ROGER FEDERER |
Vol.5 強さと柔らかなタッチが両立した現役最高のボレーヤー |
繊細なボールタッチのセンスは当然ボレーにも生きる |
フェデラーは、今、現役最高のボレーヤーと言える選手だ。彼のボレーの特徴は、リストが強く、ラケットの支えが非常にしっかりしているが、だからといってガチガチな印象はなく、柔らかさも備えているという点だ。「ゴッドハンド」と呼ばれるほどのボールタッチの良さは、当然ボレーでも生きており、しっかり打つこともできるし、繊細なタッチで微妙なコントロールもできる「強さと柔らかさ」を両立させている点が最大の特徴と言える。 それは、グリップが良いこと(ポイント参照)にも関係しているので、ぜひ参考にしてほしい。 |
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ボレーでも顔がブレない |
また、顔の位置がブレないという点も、フェデラーのすべてのショットに共通する特徴である。インパクトの位置に顔を残すというのが、良い意味での彼のクセになっており、とくにボレーでは、それが身体の横向きをキープすることにも貢献している。さらに、同じ姿勢のまま動ける下半身の柔軟性があるため、目線の上下動が非常に少なく、それもミスヒットの減少につながっている。
その他の部分に関しては、まさに基本通りといいうか、基本しかやっていないという印象があり、ミスをしそうな動きが少ない選手だと言える。 |
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ボレーでは時間的な余裕がないため、まずは素早くラケットを準備することが大切になる。そのとき必要なのは、大きく引くことではなく、ボールの高さ(できるだけ近い高さ)にラケットをセットすることだ。身体のほうも、早い段階でできるだけボールの高さに合わせておきたい。 |
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ボレーでは「横を向け」とよく言われるが、大事なのは完全に横を向くことではなく、横向き(斜め向きでも良い)をキープすることだ。つまり身体の回転を抑えることが重要で、それが正確にボールをとらえるために欠かせない要素であり、フェデラーはそれが完璧にできている。 |
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もうひとつ大事なのは、腕・ラケットの形や角度を最後まで保つことで、とくにラケットヘッドがグリップよりも先に行かないように注意したい。ボールを打った反動で面が動くことはあるが、自分から動かしてはいけない。その意味でもフェデラーは良い見本となる。 |
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グリップが良くなければ、良いボレーは生まれない |
フェデラーのボレーで、グリップを握る手をよく見ると、中指と人差し指の間に少し隙間があることがわかる(写真右)。このように握ることで手の感覚が生かしやすく、面の向きも感じやすくなり、繊細なタッチを出しやすくなるのだ。
握り方のポイントは、指のつけ根で握るという感覚を持つこと(下写真の左上)で、そのためフィンガーグリップという言い方もある。また写真の赤丸の部分(ヒールと呼ぶ)でしっかりグリップを支えることで、ラケットと手の角度が崩れにくくなるのも良い点だ。
それに対して、左下のように手のひらで握ると、感覚的にも鈍くなるし、ラケットの支えも弱くなるので、必要以上に強く握ってしまい、安定感もボールの切れも悪くなってしまうのだ。 |
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R.フェデラーの前に大きく動いたフォアボレー
これはサーブ&ボレーのファーストボレーの場面だが、少しでも前でボールをとるために大きく動きながら、打点を前にとって、身体もかなり開いている。だが、手首の余計な操作はなく、ラケットヘッドが先行することもなく、面の動きは非常に安定している。
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R.フェデラーの横から見たバックボレー
こちらは非常にオーソドックスなバックボレーの例。身体の向きも基本に忠実で、手首の形がほとんど崩れていない。そこはリストの強さを感じる面もあるが、グリップの握り方の良さもあり、人差し指でラケットヘッドをコントロールするような感覚がある。
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R.フェデラーの正面のボールに対するバックボレー
腕とラケットの角度は、最初から最後までまったく変わらずに保たれているが、ガッチリと力を入れて固めているという印象はない。6~7で顔がしっかりと残っている点も含めて、フェデラーらしい特徴がよく表われたボレーと言える。
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(テニスジャーナル 2004年9月号) © SKI Journal Publisher Inc.
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ロジャー・フェデラー研究編 一覧
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