テニスのグランドスラムである全米オープン(アメリカ/ニューヨーク、ハード)は13日に行われた男子シングルス決勝で、第2シードの
R・フェデラー(スイス)を6-4, 5-7, 6-4, 6-4で下し2度目の優勝を飾った第1シードの
N・ジョコビッチ(セルビア)だったが、その後ちょっとしたハプニングに見舞われていた。
それは自身10度目のグランドスラム優勝を飾り、多くの祝福を受け、記者会見なども済ませた深夜2時になる頃だった。ジョコビッチは、アーサー・アッシュ・スタジアムの駐車場に1人途方に暮れたようにたたずんでいた。
彼はこの2週間、セントラルパーク近くのホテルと大会会場を自身の車で往復していた。しかしその時ジョコビッチは車の鍵が見付けられず、奥さんと10ヶ月の息子が待つホテルへ帰れなくなっていた。
それは試合後のごたごたした瞬間に、彼のバッグを持ってくれた大会関係者が誤って車の鍵も一緒に持っていってしまったのだった。
ジョコビッチは大会が他の選手などに提供している送迎車をしぶしぶ利用してその日はホテルへと帰って行った。本当なら勝利の余韻に浸りながら運転席に座っていたはずだったのに。
「ちょっとリラックスする時間が持てたよ。音楽を聴いたり、色んな思いにふけったりね。ツアーを回っていると運転する機会などあまりないから、ここで運転するのが好きなんだ。」と決勝戦翌日の14日に語っていた。
「正直、チャンピオンになって会場からホテルまでのドライブも楽しみにしていたんだ。でもそれはおあずけとなってしまった。」と、笑いながら前日のハプニングを振り返っていた。
月曜日のインタビューに訪れたジョコビッチは、声がかすれ時折咳き込むことがあった。その時彼は、朝のテレビ番組にいくつか出演しており、司会者から銀色の優勝トロフィーを何度もねだられ視聴者へ披露していた。
ジョコビッチは今後、フェデラーの持つグランドスラム最多優勝回数の17度を狙う。現時点で10度の優勝は7番目の記録で、フェデラーの次に、
P・サンプラス(アメリカ)と
R・ナダル(スペイン)が14度、R・エマーソンが12度、
B・ボルグ(スウェーデン)と
R・レーバー(オーストラリア)が11度となっている。
「サンプラスやナダルの記録に並んだり追い越すことを狙っていないと言ったら嘘になる。まだナダルは現役だし、これから彼の数字がまだ増える可能性だってあるんだ。これからもテニスを続けるし、出来る限り長い現役生活を送りたいと願っている。」
「今のプレーを続けられたら、あと少しはグランドスラムでの優勝のチャンスがあると思うからね。」と語るジョコビッチは、この優勝で今シーズンを世界ランク1位で終わることを決めた。それは自身4度目のこととなる。
日曜日の夜に行われた男子シングルス決勝戦でジョコビッチのプレーを観戦していた
M・ビランデル(スウェーデン)は、ジョコビッチはどのサーフェスでも戦える選手であり、どんなプレースタイルの選手にも対応でき、どんな相手でも倒すことが出来る選手であると称賛していた。
フェデラーも同じような評価をしていた。
「彼(ジョコビッチ)は本当に安定している。彼と対等に渡り合える選手はそう多くはないだろう。ハードコートでは彼のプレーはほぼ完璧さ。それは疑う余地もない。そしてクレーコートでも素晴らしい選手。彼のフットワークの良さから、芝でも堅実で安定したプレーを見せている。それは見事としか言い表せない。」とフェデラーはジョコビッチを褒め称えていた。
ジョコビッチは、1968年にオープン化して以来、2004・2006・2007年のフェデラーに加えて、年間グランドスラムを達成した1969年のレーバーに次ぐ同一シーズンの全てのグランドスラムで決勝進出を果たした選手となった。
今季行われたグランドスラムでのジョコビッチの成績は27勝1敗となった。その唯一の敗戦は、全仏オープンの決勝戦で
S・ワウリンカ(スイス)に屈したもの。
「全ての物事にはそれなりの理由があると思っている。もし全仏オープンで優勝していたら、ウィンブルドンで優勝出来たか分からない。それ以前で満足してしまったかもしれない。」とジョコビッチ。
彼は
S・ウィリアムズ(アメリカ)の今大会の想いに注目していた。年間グランドスラムがかかった大会で、その偉業達成まであと2勝と迫っていたところでのまさかの敗戦だった。
未だ全仏オープンでのタイトルがないジョコビッチは「莫大なプレッシャーが彼女(セリーナ)にかかっていた。あの準決勝では、誰もがそれを感じていた。でもそれは、彼女も1人の人間だということを証明したし、テニス史上で女子テニス界を圧倒して支配していた選手の1人である彼女でさえそれが起きてしまったんだ。」と、セリーナの敗戦を分析していた。
そして「来年は違う話をしよう。全米オープン前に3つのグランドスラム優勝をポケットに入れながら。でも謙虚な姿勢を忘れてはならない。一歩一歩進む必要があるんだ。そしてそれがどこへ導いてくれるかは誰も分からない。」と密かに微笑みながら語っていた。
(STATS - AP)
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