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2007年はテニス界が八百長疑惑に揺れた1年だった。男子ツアーのプロテニス選手協会(ATP)は2002年までさかのぼって疑惑のもたれた140もの試合の調査を行い、真相究明を続けている。
今回テニス界を襲ったこの疑惑は、世界ランク4位のN・ダビデンコ(ロシア)がM・バッサロ=アルグエッロ(アルゼンチン)と対戦したポーランドのソポットで行われたオレンジ・プロコム・オープン2回戦に対するかけ金に不正が見られたことで、大きく取り沙汰されることとなった。この試合で、ダビデンコは6-2, 3-6, 1-2で迎えた第8セット途中で足の負傷を理由に棄権。しかし、ダビデンコが第1セットを先取した後、約8億円ものかけ金が対戦相手のバッサロ=アルグエッロに入ったことで、不正な賭けの対象と見なされた。
この疑惑に対して、ダビデンコは身の潔白を主張し続けているが、その後電話の通話記録を提出するなど、調査は続けられている。
またダビデンコは、10月下旬にロシアで行われたサンクトペテルブルク・オープンの2回戦、M・チリッチ(クロアチア)戦でも全力で戦わず逆転負けしたことで2千ドルの罰金を科されていたが、その後ダビデンコが異議申し立てを行い、ビデオ判定の結果、罰金処分が取り下げられた。
ダビデンコのほかにも、A・ディマウロ(イタリア)が賭博で9ヶ月の試合出場停止に、P・コールシュライバー(ドイツ)は八百長疑惑で告訴されており、A・クレマン(フランス)やJ・ヘルニチ(チェコ共和国)も過去に金銭と引き換えに負けるように持ちかけられたと明かすなど、八百長の影は広く及んでいると見られる。
男子テニス界の頂点に君臨するR・フェデラー(スイス)は、「これまで約10年間、そのようなことを持ちかけられたことや、話を聞いたことは一度も無かった。」とコメントしているが、元王者のJ・マッケンロー(アメリカ)は裏側にマフィアの存在がある可能性を示唆し、それにより身に危険が及んだり、金銭の誘惑に負けてたりすることで、八百長に手を染めてしまうこともあるだろうと語っている。
このような八百長疑惑の背景には、インターネット賭博の拡大に伴い大量の金が集まっていることがあり、近年のウィンブルドン男子シングルス決勝には、約60億円以上のかけ金が動いているという。また、スポーツにおける八百長問題は古くは1919年に米大リーグのワールドシリーズで起こったブラックソックス事件や、最近では2006年に伊サッカーリーグのセリエAで発覚したカルチョ・スキャンダルがあり、各団体で永久追放などの重い処分が下されており、テニスでも何かしらの不正が発覚すれば重大な処遇が適用されることは間違いない。
米紙ニューヨーク・タイムズが「(プロテニス界は)最悪の危機に揺れている」と報じ、ATPや女子テニス協会(WTA)、国際テニス連盟(ITF)の各団体も「テニスに腐敗はないと信じるが、競技の品位に対する脅威が存在するとの認識はある」と声明で述べているが、この危機を乗り越え、テニスがクリーンなスポーツであるように努力してほしいところだ。
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