世界アンチ・ドーピング機構(WADA)のD・パウンド元会長は9日、女子テニスで世界ランク7位の
M・シャラポワ(ロシア)がメルドニウムを摂取したことに対し「未必の故意」として有罪であるとした。
今年1月の全豪オープン期間中に受けた尿検査でメルドニウムの陽性反応が出たシャラポワは、最長4年間の出場停止処分に直面する可能性をパウンド元会長は示唆していた。
ラトビアで心臓疾患の治療薬として製造されているメルドニウムは、アスリート達の間で広く服用されており、今年の1月1日からWADAの禁止薬物のリストに追加されていた。
7日に行われた記者会見で陽性反応の事実を公にしたシャラポワは様々な健康面の問題のため、このメルドニウムを10年間に渡って服用していたと語っている。5度のグランドスラム優勝を誇り、世界で最も収入の高い女性アスリートのシャラポワは、今年からメルドニウムが禁止薬物に指定された事実に気付かず、今回のことは全て自分に責任があるとも語っていた。
「あそこまでのレベルのアスリートはテストがあることを認識すべきだし、自身が服用している薬がリストにないか確認すべきでもある。そしてそれを見逃してしまったのは未必の故意だった。」と語るのはパウンド元会長。
「収集した情報では、彼女(シャラポワ)は事前に注意されていた。WADAからも出版物が公にされていたが、彼女はそれに注意を払わなかった。テニス協会からも幾つかの警告が出されていたが、明らかに読んでいなかった。」
WADAのC・リーディ会長は、なぜシャラポワにメルドニウムが処方されたのかに疑問を持っている。
「もしこのレポートが本当で、彼女が10代の時から起きていたのなら、基本的に心臓疾患のための薬がなぜ処方されたのか疑問に思ってしまう。」とリーディ会長。
国際テニス関係者は多くの薬の服用をモニターし、どの薬を禁止薬物リストに追加するかをWADA委員会へ勧告すると同時に、メルドニウムの使用を警告していたと、パウンド元会長は話す。
「少なくともテニス界の中では多くの選手がこのメルドニウムを使用しているのは知っていたはず。だからWADAのリスト委員会に問い合わせていたはず。」とパウンド元会長は述べていた。
今のところテニス選手でメルドニウムの陽性反応が出たのはシャラポワだけとなっている。
全米食品医薬品局で認可されていないメルドニウムは酸素の吸収を高め、持続性も高めるため、WADAは禁止薬物へ指定していた。他の国際的なスポーツでも、1月1日以降数名のアスリートがこのメルドニウムの陽性反応が出ている。
9日に発表されたブリティッシュ・ジャーナルのスポーツ医学部の研究結果では、昨年アゼルバイジャンのバクーで開催されたヨーロッパ選手権では490名ものアスリートがメルドニウムの使用の可能性が分かっている。その時はまだメルドニウムは禁止薬物に指定していなかった。
その研究結果では、13名の優勝者やメダリストがメルドニウムを使用し、その他66名がメルドニウムの反応が出た。21競技中15競技のアスリートからメルドニウムが検出されていた。この調査結果もWADAがメルドニウムを禁止薬物に指定する決断を下す一因となった。
シャラポワは国際テニス連盟(ITF)から暫定的に出場を禁止されており、ITFはこの事案への公聴会を開き、更に長期に渡る処分を下すか決める。
パウンド元会長は「彼女は最長4年間の出場停止処分になる可能性がある。軽減要素がないか、大きな妨げはないかを検証しなければならない。」と状況を説明していた。
同時にパウンド元会長は、シャラポワがなぜここまで長期に渡りメルドニウムを服用していたのか分からないとも語っていた。
シャラポワは7日の会見で、慢性疾患や糖尿病の初期症状や心電図の不整脈などの幾つかの健康面の問題のためにこの10年間メルドニウムを服用していたと話す。
「更なる事実があるはずだし、隠された事実があるはずだ。」ともパウンド元会長は加えていた。
メルドニウムを製造しているラトビアのグリンデクス社は、メルドニウムが治療薬として処方されるのは通常4週間から6週間だとしている。
「対処しなければならない問題の1つは、治療目的としての服用が長年に渡るものではないということ。1つの治療ケースとしての使用は数週間か、もしかすると数カ月であり、10年も継続して服用することはないはず。」とパウンド元会長は疑問視。
シャラポワの顧問弁護士であるJ・ハガーティ弁護士は8日に「マリア(シャラポワ)が10年間、毎日のようにメルドニウムを服用していたかのような解釈となる誤解を解きたい。」と語り「単にそのようなケースではない。」と弁護していた。
(STATS - AP)
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