男子テニスで今季限りでの現役引退を表明している元世界ランク4位の錦織圭。tennis365.netは錦織の引退に伴い、関係者に取材を実施した。今回は男子で自己最高世界ランク24位の西岡良仁に話を聞いた。
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錦織よりも6つ年下の西岡は、錦織とともに近年の日本テニス界を牽引してきた。ツアー優勝は錦織が12回、西岡が3回。現在のところATPツアーで複数回シングルスタイトルを獲得している日本勢は、歴史上この2選手のみとなっている。
両者は2019年のW&Sオープン(アメリカ/シンシナティ、ハード、ATP1000)2回戦で1度顔を合わせており、このときは西岡が7-6 (7-2), 6-4のストレートで勝利した。
また、ダブルスではツアー大会で2度ペアを組んだ経験があるほか、国別対抗戦のデビスカップでは日本代表として長年ともに戦ってきた。
今回は錦織とともに日本テニス界のトップを走ってきた西岡にインタビューを行った。
Q. 錦織選手の引退を聞いた時、率直にどんな気持ちでしたか?
なんとなくするみたいなことは聞いていたので発表にすごく驚いたわけではないですが、やはり悲しい瞬間ではあるなと思っています。1つの軸みたいな人がいなくなるという瞬間だと思います。
錦織選手がプレーしていることによって刺激を与えてくれる瞬間も多々あって、最前線の情報を一番持っている人というふうに考えると現役世代にはたくさんプラスに働いたことがあったので、そこはすごく残念です。
もちろん誰にでもある瞬間なのでそれが悪いわけではなくて、僕らはすごく恩恵を受けた時代だったので、これからのジュニアたちにその恩恵が少しなくなってしまうなという思いもあります。
Q. 西岡選手から見て、錦織選手のプレーは何がすごいですか?
天才的な嗅覚です。プレーの中での相手の読みだったり、タッチセンスだったり、ゲーム勘みたいなところは独特でした。僕の持っているゲーム勘と錦織選手の持っているゲーム勘は違うところが大きくありますし、見えている部分も錦織選手の方が広かったりとか、できることの幅も広かったりというのを考えると、そういう日本人が持っていない特殊なゲーム勘みたいなところが最大の武器だったと思います。
そこに運動能力とか、テニスの感覚だったりというものが入ってきているんじゃないかなと思います。圭くんしか持っていない独特さが世界のトップになり得た要因だと思います。
Q. 錦織選手と初めて出会った時のことは覚えていますか?
14歳とかだった気がします。ちゃんとは覚えていないですけど、写真を撮ってもらって、その写真はまだ飾ってあります。
すごく覚えているのは「グランドスラムのセンターコートで戦うのはどんな気分ですか?」って聞いたら「慣れたら大丈夫」みたいなことを言っていました。
今思えば本当に圭君らしいなと思いますけど、当時はそこまで人柄を知らないので「慣れたら大丈夫なんだ」みたいな感じでした(笑)
でも実際に自分が立ってみると、慣れるほど(センターコートで試合を)できる人になることがすごいと感じました。慣れるようになっている時点でもうすごい人なので(笑)僕も何回か経験ありますけど自分の力では立てないので、慣れるだけできるということから錦織選手のいたレベルの高さを感じます。
Q. 錦織選手とはシンシナティで1度だけ対戦し勝利しましたが、当時はどんな心境でしたか?
単純に楽しかったです。練習試合もたくさんさせてもらった中で、本番の試合ができたということが良い経験でしたし、単純に楽しい経験の1つでした。
勝った負けたはもちろんあると思いますが、どちらかというと公式戦をできたということの方が嬉しかったです。他に対戦するチャンスがなかったのはすごく残念ではありましたけど、自分の上だと思うような人たちと練習ではなく本番で試合ができることがとても大切な経験なので、どちらかというと1つの思い出みたいな試合です。
