2019年シーズン最後のグランドスラム、全米オープン(アメリカ/ニューヨーク、ハード、グランドスラム)が、現地8月26日に開幕する。大会を前に日本テニス協会強化副本部長でWOWOWテニス解説者の
松岡修造氏が、活躍が期待される
錦織圭、
大坂なおみを中心に、大会の見どころについて語った。
まず男子シングルスには、今季の全豪オープン(オーストラリア/メルボルン、ハード、グランドスラム)とウィンブルドン(イギリス/ロンドン、芝、グランドスラム)の2つのグランドスラムを制した
N・ジョコビッチ(セルビア)、全仏オープン(フランス/パリ、レッドクレー、グランドスラム)で12度目の優勝を果たした
R・ナダル(スペイン)が顔を揃えるほか、38歳にして現在も世界ランクでトップ3を維持する
R・フェデラー(スイス)も出場。全仏オープン準優勝の
D・ティーム(オーストリア)、昨年の最終戦 Nitto ATPファイナルズ(イギリス/ロンドン、室内ハード)で優勝した若手の筆頭といえる
A・ズベレフ(ドイツ)や強烈なフォアハンドを武器にする
S・チチパス(ギリシャ)らも、初のグランドスラム優勝を狙っている。
しかし、最も注目すべきは錦織圭だろう。昨年のウィンブルドン以来、グランドスラムでは5大会連続でベスト8入りを果たし、抜群の安定感を誇っている。そして、今回の全米オープンでは念願のグランドスラム初優勝を虎視眈々と狙っている。
松岡修造氏
松岡氏も「今季はものすごく安定感があります。現在(8月13日時点)ランキング5位にいるということは称賛されるべきだと思います」と今季の錦織の調子の良さを感じている。
一方で、「安定感はあるけど、ビッグネームに当たると勝てないというイメージを持っている人も多いと思います。また、錦織選手の中にもそういった思いがあるのではないでしょうか。『ベスト8までは入れるが、ジョコビッチ、ナダル、フェデラーというビッグ3には勝てない』と自分で想像してしまうのです。その想像を打ち消すことが、さらに上に行くには必要です」と松岡氏は語る。
錦織にとっては、全米オープンは相性のいい大会である。2014年にはジョコビッチらを破り準優勝。2016年も
A・マレー(イギリス)を退けて4強入りを果たした。そして昨年も準々決勝で宿敵
M・チリッチ(クロアチア)を破りベスト4入りした。しかし、優勝を狙うにはこのビッグ3を倒す必要がある。
松岡氏は「ビック3に勝つには、まずは相手が100パーセントでないことです。トップ選手でも常に100でプレーすることはありません。ただ、錦織選手のほうは100に近い状態で臨むことが必要です。例えば、ウィンブルドンのフェデラー戦の第1セットは100でした。その状態をいかに維持するかが重要になります」と、まずは自身のコンディションを上げることの必要性を強調する。さらに「その100に近い状態を出す条件は、まずは体力、2番目が集中力。そして 3番目が自分はできると信じること。この3つがすべて揃わないと、1人に勝つことはできても、2人は無理だと思います。優勝するにはやはりこの100パーセントの状態が欠かせません」と語る。
しかし、そのビッグ3も今が最も脂が乗っていると松岡氏は言う。「ビッグ3はさらに進化しているのです。錦織選手と対戦したウィンブルドンのフェデラーは、間違いなく全盛期よりもうまくなっています。ジョコビッチはより攻撃的になり、ナダルもネットプレーをするようになりました。しかも、ビッグ3はみんなよく走る。これは人間を超えていますね。とにかく彼らは今が一番いいテニスをしているのです」
一方で、若手選手に対して松岡氏は「本来であれば、ティーム、ズベレフなどがすでに世界一になっていなければいけない。ティームはコーチが代わってプレーに安定感が出てきたし攻めもバラエティ豊かになっている。ズベレフもパワーがあるし脚力も強い。しかし彼らはビッグ3にはなかなか勝てない。もっと自信を持って、主導権を持ったテニスをしてほしい」と語っている。
