男子プロテニス協会のATPは11日、元世界ランク3位の
D・ティーム(オーストリア)が今年のアーサー・アッシュ・人道貢献賞を受賞したと発表した。同公式サイトには受賞を受けてティームの手記が公開されている。
>>【総選挙!みんなで選ぼう!思い出の試合】ランキング一覧はこちら<<>>テニス365運営メンバー募集中<<ティームは今年10月、母国オーストリアで行われたエルステ・バンク・オープン(オーストリア/ウィーン、室内ハード、ATP500)で現役を引退。ツアー通算17勝をあげており、2020年には全米オープン(アメリカ/ニューヨーク、ハード、グランドスラム)も制覇。世界ランキングでは最高3位を記録している。
今回受賞したアーサー・アッシュ・人道貢献賞は、自身が設立した会社や財団を通じ環境・子どもの成長などに貢献している選手たちに与えられる賞で、昨年は
F・オジェ アリアシム(カナダ)が受賞した。
ティームは「2024年のアーサー・アッシュ人道貢献賞を受賞することになったと聞いたとき、過去にこの栄誉を手にしたチャンピオンたちのリストを見返した。その名前の一つ一つが、僕にとって大きな影響を与える存在だ」と語っている。
ATPに寄稿したティームの手記全文は以下の通り。
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アーサー・アッシュ、アンドレ・アガシ、ロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダル、ノヴァーク・ジョコビッチ。これらはほんの一部の名前に過ぎない。彼らは皆、素晴らしい業績を残し、世界中の多くの人々を助けるプロジェクトを作り上げてきた。そんな彼らと同じリストに自分の名前が挙がることを、とても誇りに思っている。
2020年、キャリア最大のタイトルとなる全米オープンを制したのも、アーサー・アッシュ・スタジアムだった。アーサー・アッシュという名前を聞くと、最初に思い浮かべるのは彼の人間性と、彼が世界中のコミュニティに与えた、そして今も与え続ける大きな影響だ。
アーサーのような人々に影響を受けて、自分も自分なりの方法で社会に恩返しをしていきたいと考えている。先日、エルステ・バンク・オープンでキャリア最後の試合を終えた。31歳というのは、今のテニス界ではまだ若い引退と言えるかもしれない。それでも、自分にとって長年の夢は、スポーツを離れて全く別の分野に挑むことだった。
だからこそ、持続可能性というテーマに情熱を注ぎ、それを広めるための活動をしていけることに大きな意義を感じている。次のステージで挑むのは、より良い社会を目指すための「最も重要な試合」だ。
振り返ると、持続可能性という考え方はずっと身近にあったように思う。母のカリンは長年ベジタリアンだったし、庭で鶏を飼ったり、3~4匹の豚をペットとして一緒に暮らしていた。それが家族にとって当たり前の環境だったんだ。ただ、その大切さを本当に実感するには時間がかかった。プロキャリアをスタートしてずいぶん経ったある日、SNSを見ていたら、動物がプラスチックに絡まっている写真が目に入った。記事を読んでみると、それが自分にとって人生を変える瞬間になった。プラスチックがどのようにして私たちの体に取り込まれ、海を汚染しているかということを知り、その現実が深く心に刻まれた。
年齢を重ねるにつれ、次の世代やこれから生まれてくる人たちへの思いが強くなっていった。テニスコートで世界中の子どもたちと触れ合う機会に恵まれてきた。彼らは本当に楽しそうにプレーしていて、このスポーツを大切に思っている。でも、もし今の状況が続いてしまえば、外的な環境が変わりすぎて、子どもたちが情熱を追い求めることが難しくなるかもしれない。それに気づいた時、大きな衝撃を受けた。
2016年、キャリア初のハードコートタイトルを獲得したアビエルト・メキシカーノ・テルセル・HSBCは、その象徴的な場所の一つだ。アカプルコでの大会は素晴らしい記憶だ。美しい緑のビーチが広がり、コートも素晴らしかった。でも新しい会場が建設された後、アカプルコは2度もハリケーンに襲われ、市街地が水没した。地元の人々にとっても、アカプルコを愛する僕たちにとっても、本当に悲しい出来事だった。
もうどこか遠くの話ではない。多くの人にとって、こうした悲劇はすぐ近所で起きている。それを目の当たりにして、いろいろなことを考えさせられたし、皆も同じように感じてほしいと思う。
テニス選手、そしてアスリート全般が、自分たちの影響力を活かしてファンに良い影響を与えたり、環境保護に貢献したりすることは本当に重要なことだ。それは最終的に人類全体にも役立つ。
自分を応援してくれたすべての人に心から感謝している。キャリアが終わったことを悲しんでくれたファンもたくさんいた。だからこそ伝えたいのは、自分はまだここにいるし、新たな可能性を開こうとしていることだ。
すべてから離れて休むこともできたけど、今はリラックスしている場合じゃない。これらの課題は、それほど重要だ。この新しい人生のステージでも、ファンが応援を続けてくれたら本当に嬉しい。テニスキャリアは10月に終わったけど、今、自分にとって最も重要な試合が始まったばかりなんだ。
ドミニク・ティーム
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