8月25~28日、神奈川県厚木市で「日本車椅子テニス競技大会」が開催された。今年で22回を数えるこの大会は、日本で最初に開催された車いすトーナメントである。1982年に、日本で車いすテニスが紹介され、その2年後の1984年から「日本車椅子テニス競技大会」が開催され現在に至っている。
毎年8月下旬に行われるこの大会では、“最初の敵”は「暑さ」である。コート上は、35度をゆうに超えているかと思われる中で、選手たちは3セットマッチで戦わなくてはならない。己と暑さとを制したとき、勝利を手にすることができるといっても過言ではないかもしれない。
初日は、台風11号の接近にともなう大雨の中、会場を数カ所の体育館などの施設に分けて開催された。雨天の場合、会場の準備や選手の移動などで混乱したり、無駄な待ち時間などがあることが多い。しかし、今大会では、前日から雨天の場合の進行もしっかりと準備されていた。一部試合形式に変更があったのもの、大会運営の手際がよく、選手には負担もかからなかったようだ。
翌二日目以降は、“厚木の大会の特徴”とも言える猛烈な暑さが戻ってきた。メインクラスだけでなく、すべてのクラスが3セットマッチで戦う。熱中症の予防のためにも、セットカウント1-1になった場合は最大15分の休憩が取られたが、それでも選手には過酷な戦いとなった。
最終日は、その猛暑もいくぶん和らいだ。メインのシングルス決勝に進出したのは、やはり国内ランキング上位の日本を代表する選手たちだった。
●男子シングルス決勝に進出したのは、若手成長株の藤本佳伸。より上のレベルを目指すために、本拠地を徳島から千葉のTTCに移したばかりだ。対するのは、2004年アテネパラリンピックにも出場した、兵庫の中野秀和。
第1セット、まずリードしたのは中野だった。5-2と、第1セットあと1ゲームまで迫ったところで、藤本もようやく自分のペースを取り戻す。3ゲームを連取し、5-5に追いついた。しかし、中野がその後2ゲームを奪い、7-5で第1セットを取る。
第2セットは、第1セットとは逆の展開となる。藤本が4-1とリードを広げ、中野が4-4まで追い上げる。5-4、中野のサービングフォアザマッチでは、藤本がブレークに成功し、5-5と再びタイも戻す。しかし、再び6-5と中野がリードし、サービングフォアザマッチを迎える。2度のマッチポイントを逃れた藤本だったが、7-5、7-5の接戦で中野が優勝を飾った。
「この大会は、ストロークやサーブでミスが多く、自分としてはしっくりしたプレーはできませんでした。それでも優勝できたので、それなりにできたと思います。(9月の)仙台と大阪の大会までには、もう少し調整していきたいと思います」(中野)
●女子シングルスは、第1シードの八筬美恵(千葉)と第2シードの岡部裕子(徳島)が、順当に決勝に進出した。岡部がどこまで八筬に食らいついていけるかが、焦点だった。しかし、八筬を崩すことはできなかった。
第1セット3-0と、試合序盤からリードを許した岡部は、2ゲームを奪ったものの、そのあとは完璧な八筬のペースとなってしまう。第2セットは、岡部に1ゲームも与えずに6-0で八筬が取り、優勝を果たした。危なげない戦いぶりだった。
●クアードは、ともに昨年のアテネパラリンピックに出場した當間寛(愛知)と高島正雄(千葉)との対戦となった。男子シングルス、女子シングルなどの他の種目よりも30分繰り上げて、9時から始まったクアードの決勝だったが、結局終わったのはどの種目よりも遅かった。約3時間の長い戦いの末、勝利を手にしたのは高島だった。
第1セットは、當間がサービスエースを決めて6-4で奪う。第2セットは、逆に6-3で高島が取る。15分間の休憩を挟み、11時10分からファイナルセットが再開された。
ファイナルセットでは高島のプレーが冴え、當間に2ゲームを与えただけで、6-2で優勝を手にした。
★男子シングルス |
メイン |
優勝:
中野秀和(兵庫) |
準優勝:藤本佳伸(千葉) |
A |
優勝:大川憲一(茨城) |
準優勝:藤沼誠(東京) |
B |
優勝:長尾泰明(岡山) |
準優勝:岩田守(埼玉) |
C |
優勝:原田貴司(静岡) |
準優勝:菅野浩二(埼玉) |
D |
優勝:高橋京平(長野) |
準優勝:大野正人(熊本) |
★女子シングルス |
メイン |
優勝:八筬美恵(千葉) |
準優勝:岡部裕子(岡山) |
A |
優勝:溝口久美子(三重) |
準優勝:山崎治子(愛知) |
B |
優勝:井上和香(千葉) |
準優勝:岡山鈴代(広島) |
★クアードシングルス |
メイン |
優勝:高島正雄(千葉) |
準優勝:當間寛(千葉) |
A |
優勝:平野克彦(熊本) |
準優勝:一宮剛(東京) |
★男子ダブルス |
メイン |
優勝:竹田浩之(大阪)/藤本佳伸(千葉) |
A |
優勝:石井堂夫(東京)/池ノ谷俊夫(千葉) |
B |
優勝:岩田守(埼玉)/佐藤忠男(宮城) |
C |
優勝:室本洋(静岡)/原田貴司(静岡) |
D |
優勝:町田純也(東京)/戸田勅(福島) |
★女子ダブルス |
メイン |
優勝:岡部裕子(岡山)/石本直美(愛知) |
A |
優勝:山崎治子(愛知)/原田祐子(静岡) |
★クアードダブルス |
メイン |
優勝:當間寛(愛知)/木村禎宏(岡山) |
(2005.09.12 文:酒井朋子)