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MARAT SAFIN

Vol.2 エースも取れるスピン系フラットサーブが武器

強烈なリストワークが特徴的

サフィンも、ロディックに次いで、狙ってエースを取れるだけのサーブ力を持っている選手だ。そのサーブの特徴は、インパクト前後でのラケットの返しが非常に強烈だということで、それが鋭いヘッド・スピードを生み出している。身体能力もかなり高いが、身体のほうはあまり無理せず、軸をしっかり保っているという印象が強い。
組み立ては、後のショットのことまで考えているわけではなく、できれば全部エースがほしいというタイプだ。以前よりも我慢強さは出てきたが、プレイ全般での戦略性はあまりなく、よく言えば本能でプレイしている天才肌のタイプだが、ややムラっ気が多いのが彼の弱点と言える。ただ、セカンドサーブもかなり強力で、主導権を握れる(厳しいリターンをされる確率は低い)ので、ファーストで思いきって勝負にいける面があり、調子が良いとブレイクするのはかなりむずかしくなる。
サフィンの横から見たフラットサーブ
サフィンのサーブの特徴は、身体を斜めに傾けながらも軸をしっかり保って、腕を大きく振り抜き、プロネーションも強く利かせてボールを思い切り叩いている点だ。ジャンプは低く、身体や腕が伸びきっていない分、内旋や回内を強く利かせる余裕がある。またインパクトを横から見て、足からラケットヘッドまで一直線になっている点も見事だ。

同じトスからスピンもフラットも打てる

もうひとつの技術的な特徴は、トスの位置やスウィングが完全にスピン系で、その形からリストワークの変化でフラットやスライスを打ち分けているという点。プロの場合、相手に球種やコースを読まれないということも重要なので、すべてのサーブをできるだけ同じトス、同じフォームで打ち分けたい。逆に、球種によってトスや手首の角度を変えるのは、安定させることがむずかしいため、確率という意味でも、トスを変えないことが大切になる。そのため、サフィン以外にも、スピンサーブの回転を落とした形でファーストを打つ選手が多いが、サフィンの場合は、その中でも回転量の差が大きく(ファーストがかなりフラット)、攻撃力が高い。

フラットサーブでのリストワーク
元々スピンサーブに向いた形から(写真上参照)、トスの位置を変えることもなく、フラットな面を鋭く返して強引にフラットサーブを打った動き。インパクト手前の面が少し開いている点が、スピンと大きく異なる部分だ。

スピンサーブでのリストワーク
サフィンは、どのサーブでもラケットのコックが強く(腕とラケットに角度がついていて)、インパクトでラケットが斜めに傾く。そのため、このようにラケットを横に回すようなリストワークで、強烈なスピンサーブを打つことができる。

スライスサーブでのリストワーク
サフィンのように、手首をコックしているタイプは、通常スライスサーブは打ちにくいが、ここではインパクトの面を左方向に傾けることで、うまくスライス回転をかけている。リストの返し方は、フラットとほぼ共通だ。

サフィンのデュースサイドからのフラットサーブ
これは、デュースサイドからセンターにエースを狙った場面。本来ならフラットサーブを打つには、打点(トス)が少し左すぎる(スピン系の打点で身体も傾いている)が、それを身体能力とリストワークでカバーして、エースが狙えるフラットにしている。ただ、フラットのことだけ考えれば、もっと打点を右にして高くとれば、さらに速いサーブが打てるはずだ。
サフィンのデュースサイドからのスピンサーブ
こちらは、上と同じ位置から同じコースにスピンサーブを打った場面。上と比べて打点や身体の傾きに違いはないが、元々スピンサーブに適したフォームであり、リストワークも完璧なため、バウンド後にボールが強くキックする、いわゆる「キックサーブ」になっているはずだ。また、インパクトに顔を残している(12)ことも、スピンサーブを打ちやすくするポイントと言える。

(テニスジャーナル 2004年8月号)
© SKI Journal Publisher Inc.

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