Q. 錦織選手にアドバイスをもらったことはありますか?
もちろんあります。1つ面白かったことでいうと、錦織選手とダブルスに出場したときに、相手が強くて結構ボコボコにやられていたんですけど、相手のサービング・フォー・ザ・マッチになったときに圭君が「強いしブレークも難しいけど、攻めて負けるか」みたいなことを言いました。要は負けるにしてもアグレッシブにプレーして負けようということです。
たぶんシングルスでも常にそういうメンタリティだと思うんですよね。負けそうになったら攻めるって決めているんだなっていうのが、僕とは違うマインドだったので結構面白く感じました。
どうせ負けるならアグレッシブみたいに考えることが僕はあまりなくて、ワンチャンス作って負けるっていうのが良いなと思いました。自分の考えと違う考え方だったので、すごく勉強になった瞬間でした。
もう1つはタイブレークの勝ち方を教えてもらいました。それもすごく面白くて「タイブレークは絶対に攻めた方がいい。とりあえずアグレッシブにいって、自分で取りにいって取れなかったら仕方ないんだから取りにいった方がいい」って言われました。
錦織選手はタイブレークの勝率が高いですけど、僕も意外と高いんです。実際にそれですごく大事なタイブレークを取る瞬間も増えたので、こういうことかと思いました。
もちろん実際には取れる時と取れない時がありますが、少なくともそういう勝率が上がることを知っているというのが、トップにいた人なんだろうなと思います。
Q. 日本テニス界において西岡選手も歴史的な成績を残してこられましたが、それを上回る錦織選手とプレーする時代が同じだったことについてどう考えていますか?
たぶん同じ時代じゃなかったら僕はいないと思います。
錦織選手もたぶんフェデラー、ナダル、ジョコビッチがいたからあそこまで強くなっていると思います。ああいう人たちがいたから錦織選手は他の選手に負けないくらい強くなったわけじゃないですか。たぶん誰かしらそういう人がいるとめちゃくちゃ他も伸びると思うんですよね。実際にBIG4と言われた時代の選手層ってすごく厚いですし。
僕はそのレベルには達していないですけど、恩恵を受けている部分はあります。錦織選手を間近で見ることができたということも僕の中では大きかったと思っています。現役として学ぶことができたということが大きくて、引退後に学ぶことと現役の時に学べることには大きな差があると思います。
一緒に練習してもらえたり、本気で戦えたことが、僕を強くしてこれだけの結果を出せるようになった要因の1つになっていることは間違いないです。
錦織選手が仮にいなくて今のレベルに自分が到達していたとしたら、もちろん自分が一番だと思うし、いろんなことに恵まれていたと思います。でもたぶんそうはなれなかったと思いますし、この身長でここまで戦えなかったかもしれないので、僕にはプラスの方が多かったと思います。
Q. オフコートの錦織選手はどんな方ですか?
全然強そうじゃないです。だからいいんじゃないですかね(笑)
僕もそうですけど、オンオフをはっきりするってとても大切だと思っています。錦織選手は本当にみんなに優しいですし、一緒にゲームとかして後輩もすごく可愛がってくれています。
コート上は怖いかもしれないですけど、オフコートで喋りかけにくい先輩よりも、一緒にご飯行きましょうって誘えるような人の方が良いと思っています。そういう人だったことがすごく信頼されていることに繋がっている気がします。
テニスコートとは全く別物で、そういうところがいいんじゃないかなと思います。
Q. オフコートで印象的なエピソードはありますか?
よくホテルとかで一緒にゲームしたりしましたね。特にスプラトゥーンっていうゲームをめちゃめちゃやっていた時、圭君は(遠征に)モニターを持ち歩いていました。当時は本当にずっとやっていて本当に好きなんだなって思いました。モニターはマジでびっくりしました(笑)
そこは少し、いわゆる変わっているにたぶん入りますね(笑)あんな重いものをよく持ち歩くなって思いました。そこもまた人とは違う感性の持ち主だったなと思います。
Q. 最後に、錦織選手を一言で表すと?
(松岡)修造さんが日本にテニスを広めた人だとしたら、錦織選手は日本のテニスを強くした人だと思います。
1人がすごく強くなれば、相対的に全体のレベルが上がるみたいな法則があると思うんですけど、まさしくそれだと思っています。
トップが出てきたことによって、相対的に全体のレベルは間違いなく上がったので、そこを作り上げた人だと考えると、錦織選手が間接的に日本のテニス界を強くして、レベルを上げた人だと思います。
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