8月25日から開幕する今季最後のグランドスラムを飾る全米オープンでは、
M・ラオニチ(カナダ)や
G・ディミトロフ(ブルガリア)など今季ここまで活躍を続けている若手が世代交代と言える優勝を果たすのではと話題を集めている。
23歳のラオニチとディミトロフは、7月に行われたウィンブルドンではいずれもベスト4入りを果たし、グランドスラムでの決勝の舞台まであと一歩まで迫っていた。その活躍などもあり、現在ラオニチは世界ランク6位、ディミトロフは8位と自己最高位にいる。
しかし、ウィンブルドン覇者のジョコビッチは「世界のトップに挑戦出来るような、そしてグランドスラムで優勝するような若い選手がこれまではあまりいなかった。だが今はそんな若手が現れてきているのは事実。それでもグランドスラムでタイトルを獲得するにはまだ道のりが長いと思う。一夜にして起こる出来事ではないんだ。」と、その難しさを語っていた。
今季最初のグランドスラムである全豪オープンでは、28歳の
S・ワウリンカ(スイス)が自身初となるグランドスラム優勝を飾り、ビッグ4と呼ばれるジョコビッチ、
R・フェデラー(スイス)、
R・ナダル(スペイン)、
A・マレー(英国)のいずれかがそれまでのグランドスラム16大会連続で優勝していたものの、新たなチャンピオンに名乗りを上げていた。
今年の全米オープンにエントリーしている選手で、ビッグ4以外で過去5年間にグランドスラムの決勝の舞台へ立ったのは32歳の
D・フェレール(スペイン)と28歳の
T・ベルディヒ(チェコ共和国)しかいない。
今回の全米オープン前の北米のハードコート・シーズンで目立った活躍を見せたのは29歳の
JW・ツォンガ(フランス)だった。ツォンガは今月始めに行われたトロントでのマスターズ1000大会で、ジョコビッチ、マレー、ディミトロフ、フェデラーを下して優勝を飾り、一躍全米オープンの優勝候補に名を連ねた。
テニスというスポーツが年々肉体的に激しいスポーツになっている事から、しっかりした体が作られる前の10代や20代前半でのビッグ・タイトルの獲得は難しくなって来ていると語るのは全米テニス協会の
P・マッケンロー(アメリカ)。
「肉体的にピークを迎えるのは、恐らくプロになって数年してからだと今は誰もが認識しているし、そう出来れば現役生活も長くなる。なぜなら今ではトレーニングに於いてかなり技術も発達しているし、より良いシステムも導入されているからだ。」
マレーが初めてグランドスラムで準決勝進出を果たした2008年の全米オープン以来、グランドスラムで96回の準決勝中63回がそのビッグ4で準決勝が争われた。そして2010年の全米オープンから2013年の全豪オープンまでは、ビッグ4以外でグランドスラムの決勝の舞台に立った選手はいなかった。
「しばらくの間、他の選手たちにとってはそれを打ち破る事がかなり難しい時期だったに違いない。」と、現在それを打ち破ろうとしているラオニチが語る。
「自分は我慢が出来ずにいた。すぐに結果を望んでしまっていたし、何かを達成したがっていた。今ではそんな事がすぐには起きないようなテニス界になっている事を忘れてはいない自分がいる。」と、ディミトロフもしっかり現実を把握している事を明かしていた。
2009年の全米オープンで、当時20歳の
J・M・デル=ポトロ(アルゼンチン)が決勝戦でフェデラーを下して優勝した時は、新しい世代の現れかと思われた。しかし現実では、現在25歳のデル=ポトロはその後、怪我に苦しみ今年の全米オープンも手首の怪我のために欠場を余儀なくされている。
今の世界ランキングのトップ10では、ラオニチとディミトロフの2人の23歳以外は27歳以下の選手は1人もいない。
その2人以外の20代半ばの選手で将来を期待されているのは、
錦織圭(日本)や
E・ガルビス(ラトビア)、そして
M・チリッチ(クロアチア)などがいるが、彼等はこれまで安定して高い成績を残せていない。
ジョコビッチとマレーは1987年生まれで誕生日も1週間違い。ナダルは彼等とは1歳も違わない同世代という事を考えると、この3人が世界のトップに君臨するのもしばらくは続くのかも知れない。
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