女子シングルスでは、何と言っても昨年の全米オープンで日本人プレーヤーとして初のグランドスラムを制し、さらに1月の全豪オープンも優勝した大坂なおみに大きな注目が集まる。しかし、グランドスラム2大会連続制覇をいう偉業を成し遂げた彼女も、今季の中盤以降は思ったようなプレーができていないように見える。松岡氏もそんな彼女を心配する。
「全米、全豪で優勝したときに比べて、テニスの質、レベルは相当落ちていると思います。特に走らされたときに我慢できなくなっています。その原因はやはりメンタル面です。コーチが代わり、周りの環境も代わり、マスコミから追いかけられる立場になった。人生で一番辛い時期だったと思います。なので、プレーしていても、大坂選手からは心の底から燃えるものをなかなか感じ取れません」
しかし、昨年、全米オープンでの大坂選手の優勝の確率を「ゼロか100か」と占った松岡氏は、今年もやはり「もしかしたら 1回戦負けもあるかもしれません。一方で優勝もあるかもしれません」と再び大胆に予想する。
「それは大坂なおみというのは特別な選手だからです。ほかの誰よりもパワーを持っていて、はまったときは本当に強いです。彼女に今言いたいのは、小さく収まるなということです。彼女の良さは粗削りなところ。そんな彼女からとてつもなくすごいショットが生まれるのです。吉と出るか凶と出るかは分かりませんが、今はそれでいいと思います。とにかくもっと大胆さを出してほしいですね」
今シーズンのグランドスラムは、全豪は大坂なおみ、全仏は
A・バーティ(オーストラリア)が、そしてウィンブルドンは
S・ハレプ(ルーマニア)が制した。松岡氏は今の女子のテニス界を「誰が勝ってもおかしくはない混戦状態」と分析している。「誰でもシンデレラになれる状況です。ですから、見ているほうはとても面白いのです」
そんな中で松岡氏は2人の注目選手を挙げた。1人は
S・ウィリアムズ(アメリカ)だ。「セリーナは、昨年の借りを返すために優勝しか狙っていません。彼女はメンタルが全然違う。そして37歳になった彼女のプレーは世界中に勇気を与えています」
もう 1人は 15歳のアメリカ人選手、
C・ガウフ(アメリカ)(アメリカ)だ。彼女は今年のウィンブルドンの 1回戦で
V・ウィリアムズ(アメリカ)を破り4回戦まで進んだ。「メンタルのタフさがすごい。きっとセリーナのようになる」と太鼓判を押している。
全米オープンは、グランドスラムの中でもエンターテインメント性の高い大会として知られている。センターコートのアーサー・アッシュ・スタジアムは観客約2万 3000人が収容できる世界最大級のテニス専用競技場。また、2018年からはルイ・アームストロング・スタジアムでもナイトセッションが行われるようになった。スタジアムでは、大音量のBGMが流れ華やかにショーアップされる。まさに “テニスのお祭り”と言える大会だ。
「会場から出てくるエンターテインメントのエネルギーをどうやって自分に注入するか。それが活躍できるかどうかのポイントでもあります。昨年の大坂選手は、それを注入したのです」と松岡氏は語る。
日本人選手は錦織と大坂のほかに、
西岡良仁、
土居美咲が本選出場予定。また、ダブルスには
マクラクラン勉、
青山修子、
二宮真琴、車いすシングルスでは
国枝慎吾と
上地結衣も出場を予定している。
果たして錦織選手の悲願のグランドスラム初制覇なるか、また大坂選手は連覇を達成できるのか。今季最後のグランドスラムの行方を、期待を込めて見守りたい。
◆◆◆ WOWOW 番組情報 ◆◆◆
「全米オープンテニス」
【放送日】8月26日(月)~9月9日(月)連日独占生中継
WOWOWプライム、WOWOWライブ
※第1日無料放送
■詳細・配信スケジュールはこちら> 〈関連番組〉
「週刊テニス NAVI 全米オープンテニス2019開幕直前スペシャル」
【放送日】8月26日(月)夜11:00
WOWOWライブ
※無料放送
「パラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM 車いすテニス 日本女子のエース:上地結衣」
【放送日】 8月31日(土)午前10:00
WOWOWプライム