テニスのグランドスラムである全米オープン(アメリカ/ニューヨーク、ハード)は11日、女子シングルス準決勝が行われ、第1シードの
S・ウィリアムズ(アメリカ)がノーシードから勝ち上がった
R・ビンチ(イタリア)に6-2, 4-6, 4-6の逆転で敗退する波乱に見舞われた。
>>全米オープン対戦表<<セリーナは今大会、今季のグランドスラム全てで優勝を果たす年間グランドスラム達成がかかっていたが、その偉業達成を地元アメリカの地で絶たれることとなった。しかも、今大会で唯一ノーシードで勝ち上がってきたビンチによって阻まれた。
この日、1セットオールで迎えた第3セット、対戦相手のビンチは失うものは何もないと悟っていたかのようだった。それとは逆に、セリーナは負けられないという思いがこみ上げていた。そして、その思いがプレーにも表れていた。
第3セットのゲームカウント3ー3とした時、セリーナはダブルフォルトを2度も犯してしまった。今大会最速となる198キロのサービスエースを叩きだしてデュースへ持ち込むも、その後2ポイント連続でミスを重ねた。この試合、セリーナはトータルで40本ものイージーミスを犯していた。
マッチポイントでは、ラリーの末にビンチのハーフボレーがセリーナには届かないコートへと落ちた。その瞬間、セリーナの年間グランドスラムの夢が絶たれ、勝利の女神はセリーナに微笑まなかった。
27年ぶりとなる年間グランドスラム達成の決定的な瞬間まであと少しと迫っていたセリーナ。その瞬間を共有しようとセンターコートのアーサー・アッシュ・スタジアムに訪れて待ちわびていた観客も、この日のセリーナの敗戦を想像する者はいなかった。
スポーツ・テレビ局のESPNで解説を勤めていたグランドスラムで18度の優勝経験を持つ
C・エバート(アメリカ)も「ただ、ただ、信じられない。」と、皆の気持ちを代弁する言葉を発していた。
もしこれが、これまでも苦しめられたトップ選手からの敗戦なら、もしかしたらもっと簡単に受け入れられたかもしれない。しかし、32歳のビンチは今大会ノーシードで勝ち上がっており、おまけにグランドスラムの準決勝の舞台も初めてだった。
「みんなに言ってきたけど、プレッシャーなんてない。プレッシャーなど、感じたことがないの。」と、どんな状況からも勝利をものにしてきたセリーナは語っていたが、この日のプレーはそうではなかった。
試合が進むにつれて、彼女の足はどんどん重くなっていった。軽快なフットワークは影を潜めると、正しいポジションでショットを打つことにも苦しんでいた。
全てが終わった時、セリーナは自分の気持ちを表すムードでもなかった。
「どれほどがっかりしているかを語りたくはない。それ以外の質問があれば、それには応えるわ。」と試合後の記者会見で話したが、その会見はわずか3分で終わってしまった。
自身のテニス人生でも、最も衝撃的な敗戦とも言えるこの試合から立ち直るには、セリーナにとってどれほどの時間がかかるだろうか。オープン化以降、グランドスラム最多優勝数となる22度の優勝を誇る
S・グラフ(ドイツ)の記録まであと1つと迫っているセリーナ。その目標が、セリーナを奮い立たせてくれる魅力的なものの1つになるだろう。
セリーナのこの日の敗戦は、彼女の驚くような功績に何も傷を付けることはない。現役生活でこれほど終盤にきてから、このような活躍を見せるアスリートはほとんどいない。テニスでは確実にいないだろう。
セリーナが初めてグランドスラムで優勝したのは、18歳になる直前の1999年の全米オープンだった。それから16年後、今年7月のウィンブルドンで、自身21度目の四大大会優勝を手にしていた。これは、昨年の全米オープンからグランドスラム4大会連続の優勝だった。
この連続優勝のことは“セリーナ・スラム”と呼ばれているが、年間グランドスラムではない。
「ウィンブルドンで優勝できたのは、本当に嬉しかった。今年の3回のグランドスラムで優勝している。去年からは4大会連続でね。それはとても素晴らしいこと。とても前向きに思えることよ。」と、セリーナは笑顔を作るように努めていた。
そう語るとすぐに席を立ち、会見の場を立ち去った。その場にいた記者達は、セリーナの気持ちを痛いほど感じていた。
(STATS - AP)
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