「何の会社?」から世界へ! B2B高機能材料メーカー日東電工がテニス界を支え続ける真意

©Corinne Dubreuil/ATP Tour
Nitto ATPファイナルズ
画像提供:©Corinne Dubreuil/ATP Tour

テニスファンならおなじみのATPツアー最終戦「Nitto ATPファイナルズ」。タイトルパートナーを務めるNittoこと日東電工株式会社だが、「名前は聞いたことがあっても事業までは?」という人が多いのではないか。なぜ、同社はテニスを支え続けるのか。その真意を同社に直撃した。

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■新規領域への「ドアノックの壁」を打ち破るブランディング

2017年5月25日、テニス界にビッグニュースが舞い込んだ。男子テニスのシングルス、およびダブルスから選抜された8選手が、シーズン最終戦のタイトルを競い合う世界最大のインドアテニストーナメント「ATPツアー・ファイナルズ」の新タイトルパートナーとして、Nittoが契約を締結したことが発表されたのだ。

日本企業としては初。それまで大阪国際女子マラソンのスポンサー契約をしていた同社だが、日本を飛び出しての戦略に注目が集まるのも当然だった。

経営・ESG戦略本部 ブランドコミュニケーション部 広報グループの川端里奈さんが当時のことを語る。

「ファイナルズのスポンサーシップに乗り出した最大の理由は、弊社がターゲットとするビジネス層・意思決定層の属性と、テニスのファン層が高く一致していた点にありました」


(写真)左から藤田直子さん、川端里奈さん


1918年の創立以来、100年以上にわたり「チャレンジ」を掲げて成長を重ねてきた同社。スマートフォンを開けば、その中に同社の技術が息づいている。データセンターの高速通信を支える部材や半導体材料、さらには最先端の核酸医薬分野に至るまで、目に見えない場所であらゆる生活シーンを支えている。

「何の会社なのか一言で説明するのが難しい」(経営・ESG戦略本部 ブランドコミュニケーション部長の藤田直子さん)と語るほど事業領域が多角化していく中で、海外売上比率も拡大していく。その一方で半導体やデータセンター、ヘルスケアといった新たな領域へ進出する際、同社は常に「ドアノックのハードル(認知度の壁)」に直面してきた。どれほど優れた技術や製品を有していても、相手を知らなければ扉は開かない。

特にBtoB企業が、スポーツ協賛を通じてグローバル市場での認知度向上を図るのはポピュラーな話。そして、Nittoはグローバルで影響力を持つテニスというプラットフォームを通じて、ブランド認知の底上げを図る決断をした。同社の事業ポートフォリオ転換を裏から支える戦略的投資だったのだ。



(写真)上が「バッテリー固定用 電気剝離テープ」、下が「半導体関連製品」


■持続可能な社会への貢献と国内ステークホルダーとの関係深化

2017年の契約から、今年が10年目。

「実際、開催地のイタリア・トリノの皆さんや社員からは、ATPファイナルズのNittoとしての認知が確実に広がっているという声が届いています。大会会場でのホスピタリティプログラムを通じ、顧客や取引先との関係構築(エンゲージメント向上)においても大きな成果を上げています」(川端さん)

同社が推し進める「ESG経営」は、スポーツ協賛の現場でも色濃く体現されている。開催地トリノでは、自治体やテニス連盟と連携してトリノ市のCO2排出量削減に2023年から取り組んでいる。会場に設置したグリーンウォール(壁面緑化)を、大会終了後に地元の小学校へ寄贈するなど、地域に根差した活動を推進。さらにロンドン開催時代から、病気と戦う子どもたちとその家族を試合観戦やエスコートキッズに招待し、未来を担う子どもたちの希望と挑戦を支援し続けている。


(写真)社会貢献の様子


単なるロゴ露出の広告にとどまらず、社会課題解決と企業成長の両立を目指す姿勢こそが、同社の目指すグローバルブランドの姿だが、2025年11月、タイトルパートナーの2030年まで5年間延長を発表。さらに認知度のアップを図る構えだが、同時に発表されたのが「木下グループジャパンオープン」とも2026年から複数年のオフィシャルパートナー契約を締結したことだった。

「ATPファイナルズとともに海外でのブランディング推進をいっそう強固にするとともに、日本国内でのステークホルダーとの関係性深化も深めていくのが狙いです。ジャパンオープンの契約も2030年までですので、長期的視野の戦略となりますね。海外で高まりつつある認知度を国内の顧客や従業員、採用活動へと還元し、自社のアスレチックテープなどの製品販売を通じても挑戦するアスリートを身近から支えていきます」(川端さん)

■全社から集まる20名のプロジェクト「人がブランドを伝える」

実は、ATPファイナルズへの協賛がもたらした成果は、認知度のアップにとどまらない。その一つが「大きな成果が出ています」(藤田さん)という「社内の一体感醸成(インナーコミュニケーション)」だ。

同社では毎年、営業や開発、工場など、部署や拠点を越えて公募等により約20名の「ATPファイナルズ」プロジェクトメンバーを選抜している。選ばれたメンバーは部署の垣根を越えて協賛活動に直接携わり、現地での体験や施策を通じて自社への誇りとエンゲージメントを高めている。

この全社巻き込み型のプロジェクトスタイルは、かつて13年間にわたり協賛した「大阪国際女子マラソン」時代から受け継がれてきた同社の成功パターンでもある。普段の業務では関わらない他部署の視点や全社的な視野を学ぶ成長の場としても機能しており、「最終的には人がブランドを伝える」という同社の姿勢を象徴するオープンでフラットな社風がそこにはある。

いかがだっただろうか。企業である以上、営利を追求するためにスポーツを手段として用いるのは当然だが、「ATPファイナルズ」の契約延長、そして「木下グループジャパンオープン」の新契約を見る限り、テニスとともに歩みを進めていこうという思いがうかがえる。スマートフォンから最新医療、そして持続可能な社会の実現まで。あらゆる生活シーンを支える影の主役が、テニス界でもまた土台に寄与しようとしている。


(写真)全社プロジェクトメンバーの活動の1枚



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