世界ランク1位で今シーズンをスタートさせた
N・ジョコビッチ(セルビア)。
シーズン最初に登場したのが、大会3連覇を狙う全豪オープンだったが、そのジョコビッチが思わぬ大苦戦を強いられた試合が4回戦の
S・ワウリンカ(スイス)との一戦だった。
それまでジョコビッチは、対ワウリンカ戦は2006年に2度負けていたものの、2007年からこの試合までワウリンカの棄権敗退1回を含め10試合連続勝利を飾るなどそれまで11勝2敗と、特に苦手ともしていなかった相手だった。
しかし、この試合が壮絶な戦いになることを予感させるかのような好調な出だしを見せたのがワウリンカだった。第1セットでは自身のサービスゲームで1度もジョコビッチにブレークポイントさえ与えず3度のブレークを奪い、6-1で先取する好調なスタートを切った。
しかし気持ちを切り替えて集中を高めたジョコビッチは第2セットを2-5の劣勢から5ゲームを連取し奪い返し、第3セットも6-4で奪い勝利へ王手をかけ、やはりジョコビッチがこのまま勝利を収めるのかと思われた。
しかしこの日、ジョコビッチはここから厳しい試練を与えられる事となった。
すっかり本来の調子を取り戻したジョコビッチは続く第4セットも自身のサーブではファーストサーブで81パーセント、セカンドサーブでも54パーセントの確率でポイントを奪い、ワウリンカに1度もブレークポイントを与えずキープを続けた。
対するワウリンカもこの日は違った。再び集中を高めると、ファーストサーブでは78パーセント、セカンドサーブでも69パーセントとジョコビッチに一歩も引けをとらずブレークポイントさえ与えないプレーを見せた。
そしてそのセットはターブレークへともつれ、7-5でワウリンカが取り返し、試合はフルセットへと持ち込まれた。
タイブレークがない第5セット、ジョコビッチの最大のピンチはゲームカウント3-3からの第7ゲームの自身のサービスゲームだった。そのゲームでワウリンカに4度のブレークポイントを握られたジョコビッチだったが、若干足に疲れを見せ始めたワウリンカへ見事なドロップショットを放ち、ワウリンカのミスにも助けられ辛くもそれを凌ぎキープに成功した。
その後は両者サービスキープを続けジョコビッチがゲームカウント11-10とリードしたワウリンカのサーブでは、2度のマッチポイントとなるブレークポイントを握ったジョコビッチ。しかしそれをワウリンカは200キロのサービスエースと、シングル・バックハンドからの見事なダウン・ザ・ラインで切り抜けた。
しかしジョコビッチは再び3度目のマッチポイントを握った。が、そのポイントも主導権はワウリンカが握り、ジョコビッチはディフェンスに回らされていた。そしてワウリンカがスライスでのアプローチショットを放ちネットへ詰めると、その難しい状況からジョコビッチが見事なパッシングショットを決めてゲームセット。
第5セットだけで1時間44分を要したこの試合。試合開始から5時間2分が経過し、試合終了は深夜1時41分にも及ぶマラソン・マッチだった。
そしてその後、大会3連覇を達成したジョコビッチだったが、トロフィーを掲げるまでの試合で最も苦戦を強いられた試合となった4回戦だった。
ジョコビッチは試合後「僕はただ粘って戦い続けただけさ。エネルギーを最後の最後まで使い切った。どっちが勝ってもおかしくない試合だった。勝てて本当に嬉しいね。彼には勝つチャンスがたくさんあった。どちらかが負けなければならないのが残念だった。」と、その思いを語っていた。
その試合はその後のワウリンカの好調を示すものともなった。今季を世界ランク17位でスタートさせたワウリンカは、5月には2008年10月以来となるトップ10へ返り咲き、10月には自己最高位の8位を記録する活躍を見せてシーズンを終了した。
(記事/弓削忠則)
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