RAFAEL NADAL |
Vol.1 今、世界で最も注目されるビッグ・フォアハンド |
ロケットのようなフォアで上位選手も圧倒 |
スペインのラファエル・ナダルの最大の武器は、ロケットのようなフォアハンドで、その威力はトップ10の選手たちにも脅威となっている。とにかくスウィング・スピードが速く、通常のラリーの中から一発でノータッチ・エースを取れるだけのパワーを持っているのだ。 |
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もっとも力の入る打点で打つ |
また、ナダルのフォアで特徴的なのは、意外に低い打点で打つということ。得意な形は、あえてライジングで打つのではなく、ボールを引きつけて、(どちらに打つかわからず)相手が金縛りになるぐらいの完璧な構えからドカンと打つことだ。
これは高い打点から攻撃するという時代の流れに逆行していうようにも思えるが、全身のパワーをもっとも乗せやすいのは、今の技術でも腰ぐらいの高さであることには変わりなく、ナダルはできるだけ力の入る打点で打とうとしているわけだ。また、以前よりもラリーがスピードアップし、ボールの弾道が低くなってきたことも、彼の打点のとり方に関係しているかもしれない。
とにかく彼は、下半身の力をうまく使って強烈な回転のパワーを生み出しており、その意味で今もっとも注目すべきフォアハンドと言える。 |
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ナダルのしっかり踏みこんだハードヒット
少し浅めのボールを、ナダルがもっとも得意とする高さで強打した場面。それほど大振りではないが、非常に効率の良い身体の使い方と、天性のバネで、抜群のスウィング・スピードが生み出されている。打点はやや低いが、ボールには強烈なトップスピンがかかっているため、このスピードでもアウトすることなくコートに収まってくれる。
⑤
テイクバックでは、後ろ足(左足)がボールの後ろに入り、体重が乗ってしっかりと軸足ができている。上半身は相手に少し背中が見えるほど深く入って、それに対して右手でバランスがとれており、完璧な準備ができている。相手のボールが速くても遅くても関係なく、早い段階で十分な土台を作っていることが大きな特徴と言える。
⑥~⑨
フォワードスウィングでは、左足で地面を蹴って左腰を前に回し始める。そのとき体重は右足に移るが、そこで右足を少しつっぱるようにして力が前に逃げるの防ぐことで、より鋭い腰の回転を生んでいる。また上体や腕は、その鋭い腰の回転に遅れないように一体となってついていき、パワーロスを防いでいる。
⑨~⑪
インパクト後の振り抜きの速さもナダルの大きな特徴だ。腰の回転はインパクトでほぼ止まり、それを追い越すように腕がビュッと振られており、これは回転のパワーがロスなくスウィングにつながっていることを意味している。また、これだけ思い切り振っているのに、顔の位置がまったくブレず、軸が非常に安定している点も素晴らしい。
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ナダルの下がりながらのハードヒット
これは深いボールに対して下がりながら打った場面だが、インパクトでしっかりと顔を後ろに残して身体の前でボールをとらえており、顔のブレもなく軸が安定しているため、下がりながらでもかなり強打できている。また、ナダルの打ち方はあまり無理がないので、(彼ほどのスピードは出ないだろうが)一般の人にも意外に真似しやすいと言える。
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(テニスジャーナル 2004年6月号) © SKI Journal Publisher Inc.
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ラファエル・ナダル研究編 一覧
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