝>>
●錦織圭(5) 3-6, 4-6, 6-7 (6-8) ○
S・ワウリンカ(スイス)(4)
対戦相手はワウリンカ。対戦成績は錦織から1勝2敗。
1勝は昨年のUSオープン準々決勝、4時間15分の末の勝利だ。
昨年のオーストラリアン・オープンの覇者ワウリンカはフェデラーがランキングではまだ上位だが、今やスイスではフェデラーを超えた実力を持っている。
スイスを念願のデ杯で優勝させた立役者だ。
そのワウリンカが錦織は「ショットメーカー、早いタイミングでしかけウィナーを取ってくる時間を与えてくれない難しい相手だ」と警戒する。
1,2,3回戦、格下のプレーヤーの挑戦に苦戦しながらも勝利した錦織は4回戦、いつもフルセットに縺れる死闘をする
D・フェレール(スペイン)をストレートで下してきた。
そして今大会初めて自分よりランキング上位者と対戦する。
「これからは挑戦者として戦える。自然といいプレーもできる」と言っていたが、試合が始まるとワウリンカが挑戦者のように攻めてくる。
素晴らしく美しくそして力強い片手打ちのバックハンドで先にダウン・ザ・ラインをついてくる。そのショットの精度も高い。
バックハンドを放つワウリンカ
対する錦織はその「パワー、ボールの速さ、正確性で押され、あせってしまった。」と言う。いつもの錦織らしさが発揮できない。
第1セットはワンブレークで落とす。
第2セットも先にサーブをブレークされるが、4-5、第10ゲームで15-40とブレーク・バックのチャンスが訪れた。
しかしそこで時速220キロのサーブを入れられるなど、中々ブレークできずに2セットを落とす。
第3セットも押され気味だがタイブレークに持ち込んだ。
しかし、最初のポイントを落とすと0-4と先手を取られ、あっと言う間に1-6とワウリンカにマッチポイントを握られる。
絶体絶命のここからが錦織らしさ出た。
1-6だとほとんどのプレーヤーは諦めてしまうところだが。
錦織にアメリカテニス留学のチャンスを与えてくれた盛田ファンドの盛田正明氏が見守る中で勝負強さを見せなんと6-6まで挽回する。
錦織を見守る盛田正明氏
コートチェンジ後、錦織はラリー戦で主導権を握る。
そして見せたドロップショット!
しかしそれはネットに掛かってしまった。
痛恨のミスにうなだれる錦織。
6-7、6度目のマッチポイント、ワウリンカはT(センター)へファースト・サーブ、必死に飛びつくが届かない。
サービスエースを決められ悔しい敗戦を喫した。
結果は完敗。
「(グランドスラム大会)ベスト8は満足できる結果ではない」、「こういう舞台で勝てる選手になりたい」。
会見を行った錦織
狙っていたグランドスラム大会優勝だったからだろう。
塚越亘…ジャーナリスト。1973年から雑誌などに寄稿。90年代には「TENNISJapan」というFAX新聞を発行し、試合結果速報や
松岡修造(日本)、
クルム伊達公子(日本)らの直筆コメントなどを掲載した新聞を発行。テニスの報道における草分け的存在。
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