TIM HENMAN |
Vol.1 サーブ&ボレーを前提に読みと組み立てで勝負 |
リターンを限定するサーブの組み立て |
ヘンマンの場合、フォームやボールの威力という点では、あまり特筆すべきものはないが、サーブをどこに打って、リターンをどこに打たせるか、という戦略の部分で優れたものを持っている。
元々サーブ&ボレーが得意な選手で、サーブ1本で決めるのではなく、次のボレーで勝負という前提があるため、相手のリターンを限定するということを重視し、豊富な経験によって多くのパターンを身につけてきた。たとえば、「このサーブをあそこに打てば、8:2の割合でここにリターンが返ってくるので、そこにヤマを張ればいい。それで2のほうに良いリターンを打たれたら仕方ないし、相手が無理にそこに打とうとしてミスすれば思うツボ」という考え方だ。
そうした読みも含めたサーブのコンビネーションが彼の武器であり、引き出しの数が誰よりも多い。もちろん、相手の特徴やクセも頭に入っていて、相手やサーフェスによって戦略を使い分け、高いサービス・キープ率を維持しているのだ。 |
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アマチュアにはむずかしいクローズドな構え |
技術的には、かなりクローズドに構えて膝の曲げも大きく、じっくりタメを作るタイプに見えるが、それがあまりパワーに結びついているとは言えない。とくに、これほどクローズドに構えて右足を寄せずに打つと、アマチュアの場合、身体を回していくのがむずかしくなるので、このまま真似をするのはあまりお勧めできない。だが、ヘンマンの場合は、この構えがどちらに打つか隠しやすいというメリットにつながっているようだ。 |
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T.ヘンマンのグラスコートでのスライスサーブ
グラスコートでスライスサーブを打ってサーブ&ボレーにいった場面。芝ではあまりボールが弾まないので、スピンよりもスライスのほうが効果的でリターンのコースを限定しやすい。フォームに関しては、基本的にかなりシンプルで、スウィングも大事な部分は完全に押さえているが、かなりクローズドに構えていることで、かえって体幹のひねりをあまり使えなくなっている。
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T.ヘンマンのクレーコートでのスピンサーブ
クレーコートの場合は、サーブ&ボレーとステイバックをほどよく混ぜて、相手に考えさせるのがうまい。サーブ&ボレーする場合は、スピンサーブで相手のバックに高く弾ませるパターンが多くなり、そうすればアングルへの厳しいリターンはあまり来ないのだ。もちろん、こうした戦略が立てられるのは、スライスもスピンも自由に打ち分けられる技術があるからだ。
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T.ヘンマンの上から見たスライスサーブ
通常は、右足を寄せるタイプのほうが打点を前にしやすく、サーブ&ボレーに向いているが、ヘンマンは右足を寄せないタイプながら、うまく打点を前にとってスムーズにネットダッシュしている。かなりクローズドな構えは、パワーの面でのメリットはあまりないが、コースを隠しやすいというメリットがあり、スタンスや足を寄せる・寄せないという問題には絶対的な正解はなく、自分が自然に身につけたやり方を無理に矯正する必要はない。
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(テニスジャーナル 2004年8月号) © SKI Journal Publisher Inc.
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ティム・ヘンマン研究編 一覧
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