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テニスのグランドスラムである全米オープン(アメリカ/ニューヨーク、ハード)は大会15日目の最終日に男子シングルス決勝戦が行われ、第3シードのA・マレー(英国)が前年度チャンピオンである第2シードのN・ジョコビッチ(セルビア)を7-6 (12-10), 7-5, 2-6, 3-6, 6-2という4時間54分の死闘を制し、悲願のグランドスラム初制覇を達成した。
実に5回目のグランドスラムの決勝戦に臨んだマレーは、今大会の最長試合となったこの試合を勝ち抜き、優勝トロフィーと共に優勝賞金190万ドル(約1億5010万円)を手にした。
歴史に刻まれたこの決勝戦は、第1セットからそれを象徴するような接戦となった。タイブレークへともつれた第1セットは、6回目のセットポイントでようやくマレーが先取に成功する。1時間27分にも及んだこのセット、タイブレークだけでも25分を要するほどだった。
続く第2セットも勢いに乗るマレーが一気に4ゲームを連取して試合の主導権を握った。しかし5ー3とリードしサービング・フォー・ザ・セットをブレークされてしまったマレーは、ゲームカウント5-5とジョコビッチに並ばれてしまった。しかしこの日のマレーはジョコビッチの反撃を許さなかった。続くゲームをキープしたマレーはゲームカウント6-5からの第12ゲームで3度目のブレークに成功し2セットを連取し、勝利に王手を掛けた。
崖っぷちに立たされたジョコビッチはこのままでは終わらなった。第3、第4セットでは1度もブレークをマレーに許さず、各セットで2度のブレークに成功するなど、セットカウント2-2と試合を振り出しに戻した。
しかしそのままの勢いで逆転勝利を狙いたいジョコビッチだったが、勝敗を決める第5セットの第1ゲームでマレーにブレークを許してしまう。続く第3ゲームでも2度目のブレークを奪われたジョコビッチは、第4ゲームで1つブレークバックし願いを繋いだ。
しかしこの頃から屈伸を繰り返すなど足のストレッチをし始めたジョコビッチ。動きやショットへの精細を欠き始めたジョコビッチをマレーが容赦無く攻め立て、第7ゲームでまたしてもブレークを奪ったマレーがゲームカウント5-2とリードし、勝利まであと1ゲームと迫った。
ジョコビッチは2-5とリードされたコートチェンジの時にすかさずトレーナーを要求。右足の付け根のハムストリングにマッサージを施しコートへ戻るも、マレーの勢いは止められず、マレーは40-0とマッチポイントを握る。ジョコビッチも意地を見せて1ポイント凌ぐも、続くマレーの第2サーブで思いっきり叩いたリターンがエンドラインを割ると、長い試合に終止符が打たれた。
勝った瞬間、マレーは信じられないと言う表情を見せ、コートにしゃがみ込み、ジョコビッチがネットを越えてマレーへ歩み寄ると二人は抱擁を交わして対戦相手を称え合った。
強い風の吹く悪いコンディションながら、20回以上のラリーが続くポイントが何度も繰り返されるストローク戦を制したマレー。イギリス人としては1936年以来となる、実に76年ぶりのグランドスラム・チャンピオンの座にたどり着いた。
「本当に難しい状況での試合だった。第3、第4セットの後は精神的にとても厳しい物だった。ノヴァークは本当に、本当に強い。最後の最後まで諦めずに戦って来る。どうやってこの勝利を手にしたのか分からないよ。」とマレーは信じられない様子だった。
加えて「この試合も5時間近いものだったし、これまでも長いラリーの試合やタフな試合を繰り返して来た。何とかこうして勝つ事が出来たんだ。」と大会を振り返っていた。
敗れたジョコビッチは準優勝賞金に加え、今大会前の北米でのハードコート・シーズン中の獲得ポイントで争われるエミレーツ航空USオープン・シリーズを1位で終えていたため、大会スポンサーであるエミレーツ航空からボーナスとして準優勝者へ50万ドル(約3950万円)が贈られた。
ジョコビッチは「逆転とは行かなかったけど、アンディのグランドスラムでの初優勝を祝福したい。彼はチャンピオンに相応しい。全てを出し尽くしたよ。誇りに思える素晴らしい試合だった。」とマレーへの賛辞を忘れなった。
マレーのこの勝利には多くの偶然が重なった。今年からコーチとして雇い入れた元世界ランク1位のI・レンドル(アメリカ)氏も、グランドスラム5回目の決勝戦で初優勝を飾り、そのレンドル氏がM・ビランデル(スウェーデン)氏と行った1988年の今大会の決勝戦に記録された決勝戦での最長試合はのこ試合と同じ4時間54分だった。
加えて、マレーはこの日の勝利が実に、グランドスラムでのちょうど100勝利目となっていた。
2012年のグランドスラム大会全てが終了し、全豪オープンではジョコビッチ、全仏オープンではR・ナダル(スペイン)、ウィンブルドンではR・フェデラー(スイス)、そしてこの全米オープンではマレーと、全て違う選手のチャンピオンとなり、現在の男子テニス界のトップ4と言われる4選手の優勝で幕を閉じた。
(翻訳/弓削忠則)
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