テニスのグランドスラムである全米オープン(アメリカ/ニューヨーク、ハード)は8日に行われる男子シングルス決勝で、第10シードの
錦織圭(日本)は第14シードの
M・チリッチ(クロアチア)と対戦する。両者はいずれもこれが初のグランドスラムの決勝進出となる。
現在世界ランク11位の錦織と同ランク16位のチリッチ。トップ10以外の選手同士の決勝戦を誰が予想出来ただろうか。
現在チリッチのコーチをしている2001年のウィンブルドン覇者である
G・イバニセビッチ(クロアチア)は「大会が始まる前に錦織とチリッチの決勝戦になるだろうと誰かが言っていたとしたら、こいつは何を言っているんだと言う顔で見られていただろう。だが実際それが実現したんだ。」と語る。
これまでの9年半の間に行われた38回のグランドスラムで、
R・フェデラー(スイス)、
N・ジョコビッチ(セルビア)、
R・ナダル(スペイン)のいずれかが34回の優勝を飾って来た。
グランドスラム史上最多優勝の17回を誇るフェデラーを、準決勝でチリッチが6-3, 6-4, 6-4のストレートで下した。世界ランク1位で第1シードのジョコビッチは、同じく準決勝で錦織が6-4, 1-6, 7-6 (7-4), 6-3で破った。
残念ながら去年のチャンピオンであるナダルは右手首の怪我のために、今大会は欠場しているが、明らかに男子テニス界に変化の波が押し寄せている。
「そうさ、ちょっとした変化だね。」とチリッチ自身も実感しているようだった。
飛躍を遂げたチリッチは昨年、祖国クロアチアにおり当時チリッチはドーピング検査で禁止薬物が発見され出場停止処分を下されていた。
チリッチは2013年5月のドイツでの大会中に受けた検査で、禁止されている興奮剤の反応が出てしまった。そのため国際テニス連盟から9ヶ月の出場停止処分を下された。しかしチリッチは、薬局で購入したブドウ糖のタブレットにその興奮剤が入っていただけで、故意に摂取したのではないと反ドーピング機構に訴え4ヶ月へと処分が軽減されていた。
《チリッチ 出場停止の記事はこちら》「正義は必ずあるんだ。空の上の誰かはちゃんと見ているのさ。彼(チリッチ)は全くの無実だった。ただ座っていただけで、何もやっていなかった。」とコーチであるイバニセビッチがチリッチの正当性を信じていた。
2013年11月からツアー復帰し、2014年から同国のイバニセビッチをコーチに迎えると2月に行われたPBZザグレブ・インドア、デルレイビーチ国際テニス選手権と続けて優勝、ウィンブルドンでN・ジョコビッチに敗れるもフルセットまでもつれる接戦を演じ、全米オープンで初の決勝まで進んだ。
チリッチの前に完敗したフェデラーは試合後、こうした処分を受けた選手に敗退した事を問われ「それは全く関係ない。自分は彼が何も悪い事をしていないと本当に信じている。彼は不注意な行動を取ってしまったのかも知れない。でも彼の事を良く知っているつもりさ。詳しい状況はあまり覚えていないが、彼にはとても同情しているだけさ。」とフェデラーは気持ちを語っていた。
トップ10選手以外の決勝戦は2002年の全仏オープン以来の事。ここ全米オープンでは1999年に
P・ラフター(オーストラリア)が
G・ルゼッドスキ(英国)を下して優勝した対戦以来の事となる。
「今回の決勝戦はとても複雑な物になるだろう。お互い初めての決戦の舞台だから、どちらも緊張するなは必至。だがいずれが勝っても世界の頂点に立つんだ。頂上決戦は月曜日だ。」とイバニセビッチも興奮を押さえられずにいる。
錦織とチリッチの決勝は日本時間9日、午前6時(現地時間8日午後5時)から行われる。
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