モデルかと思わせる美しい外見、長身から伸びた長い手足、少々荒削りなところがありながらもプレーも大器を感じさせる。
ニコレ・バイディソバにこそ、次期女王候補ナンバーワンという言葉が相応しいのではないだろうか。今年トップ20位に入った選手の中では最も若い16歳のバイディソバは、本来ならジュニアにいてもおかしくない年齢ながら、年上のお姉さんプレーヤーと対等に戦っており、トッププレイヤーへの階段を確実に上っている。今後、更なる飛躍が期待されるバイディソバにスポットを当てる。
2003年にITFツアーデビューを果たしたバイディソバだが、この3年間のランキング上昇には目を見張るものがある。昨年8月、WTAツアー本選出場3大会目で初優勝。当時15歳3ヶ月でのツアー優勝は史上6番目の年少記録で、ランキング180位からの優勝も新記録であった。10月に2勝目をあげ、ランキングも年初の圏外からトップ100入りを決めた。
今年は初戦から好成績を残し、4月にトップ50入りに成功。5月のイスタンブールでは決勝に進み、
V・ウィリアムズに敗れたものの見事準優勝をおさめた。その後、初出場のローラン・ギャロスでは2回戦、ウィンブルドンでは3回戦、USオープンでは4回戦と確実に実力を付け、9月からのアジアツアーではまさに絶好調といえる強さを発揮した。まず、韓国オープンでトップシードのJ・ヤンコビッチ(セルビア・モンテネグロ)を決勝で下し自身3度目の優勝を決めると、続く東京・AIGオープンで同世代の
T・ゴロバン、
M・キリレンコを破り優勝。直後のタイ・オープンでも決勝で
N・ペトロワを退けて、今季WTAツアー唯一の3週連続優勝を成し遂げたのだ。そして、続くフィラデルフィアでも準決勝まで勝ち進み、
A・モレスモに敗れるまでソウルから実に18連勝を記録。実力が本物であることを示して見せた。
バイディソバに女王の素質が備わっているのは、テニスの実力だけのことを言っているわけではない。今季からウェアの契約を結んでいるリーボックのキャンペーンキャラクターを務めている。また、その容姿、成績の伸び方などから、今やスーパースターの
M・シャラポワと比べられることもある。しかし、当然ながら本人はこれを嫌っており、「私は私。」と強気に言い切る。ドイツ生まれ、チェコ育ち。6歳からテニスをはじめ、アメリカのニック・ボロテリ・テニス・アカデミーでトレーニングを積むバイディソバは、心身ともに急成長を遂げる中、自分らしさを探している真っ最中だ。
キャリア通算5勝と順調にタイトルを勝ち取っているが、これはあくまでティア3レベルの大会でのこと。今後、女王を目指すにはティア2以上の大会で優勝し、トップ10選手との対決することが避けられなくなってくる。実力・人気ともに注目を集めるバイディソバに対して、周囲のマークはこれまで以上に厳しくなってくるだろう。それでも、今季の勢いをもってすれば、来年も更なる活躍をしてくれることだろう。