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全豪オープン2013
杉山愛コラム
第126回 全米オープンレビュー 日本選手の戦いを振り返って

ポジションの上げ下げ、ショットの質の高さ。奈良選手の成長を感じました

杉山愛コラム
写真:ロイター/アフロ
 奈良くるみ選手は以前からフットワークがよく、チャンスに前に入っていくタイミングも素晴らしいと感じていましたが、原田夏希コーチに聞くと、グラウンドストロークを改良するなどガラッとテニスを作り直したそうです。そう聞いて、今大会であらためて彼女のテニスを見ると、コートを広く使えるようにバラエティ豊かなショットで組み立てるなど、さらに幅が広がったなと感じました。さらにボール自体の質の高さも加わり、大きく成長したと感じます。

 選手というのは頭が固いところがあって、「引かない」「中に入ってプレーする」というのが頭にあると、一度入ったら下がってはいけないと思ってしまうところがあります。奈良選手も最初、そこをよく理解していなかったそうですが、今では理解し、ポジションの上げ下げがすごくよくなりました。

 つまり攻守のバランスです。難しい状況ではループボールで一度逃げて、イーブンに戻してから、また前に入っていったり。そういう前後の動き、入り込むタイミングの早さが素晴らしかったと思います。

 パワーのない日本女子、特にこれから世界を目指すジュニアは、こういうテニスをやっていかなくてはいけないんだというのを彼女が明確に見せてくれました。

 2回戦のシルステア、3回戦のヤンコビッチという強敵にも臆せず、自分のやるべきことに徹しました。やるべきことを決めてコートに入っても、それをやり通すのは決して簡単ではありませんが、彼女は自信を持ってできていました。

 納得している部分も収穫も多かったと思いますが、一方で悔しさもあると思います。インタビューで、そこで何が足りなかったのかと聞くと彼女は「中に入ってからのネットプレー」と答えました。もともとボレーのタッチや面の作りといった基礎はできています。ネットでフィニッシュするということを、今後の課題として奈良選手本人が自覚しているのは大きいと思います。

 これまでなかなかランキング100位が切れず、一時は200位台に落ちながら、奈良選手は淡々とやるべきことをこなしてきました。原田コーチも「やるべきことをやってきたから今がある」と話していましたが、それがすごいと思います。結果ありきの世界なので、やっていることは正しいと思っていても、時には自分を疑いたくなるものなのです。まさに積み重ねの大切さですね。

 そうして、みんなが勝ちたいグランドスラムという舞台で頑張れて、素晴らしいご褒美を受け取りました。結果はあとからついてくるという言い方があって、私も現役の頃はよく使っていましたが、本当にそうなんだなとあらためて思います。

 錦織圭選手にも触れておきましょう。今回は、得意とするハードコートのUSオープンシリーズで結果を出せず、準備段階から不安がありました。直前の練習で感覚はよくなったと思うのですが、やはり試合は別。今回は、試合数を重ねることで得られる手応えや自信といったものが結果を大きく左右したのかなと思います。

 1回戦の相手は予選を勝ち上がって波に乗っている選手でした。情報が少なく手探りのところもあったと思うのですが、それにしても、そういう勢いとガッツのある選手に対して、錦織選手は元気がなかったように感じました。トッププレーヤーを見ても、エネルギー量の少ない選手は一人もいません。今回の錦織選手にそれが見られなかったのは残念です。

 本人も言っていたように長いヨーロッパ遠征でエネルギーを奪われ、十分に休む時間もなくUSオープンシリーズを迎えたようです。私も同じスケジュールを経験してきて、その大変さはよく分かります。今回の失敗を良い勉強ととらえてやっていけば、無駄な敗戦にはならないと思います。

 長いシーズンでは必ずアップダウンがありますが、トップ10目前の実力者の錦織選手ですから、これからは必ず2週目に残る選手にならなくてはいけないし、また、なれると思います。


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杉山愛 杉山 愛
生年月日:1975年7月5日 出身:神奈川県
主な戦績:
WTAツアー最高世界ランク シングルス8位 ダブルス1位
国際公式戦勝利数:シングルス492勝 ダブルス566勝
WTAツアー:シングルス優勝回数6回
ダブルス優勝回数38回
公式戦通算試合数:1772試合(シングルスとダブルス)
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